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苦手なことは、「食べること」。

久しぶりに、自炊をした。
豚バラ肉と、白菜を使ってミルフィーユ鍋にした。
いざ食べよう、と箸を鍋に入れようとした時
ふと「最近外食したっけな」と思った。

思い返せば、私は小さい頃から外食が苦手だった。
ガヤガヤとした店内や、周りに知らない大人が
たくさんいるような状況。
近くに母や父がいるにもかかわらず、安心出来ないあの感じ。
胃の入り口が急に締まる感じがして、
たとえ好きな物が目の前に運ばれてきたとしても
ほとんど手をつけなかった。
お子様ランチにのっている申し訳程度のポテトだけを、時間をかけてもそもそと食べる子供だった。

外食、というかそもそもご飯を食べることが未だに少し苦手だ。
理由は大きく三つある。
一つ目は、「食」に関してあまりいい印象がないからである。
私は、幼い頃家でご飯を食べる時はいつも母に怒られていた。
箸の持ち方や、机に肘をつかない、だとか
いわゆる食事のマナー的なことで。
あと、自分があまりにご飯を食べなさすぎて、ということでも怒られていた。
どっちも、我が子を心配する気持ちがあったことには変わりはないが、食事=いろんなことに気を遣って遂行しなければいけない任務のようなイメージがそこで植え付けられたような気がする。
これに加えて、私はご飯を食べるスピードがとても遅い。
スピードが遅いが故に、大体学校の給食やお弁当を食べ終わるのが一番最後になる。
一緒に食べてる人達は、早々に食べ終わるので結果的に待たせてしまう事になる。
それが嫌で、高校生の時はほとんど一人でお昼ご飯を食べていた。
一人で食べれば、誰かを待たせるようなこともないし、自分のペースで食べれるからむしろそっちの方が楽だったからである。

二つ目は、「食」に興味があまりないからである。
興味がない、とは言っても好きな食べものとかはある。
お寿司が好き、とか。フルーツ全般大体好き、とか。
しかし、食べることが趣味だったり
好きなことに入るという感覚がいまいち理解できない。

この事を特に実感したのが、実家での出来事。
実家に帰っているときに、私用にと祖母が残していてくれたお菓子を間違えて祖父が食べてしまったということがあった。
その時、祖母は「〇〇(私の本名)のために残しておいたのに!」と祖父に強めに言っていた。
その後、祖母は「あのお菓子食べれなくて残念だったね」と私に言ってきた。
その時、私は祖母に「そうだねー」と適当な返事を返してしまったが、お菓子のことは正直別にどうでもよかった。
祖母が、私に「食べて欲しい、あなたとおいしいねとか感想を言い合いたい」という気持ちがあって残しておいてくれたことにはもちろん嬉しさを感じた。
しかし、そのお菓子に興味がない自分が食べるよりもそのお菓子が食べたいと思って食べた祖父に食べてもらったほうがそのお菓子も幸せなのではないだろうかとか考えてしまう。
それくらい、本当に食べ物に対して無頓着なのである。

三つ目は、体質的に胃腸が弱いからである。
これが、自分が食べることが苦手な要因として大きいのではないかと思っている。
ストレスの影響をすぐ受けて、ご飯が食べれなくなる時がかなり多い。
食べられてもすぐ気持ち悪くなったりして
ご飯をあまり楽しめない。
一口目は「美味しい」と感じても、それ以降私にとっては食事は口にものを運ぶ作業でしかなくなる。
私にとっては「食べること」は最低限死なないための手段としての機能しか果たしていない。
この時点で本当の意味での「食事」ではなくなってしまうのである。

一方でこんな私でも、大学生になってから外食する機会が増えた。
部活やサークルの飲み会、友達や先輩、後輩とのご飯。
外食自体、本当は行きたくない気持ちの方が最初は大きかった。
外食に行ったって、どうせ量食べられないし。
食べるスピード遅すぎて、待たせてしまうかもしれないし。
そんな気持ちが先行してしまうことが多かった。

しかし、だんだん外食を少しは楽しいと思うようになった。
その理由は多分、先に示したような事を一緒にご飯を食べる人に打ち明けたからかもしれない。
あんまりご飯の量食べれないんだよね、と話すと
「自分もそんなに量食べれないよ」とか
「食べれるけど時間かかるんだよね」とか
何かと共通点があった。
今は、そういった共通点を持つ人とご飯に
なるべく行くようにしている。
また、自分の中で「食事を楽しむ、というより
相手と一緒に過ごす時間を楽しむ」という意識として折り合いをつけるようになった。
相手と関係を親密にするためにも外食は手段として有効であることが段々分かってきたため、
何でもかんでも断るのは良くないかなと思うようになってきた。
だから、自分の都合が悪い時以外はなるべく応じるようにしている。

そんなわけで。
鍋を突いている最中に、友達からラインが来た。
「今度、一緒にご飯行かない?」
私は熱々の白菜の破片を口に運びながら、
「行く!」とラインを返した。


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