五感を潤すバラの鑑賞(いばらきフラワーパーク取材インタビュー)
1.序文
「見る」から「感じる」フラワーパークへ
このテーマを一目見て魅了され、
直接お話しを聞きたい!という想い一つで、ご縁をいただき、
今回、いばらきフラワーパークさんへ取材させていただきました。
「バラを中心にした花栽培~人々の目を楽しませるパーク運営まで」
その背景を知りたい!という個人的な興味から。
その一部を記事として共有することで、
バラ(花)を豊かに楽しむための参考にしていただけたら、
という想いで書いたものです。
そのため、インタビューでは、五感を潤すバラの鑑賞をテーマに。
園内の見どころ(楽しみ方)とともに、野外でバラ(花)を楽しむために
知っておきたいこと、役立つことを中心にお話を伺いました。
他にも、園内を散策した感想と写真を掲載。
最後に、Ⅹ’masムード溢れる幻想的なバラの世界をお届けします!
2. インタビュー(五感を潤すバラの鑑賞)
午後1時「ローズファームマーケット&カフェ」にて。
さまざまなバラの商品を眺めながら、
その香りを楽しんでいると……園長の長田さんが目の前に。
爽やかな笑顔でお迎えいただく。
「どうぞこちらへ」と、外へ案内されると、
秋晴れの空気に包まれて、清々しい気持ちに。
360度全方位見渡せる、広大な景色に感動していると、
「そう、ここは、見晴らしがいいんです。
それに、低くてなだらかな山々に囲まれてるので、
あったかい感じがしますよね」
バラのトンネルを通り抜けて、
「インフォメーション」に到着。
建物に入ると、再び、ふわっとバラの香りに包まれる。
「ここは、色んなアクティビティが楽しめる場所で、
園内の花や植物で、オリジナルの作品を作ることができるんです」
インテリアの中央には、ひと際目を引くテーブルが。
そこに飾られた黄金色のマリーゴールド。
コトコトと緩やかに流れる水音。
光に照らされ、キラキラと揺らめく水面。
一瞬の、静かな感動があった。
実は、人生初の取材インタビュー。
その緊張で硬くなった心が和らいでいく。
今回、このテーブル席をご用意いただいたとのことで、
心と体、五感が潤うような空間の中で、
インタビューさせていただくことになった。
※当インタビュー記事、及び写真(Calla撮影)は、
いばらきフラワーパーク様ご承諾の上で掲載しております。
まずは、お話しいただくお二人のご紹介から。
では、さっそくインタビューへ。
① バラのテーマパークへの想い(「感じる」体験を)
(C)先程、バラの品種園で写真を撮りながら、園内を一周してきました。流れるように続くフラワーガーデンにオシャレな建物が点在していて、
とても一体感がありますね。パーク全体のデザインが素敵だなぁと。
(長田さん)ありがとうございます。そうですね。
私はもともと、パークコーポレーションの中で、
店舗設計やそのデザイン、植物を使った空間というのを作ってきました。
そのノウハウをもってここに来たので、空間づくりということに関しては、
相当のこだわりがありますね。
(C)はい。歩きながらそれを実感しました。全体的な景色もそうですし、屋内のレストランも自然が感じられて心地よかったです。
(長田さん)僕自身こういう施設が好きで、
色んな場所に行ったりするんですけれども、お花はきれいでも、
レストラン入ったり、売店にいくと少し寂しさを感じることがあったので、どこにいっても花に囲まれている、
そういうスタイルを創りたかったんです。
(C)そうなんですね。確かに、どこに行っても花がありました。
そう、お化粧室。鏡にマリーゴールドが飾られていて、すごくきれいで。
(長田さん)ちょうど自分の顏と花が横に来るんです。
花と一緒に顔を見ると2割くらいかわいく見える、
女性は美しく見えますね。
(C)それは嬉しい。女性の心をつかむ、細やかなアイデアですね。
(長田さん)常に、ここにいる時間は特別な時間を過ごしてほしいですし、花に囲まれた時間を体感してほしいですからね。
この「インフォメーション」も特徴的な場所なんです。
簡単なアクティビティをしたり、ワークショップしたり、
ブーケを作りましょうという場所なんですが、
殺風景な会議室のような場所だったら寂しいですよね。
花に囲まれながら、水の音と、アロマの香りがする場所で
花に触れることで、何倍にも楽しさが増すと思うんです。
(C)はい。私も入った瞬間もそうでしたが、今もいつのまにか
心地よく話していて、身体も喜んでる感じです。
(長田さん)これが、フラワーパークのテーマ「(五感で)感じる」ということなんです。実際は、ここでは4つですね。
「見る」「香る」「触れる」「聴く」でも、一つずつ刺激するのでは
しょうがなくて、同時に満たされるというのが大事なんです。
(C)同時に?
(長田さん)五感が満たされていくという感覚は、
「触ってください」「見てください」ではなく、
ここにいる時間そのものが、「五感が満たされる」時間になる。
それを五感で楽しむというふうに、私たちは考えています。
(C)意識しなくても、ここにいたら、いつのまにか
満たされるということですね。
(長田さん)アクティビティで使う花材は、ほぼ全て園内の植物を
使っているんです。スタッフが朝、園内をまわって、植物や花を採集して、ドライにしたり、蒸留したり、ブーケにして、ここの空間を作っている。
(C)すべて手作りなんですね。
(長田さん)はい。スタッフ自身も花が好きなので、手作りすることで、
より楽しい職場になりますよね。心から「綺麗な花を摘んでみよう」、
そんな花が好きな人が働く場にしたいですね。
その想いがお客さまに伝わって、また花が好きな人が増えていく
というのが、ここでやりたいことの一つでもあります。
(C)自然と花の魅力が伝わっていくのですね。
間中さんは、園内で働きながら、その想いがお客様に伝わっているなと
感じることはありますか。
(間中さん)ここのいいところって、
バラとの距離がすごく近いことがいいなと思うんですね。
例えば「バラテラス」の中にパラソルとテーブルが置いてあって、
そこでお茶したり、ご飯食べたり、話したりしていると、
風に乗ってバラの香りがしてきたり。
バラが一番見頃の頃は、お客様から「風がバラの香りだね」と
おっしゃっていただいたこともあります。
(C)素適ですね。風と香り。
バラを身近に、その美しさを肌で感じる、そんな体験ができるのですね。
私もバラの写真を撮りながら思ったのですが、
山や木々と重なるバラの風景がアートのように思えて感動しました。
すごくいい写真も撮れましたし。
お客さまからも、きっと色んな声がありますよね。
(間中さん)そうですね。都会から来た方は、こんな自然の中で
空気も美味しいし、ここにいると、五感が開かれるというか、
うん、そういうことをおっしゃいますね。
例えば、花を鑑賞するときには、お花を見ているようで100%は見てない
と思うのですが、花摘みのアクティビティでは、近くによって、
1輪1輪違うとか、実際手に取って香りを感じたりとか、
1輪1輪、真剣に選ぶことで、
もっと花を身近に感じられるのかなぁと思うんです。
それに、花屋では、市場にでているわりと画一的な花ですが、
そこで選ぶ一輪と、自然の中で表情豊かなバラの中から一輪選ぶ
というのは、ちょっと違うのかなと思っています。
(C)そうですね。同じバラでも形、色、香りそれぞれ違いもありますね。
(間中さん)その園の花を使ってブーケを作ることもあって、
そのときもやっぱり、お客様は全部自分が好きなものだけで選んで作る
っていうことをすごく楽しんで帰ってくださるんですね。
また、たくさんの中から好きなバラを5輪持って帰ることもできます。
その花とともに1週間過ごすというのもまた、
花を身近に感じることだなぁと。
(C)そうですね。そのときの思い出を持ち帰るように。
(間中さん)はい。それに、園内でたくさんの人にみてもらうお花も
幸せなんですけど、1人の人に選ばれて、一緒に過ごしたバラも幸せ
なんじゃないかなぁっていうのを多くの方に知っていただけたらいいなぁ
とアクティビティをしていて思います。
(C)確かに。バラにとっても、きっと嬉しいですよね。
(長田さん)そうですね。フローリストらしい発言の仕方ですね。
②バラを楽しんでもらう難しさ(日々の活動)
(C)フローリストらしい発言というのは?
(長田さん)ここの従業員には、フローリストとガーデナーがいるんです。
バラを多くしてできるだけ長く見てもらいたいガーデナーと、
バラを楽しんでもらいたいアクティビティチームのせめぎあい
もあるんですよ。
今のお話の通り、5輪を持ち帰るというのはガーデナーとしては
1輪でも持ち帰られたくないという想いが根底にはある。
(C)確かに。そうですね。その辺の兼ね合いって難しい。
(長田さん)そこは双方が理解しあって、
このくらいだったらいいかなという妥協点を見つけて、
サービスとしては提供しているんです。
(間中さん)つい先日まで「バラテラス」でバラ摘みをしていたんですが、この場所なら、一つの品種に対してたくさんの株が植えてあるので、
お客様が見るお花が少なくならないっていうことで、ガーデナーの方と
話し合ってこのエリアでバラ摘みをしていました。
でも、さすがにお客様に鑑賞して頂くお花がこれだけになって来たから、
もうバラ摘みはお休みしますということで、今、マリーゴールドを摘める
ということになっているんです。お客様にどこをどう楽しんで頂けるか
ということが難しくて。
(C)そうですね。観賞しながら楽しむのか、花を摘んで楽しむのか、
とても悩ましいですね。
そういう意味で、バラを楽しんでもらうための知られざるご苦労や、
工夫などあれば、もう少しお伺いできますか。
(長田さん)僕もバラに関わったのはこの仕事が初めてだったんです。
バラは、ガーデンローズのイメージがあって、
育てるのが難しい印象がありました。本当に玄人好みと言うか、
素人が手を出してはいけないような感覚があって、
でも、そこを変えたかったんですよね。
もっと色んな人が育てていいんじゃないかなって思っていて、
そんなときに、耐病性が強いバラの育種をしている「バラの家」の木村さんに出会ったのが幸運でした。毎年毎年新しい品種を作られているんですが、フラワーパークでは、そんな耐病性が強くて丈夫なバラを中心に選んで
植栽しています。
(C)確かに、自然の中で育てるのは難しいだけに、
そんなバラがあったら嬉しいですね。
(長田さん)誰でも育てられるような耐病性のある綺麗なバラ
を植栽すれば、お客様が育てたいなと思ったときに家で枯らさずに、
綺麗に育てられるという流れもできて、もっとバラを好きになってくれる
人が増えていくだろうという期待もありました。
また根底には、「日本一花との距離が近づくフラワーパーク」
というものを目指していて、そのためには、
「誰でも育てられるバラ」というのが大事だと思うんです。
至るところにバラの活用法が実践され、飾られていたりすることで、
訪れるお客様が生活の中で花の楽しんでもらえたらという想いがあります。
(C)自分でバラを育てるときの参考にもなるようにということですね。
園内には多くのガーデナーの方々が手入れをされているのを見かけました。バラを維持、管理して綺麗に保つのも大変なことですね。
(長田さん)一年を通してきれいな状態を維持するには、どうしても消毒は必要、ゼロにはならないんですけれども、
誰にも真似できない特別な技術があればというより、
いかに基本に忠実に、丁寧にやっていくかに尽きるなと感じています。
(C)基本の作業を毎日コツコツと。
(長田さん)あとは、やはり丈夫なバラを選ぶという品種選びが大事
かもしれませんね。
(C)最初から、丈夫なバラを植栽することですね。
雨や台風など、想定外の自然リスクの影響も受けてしまうこともある
と思いますが、その対策などはいかがでしょうか。
(長田さん)同じ場所で育てても、天候によって
今年はこんな病気がでてしまうというのもあるので、
常にバラを見て、いかに小さな変化に気づけるかが大切。
その都度対応しなくてはいけないし、
ほったらかしにするとダメになってしまうので。
➂生花(バラ)を味わう価値(時代のニーズ)
(C)コロナ後は社会も大きく変化し、花(バラ)のニーズも多様に
なってきたように思います。そのような変化について、
園内で実感することはありますか。
(長田さん)リニューアル後になるので、確実なことは言えないんですが、年齢層は広がったかなと思います。
以前はシニアの女性が多かったのですが、最近は年齢層の幅も広がり、
ファミリーやカップルなど多種多様な方に、花の鑑賞、食事なども含めて、ゆっくり楽しんでいただいています。
(C)アクティビティも幅広いので、幅広い年齢層の方が
一日中楽しめるのが嬉しいですね。
私も園内を巡りながら、ソロでも充分楽しめるなと思ったのですが。
(長田さん)そうですね。さっきアクティビティの花摘みなどでも、一人で来られた方が楽しまれていましたね。
(間中さん)はい、そうですね。
(長田さん)そう、SNSで写真に撮られることが増えたな
という感じがありますね。SNSの変化でいうと、
これまでは花のアップの写真がほとんどでしたけど、
今は色んな写真が増えましたね。
体験をしているときの写真など、食事してる、遊んでるような
人が入る写真がすごく増えた気がします。
(C)花とともに、実際に楽しんでいるシーンが
多く投稿されるようになったんですね。
(長田さん)あと業界的には、コロナ禍を経てフラワーベースが
多く売れたんですよね。今まで花を飾らなかった方が、
自宅で花を飾るようになったんだなっていう気がします。
(C)そうなんですね。確かに、数本でも自宅に花を飾ってみよう、
心豊かに過ごしたい、という方が多くなってきてるようですね。
(長田さん)そういう方たちが長く花を楽しみ続けていくために、いろんな提案を僕等もしていかなくてはいけないですし、花に携わる人全員で、
そういう考えを持っていきたいなという気もします。
(C)そうですね。私も微力ながら貢献できたらと思います。
あと、少し唐突な質問かもしれませんが、
普段、ご自宅で花を飾ることはありますか。
花を飾りながら、または今の時代、生花を楽しむ意義や魅力(価値)
についてはどのように感じますか。
(間中さん)石岡に移住してから、都内で暮らしていた時よりも
広い空間で心穏やかにゆっくり過ごせる時間が増えました。
どっさりたくさん飾る、ということはできないけれど、
季節の枝ものを飾ったり、ダイニングだけでなく寝室や玄関にも飾ったり、
どこで過ごしていても花の気配があるだけで、
より心穏やかに過ごせるように感じます。
家に帰ってきた時に、朝起きた時に表情の変化を感じられるのが
生花の魅力だと思います。これから迎えるクリスマス、お正月など、
大切な人と過ごす時間も季節のお花があるだけで、
より温かで満たされたものになりますね。
(C)そうですね。花って、ふと気づくと違う表情を見せてくれたり、
心があるように思えて、温かい気持ちになりますね。
長田さんはいかがですか。
(長田さん)家にも花や観葉植物を飾ってますよ。
リビングに観葉植物があって、ダイニングテーブルに花瓶が置いてあってと、一般的な感じですけれども。
僕は癒されるというよりは、ポジティブになれるというか、
そっちの方が強いですね。3歳の子供がいるのですが、
花を綺麗に活けたときに、すごく笑ってくれて、
人間が本質的に求めているんだなって思います。
(C)いいですね。花が家族の雰囲気も明るくしてくれるんですね。
(長田さん)でも、人と植物の距離があり過ぎる気がしているんですよね。
特に都会で過ごしていると、もっと身近に植物が溢れていた方が、
人間の本来の欲求が満たされていくと思うんですよね。
花の価値としては、花は有機的なものなので、
同じ形のままずっとあるわけでなく、毎日ちょっとずつ形が変化していく。そのような変化にぜひ楽しみを見いだしてほしいですね。
植物を愛でることは環境的にもプラスの循環を生み出すと思うので、
そう感じます。
(C)植物、花からエネルギーをもらう。
私たちも花に寄り添い、その変化を楽しむ。
そのいい流れができれば、環境にもプラスになりますね。
④皆さんへのメッセージ
最後に、皆さんへのメッセージをお願いします。
フローリスト 間中奈津美さん
東京にいたときに比べて、
私はこっちにきてからの方が五感が開かれましたね。
今までなんとなく自分自身が閉じこもっていた感じがしていたのですが、
それによって、常にリラックスした状態でいられるようになりました。
自然の中にいるって人間にとって大事なことなんだなっていうのを
すごく感じますね。心が豊かになる感覚。
それをたくさんの方に味わって頂きたいです。
園長 長田さん
花との距離が近づいてほしいという想いがあるので、
とにかく花に触れて花のいろんな面白さを知っていただきたいです。
ここに来ただけでなくて、ここに来ていただいて、帰ってからも
花に触れる、花と共に過ごす生活というのを続けてほしいですし、
僕等も続けられるような提案をしていきたいと思います。
フラワーパークをきっかけに、
花のある生活を楽しんでいただけたらと思います。
インタビューを終えて。
一つ一つの質問に、快く、惜しみなく、
お話しいただ大変な貴重な情報を
今回、記事にすることができました。
それは、五感も潤う有意義なひとときでした。
印象的だったのは、お二人の幸せそうな表情。
仕事が好き、花が好き、に、溢れた気持ち。
「スタッフが楽しく働ける場にしたい」
という、長田さんの言葉。
来園する私たちの「感じる」体験。
それを、より自然に、より豊かにしているのは、
ここで働く皆さんの情熱の結晶なのだと。
そして、きっとこれからも
人々が豊かに「感じる」ための
さまざまなアイデアや企画が生まれるのだろうなと
今から楽しみになる。
バラがシーズンオフの期間でも
年間100のアクティビティが企画されている。
インタビューの言葉を胸に、
この後、園内を巡りながら、「感じる」体験へ。
3. アクティビティ体験(バラの香り)
「インフォメーション」の屋内は、花や植物で装飾されている。
1カ月半ごとにテーマを変えて模様替えしているとのことで、
この時期は、クリスマスの雰囲気が漂う。
ボタニカルリースやドライフラワー入りボトルランタンなど、
アクティビティの材料も並べられていて、ディスプレイに旬が感じられる。
見ているだけでワクワク!
4. 「感じる」秋バラ鑑賞~散策
5. まとめ
「感じる」秋バラ鑑賞。
それは、まるで「一期一会」のように。
自然とともに移りゆくバラの表情、色あい、香り……。
その一輪一輪の個性と会話しながら、
豊かな自然の中で巡る感動、楽しさがあった。
園内ところどころに飾られた
「感じる」ためのさりげない演出に
温もりと心地よさを覚えながら。
そして今、
手作りのローズアロマミストと、サッシェの香り、
フラワーパークオリジナルの
バラのフレーバーティー(FULL BLOOM TEA)
をお供に、この記事を書き終える。
次回は、フラワーパークで購入した花瓶にバラを添えて
クリスマスデコレーションをお届けする予定です☘