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残影と残響 —Ghost&Reverberation

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ベラゴアルドの記憶と追憶。或いはその残り香、残影と残響。 だいたい一話完結の短編。
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残影と残響 —Ghost&Reverberation【総合目次】

ベラゴアルドの記憶と追憶。或いはその残り香、残影と残響。 酔いどれも殺すに及ばぬ 報いは…

酔いどれも殺すに及ばぬ

—レムグレイド歴三百二十八年 紫千鳥六の月—  レムグレイド大陸北、港街ノマリナの裏路地…

報いはなく、勝ち得るものもなく

—レムグレイド歴二百八十八年 朱鷺二十の月—  王都レムグレイドを抱くレム・オル山脈を越…

尊き身代

—レムグレイド歴三百二十一年、紫千鳥十八の月—  レムグレイド大陸北、港街ノマリナから南…

往ては戻らぬ旅路の果てに

—レムグレイド歴三百七年— 「最初はネル・ローっつう、でかい街だ。ん? フラバンジだよ。…

ただ鐘は鳴る

 レムグレイド大陸中心部、王都からレム・オル山脈を越えて南に進めば、聖鈴都市アルトルが見…

込めたるは祈りにあらず

ハースハートン大陸南、 ポランカの街から続く山脈沿い、 西の峰の麓にスミッチ村は位置する ベラゴアルドのどの村でも同じように、貧しく閉鎖的ではあるが、 同じように争いは少なく、人々は良識を持ち、穏やかに暮らしている。 込めたるは祈りにあらず 一| 違い子たちの家  モニーンが死者の国へと旅立つと、イーゴーの人柄はすっかり変わってしまった。  しかしそれはほんの切欠に過ぎなかった。新たな世話役として孤児院を訪れるようになった|咒師、主たる原因はその老婆にあった。  老

込めたるは祈りにあらず |二|

咒婆の躾  ある朝、最年少のヒケアがいなくなった。ヒケアは足が魚のヒレのように変形してい…

込めたるは祈りにあらず |三|

些細な供物  レモロは懸命に働く。少しでも信頼を勝ち取ろうと躍起になる。働きぶりが認めら…

込めたるは祈りにあらず |四|

嵐の訪れ  その日もレモロは野良仕事を終え、孤児院へ戻る畦道を歩く。近頃のイーゴーの背中…

込めたるは祈りにあらず |五|

宴  振動と衝撃がレモロに覚醒を促す。  はじめは誰か、何かの叫び声をぼんやりと聞いてい…

込めたるは祈りにあらず |六|

粛清  怪物は立ち上がり、両腕を広げる。ドレスは破れ、肥大した肉体が露出する。緑色の二の…

込めたるは祈りにあらず |七|

幕間の憤懣 「ちくしょうめ」  アギレラは二度目の悪態を吐く。最期にかち割った怪物の頭蓋…

込めたるは祈りにあらず |八|

生き残り  ジャポが行う地母神教の弔いを待ち、準備が整い次第、アギレラは部屋に落ちていた古い燭台に火を灯す。油を撒いた屋敷にそれを投げ込む直前に、彼は何かを察知し、慌てて火を吹き消す。 「まさか!」自分を責めるふうに、ぴしゃりとうなじを叩く。「方々に気を散らせすぎた」苛立ちを隠さず、大股で部屋の隅へ進んでいく。「まったく、火薬庫のじじいがいなくて助かった…」倒れた戸棚をどかし、破壊された床の穴に手を入れる。 「まあ、なんてこと!」  引き抜いた片腕の先にぶら下がる小さな