『生き写しバトル』 #毎週ショートショートnote【後攻編】
※先にこちらを読んで頂けると、よりわかりやすいかと思います。
「もしもし栄子?」
「違うよ、恵だよ」
「恵ちゃんか。野菜採れたから取りにおいで」
「うん、仕事帰りに寄るね」
その返事を聞くと私はトイレから出る。
祖母は私には優しかったが母にはとても厳しい人だった。
進路、職種、結婚、出産の選択やタイミングを祖母の指示通りに生きてきた母は、その呪縛から解き放たれた今も母親がいないことを受け入れられずにいる。
耳が遠くなってきたのか少し嗄れた声で話せば、まだバレていないようだ。
「恵、またおばあちゃん家に寄ってくれる?」
「んー」
ボロが出ないように答えるも
「聞いてるの?」
「聞いてるよ!」
口調が強くなるのはいつものことで母も私も自覚はある。でも母を救う方法だけは未だにわからない。
「元気だった?」
「まあね」
台所に立つ母にそっけなく応え、産直市場で買い、包装紙を剥がした野菜を食卓に並べていると母の顔色がみるみる変わっていく。
「本当におばあちゃんに会ったの?」
母の敏さは誰譲り?
おばあちゃん助けてよ…
もしこうなってしまったらどうしよう……
という意味では幽霊よりずっと怖いですね。
全く関係ないこちらもよかったらどうぞ~
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