短編小説 『舞うイチゴ』 #シロクマ文芸部【二粒目】
『舞うイチゴが見られるのは、今月も15日頃になるでしょう』
と、天気予報士がさらりと落下注意を呼びかけるようになったのはいつ頃からか。
最初に降ってきたときこそ、イチゴを模した隕石なのではないかと世界的な大騒動となり、研究者たちがこぞってそのイチゴを分析したものだ。しかし、紛いもなく本物のイチゴであることが証明されただけだった。
また、一度に降ってくるイチゴの数は極めて少なく、今では物好きな人たちがブルーシートなどを広げて待ち構え、高値で売買したり、ドライフルーツにして個人的に保管したりする程度で、大半の人たちは何の代わり映えもない日常生活を送っている。
私もその一人だ。
イチゴ予報はさておき、今日は午後から雨のようだ。折り畳み傘を鞄に入れとかないと。
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火星人たちの間で楽しみにしていることがある。それは地球でいう毎月15日の約250日前から出発して地球周辺まで移動し、イチゴを食べるというイチゴ祭りだ。
とはいえ、火星人全員が一度に行けるとは限らず、そのプレミアムチケットを手に入れるだけでも一苦労ではあるのだが……
今から約15年ほど前に地球にお忍びで舞い降りた火星人がイチゴの美味しさにいたく感動し、その苗を持ち帰って自分たちの星で育ててようやく実ったイチゴ。
お礼も兼ねて火星人たちは地球を眺めながらイチゴを思う存分、味わうのである。
「OH! MY イチゴー!」
と、毎回、何人かが代表してイチゴを地球に目がけて落下させるのもちょっとした恒例となっている。
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職場を出ると予報通りの雨だった。雨足は強くないが、ビル風に煽られて私の折り畳み傘はいとも容易くひっくり返る。
「もう!」
と怒りながら傘を直すと、雨粒を滴らせたイチゴが一粒ぽとり、と落ちた。
今回は、ちょっぴりファンタジーにしてみました。調べてみると意外と地球と火星の距離は思ったほど遠くないようで……(何億光年などと考えてみたのですが、光の速さと物体ではまた別物なのかな……🤔?)
地球からロケットで行ける距離が、火星から地球へ行き、イチゴを落とすタイミングと確実に一致ゴするかはわかりませんが……
地球人に感謝の意を示してくれる火星人の律儀な優しさを感じて頂けたら幸いです。(そもそもイチゴがそのままの形を保って落ちるのか? など考え出したらキリがないので、そこは火星人なりに加工してることにしよう! 重力に関しても然り。物理よくわからんし、いちいちごめん!)
そして、人より折り畳み傘がひっくり返しやすいというのは私の永遠の悩み(頑丈な傘を買ってもダメだった😱都会の洗礼受けまくり😱)でもあるため、こんなうれしいサプライズがあったらいいのにな~という思いも込めた作品です。
よかったら、三粒目もご賞味下さいませ~
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