駄洒落小説 『咳をしても金魚』 #シロクマ文芸部
「咳をしても金魚」
という言葉を小学生の僕に教えてくれたのはじーちゃんだ。
日曜日の昼下がりに丸い水槽の中でひらひらと泳ぐ、緋色の金魚を見つめていた時のことだ。
「どういう意味?」
「多少の咳があっても、生きてるだけで金メダルってことさ」
「それなら金目鯛の方がかっこいいじゃん」
「ほぉ、おまえさんは金目鯛を知ってるのか。物知りだな。確かに金目鯛の方がいいかもしれん」
と感心しながら、じーちゃんは黄色い歯を覗かせてカッカッカッと笑った。
それ以来、じーちゃんは
「咳をしても金目鯛」
だけじゃなく
「鱸され、月曜日」
「土曜日よ早く鯉」
と魚をもじった不思議な言葉をよく使うようになった。それは僕が魚好きだったからだけではなく、学校に居場所がなくて休みがちだった僕へのじーちゃんなりのエールだったんだと思う。
そんな僕は今、木魚を叩いている。
最後の最期まで煙草を止められなかったじーちゃん。
「一番休みたくなるのは木曜日だけどな」
その意味がより沁み入るようになったのは、僕が大人になってからだ。
ずっと気になりつつ、タイミングが合わずで、初めて参加させていただきました!
そのため、こんな感じでいいのかな? と若干の不安を感じながら……いくつか遊び心を盛り込んでみたのですが、気づいて頂けたでしょうか?
他の方の作品も読ませて頂こうと思います♪今後とも、どうぞよろしくお願いします☺️
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