『雪解けアルペジオ』 #毎週ショートショートnote
一段飛ばしで石段をかけ上る。ランドセルに差したリコーダーが音を立てる。
冬は滑るからやめてねってママに言われていたけど、春になった今なら
「雪解けアルペジオみたいね」
と笑ってくれるはず。ピアノの先生でもあるママが前にアルペジオを教えてくれたんだ。
そもそも元気じゃない人がよく行く場所なのに丘の上に病院があるのが悪い。パパにそう話したら
「車でも上れるぞ」
と言われたけど小学生の僕には運転なんかできない。
病院に着くと水筒のお茶をゴクゴク飲み気合を入れ、エレベーターを待つのも焦れったくママが入院している階まで階段をかけ上る。
「あら、鍵くん。ママならあの部屋よ」
と看護師さんに言われ、そーっと部屋に向かう。
ドアを開けるとママが赤ん坊を抱いていた。
「わあ!弟?妹?」
「妹よ」
「じゃあ…」
僕はノート取り出し、たくさん考えた名前の一つに赤鉛筆でぐるぐると丸を描いてママに見せると
「歌音ちゃん…素敵な名前ね」
と花が咲いたように笑った。
何年もピアノを習っていたくせにアルペジオの意味がイマイチわかってなかったとです。193どす、193どす……😇<しれっと名前紹介するんかーい!)
その場で名前を書くとなんだか『勝訴!』みたいだし、赤鉛筆で花丸描いたら選挙の当確みたいだし……といろいろ悩んでこの結末になりましたとさ🙈笑🙈
(こんなハンカチも商品化されてたっぽいよ)
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