短編小説 『舞うイチゴ』 #シロクマ文芸部【三粒目】
「舞うイチゴかい?」
道端でたたずんでいたわたしに、知らないおじさんが変なことを聞いてきた。
「家に帰れなくなったのかい?」
とおじさんが言い直したことで、迷子と聞き間違えたことに気づいたわたしは、こくりとうなずく。
「そうか、そりゃ困ったな。ま、イチゴでも食っていくか?」
おじさんはすぐそばのビニールハウスにわたしを誘う。見知らぬおじさんに着いていっていいものか、と一瞬悩んだものの、魅惑的な言葉に惹かれて後を追う。
中に入ると、緑の葉の隙間から見え隠れする赤い実が光輝いていた。
「わぁ……!」
と感激していると
「今年の収穫はもうだいたい終わったから、好きなだけ食べていてっていいよ」
とビニールハウスの隅で、コンテナに腰かけたおばさんが人の好さそうな笑みを浮かべ声をかけてきた。
わたしはお言葉に甘えて、赤い実を見つけては口に運ぶ。
酸っぱさに顔をしかめてみたり、甘さに顔を綻ばせてみたり……
次々に変化するわたしの表情を、おじさんたちは愉快そうに眺める。
「どうだい? うちのイチゴは?」
「おいしいです!」
「そりゃよかった」
「おじさん、明日もここに来てもいい?」
そう訊いてすぐに、しまった! とわたしは焦ったものの
「あぁ、いいさ」
おじさんは目尻に深い皺を寄せ、朗らかに笑った。
さてはて「わたし」とは一体、どんな人物なのでしょうねえ?(まさか○星人なんてことも……?)
ちなみにこれもちょっぴり実話で、友達と通学路の途中にビニールハウスがあって、イチゴの甘い匂いを嗅いでいたら、パックに詰めたイチゴを頂いたことがあります。
実家の庭にもビニールハウスはあったのですが、骨組み状態の時はジャングルジムとして遊んでました……😇<ごめんね!)
よかったら一粒目と二粒目もご賞味あれ♪
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