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みちてゆく

新月が終わりました。
おつきさまがすこしずつ、ゆっくり、満ちてゆきますね。

また今週も取り留めもないことを、そこはかとなく書きつくろうと思います。ただ好きな本の好きなところをあげていくだけのnoteです。


今日の本:人間主義的経営

ブルネロ・クチネリの「人間主義的経営」という本です。
ブルネロ・クチネリというイタリアのファッションブランドがあります。
上質なカシミアや洗練されたスーツ、それからアクセサリーで有名な企業なようです。とても私みたいな一般人の手が出るようなブランドではありません。2012年にミラノ証券取引所に上場しています。今回の本はその企業の経営者が書いた本です。

経営の本といえば、硬くてなんだかとっつきにくいものが多い印象です。しかし、本書では美しく哲学的な思想がたくさん散りばめられており、経営の本とは思えませんでした。まるで美しい一つの物語を読んでいるかのようでした。でも、私にはさっと読めるようなものではなく、何ヶ月も時間をかけて読んだ本でした。

春の池で泳ぐ鯉
春の池で泳ぐ鯉

心と魂と体のバランス

本の好きなところを書く前に、このブランドBRUNELLO CUCINELLI のウェブサイトから気になった言葉をあげてみたいと思います。

ページを開くとすぐに「美しいものは倫理の象徴である」というイマニュエル・カントの言葉が飛び込んできました。企業のページとは思えませんね。なんと魅力的なのでしょう。

さらに奥深く覗いてみると、たくさんの魅力的な記事が掲載されています。2021年の「世界の重要な指導者たちに向けたブルネロ・クチネリのスピーチ G20サミットにて」という記事を取り上げてみましょう。私が印象に残った言葉は次の一文です。

私は、会社の利益の一部を全人類を美化するために使いたいと思いました。テクノロジーとヒューマニズムを調和させ、心と魂と体の健全なバランスを取り戻すために、人々が適切な時間だけ働き、適切な時間だけ「接続」することを願っています。なぜなら魂と身体にも毎日栄養を与える必要があるからです。

Brunello Cucinelli 世界の重要な指導者たちに向けたブルネロ・クチネリのスピーチ G20サミットにて

人間って不思議な生き物だと思います。生きていくのに、何が必要なんだろう、なんてぼんやりと考えが浮かぶ時、個人的にはここに書いてある「心と魂と体」の3つを大きな1つの人間の塊として捉えて考えてみたりします。

極めて個人的な想像ですが、ここでいう心は思考とか感情みたいなもので、魂は肚にある何かで、体は外側の動くもの、みたいなイメージを持っています。それぞれにきちんと栄養を与える必要がある。本当にその通りだなと私は思うんです。

そして適切な時間だけ働き、適切な時間だけ接続する。思いっきり自分の人生を生きるために。それも楽しく生きるために。接続しすぎちゃって、心が中毒になることなく適切に。きっと必要なことなんだと思います。

それから、この引用の少し前に書いてある「考える魂」についてもとても大切な気がしています。思考を停止させてはならない。自分はどう思うか、「I(私は)」を忘れない必要があるのではないかと思います。でも、これ、なかなか日々実践することは難しいなぁと感じています。


日本庭園の人工的な雲海。「純粋に自然が作り出したものと職人の手が創り出したものに違いを見出すことは困難である」というデカルトの言葉とリンクした。
日本庭園の人工的な雲海。
「純粋に自然が作り出したものと職人の手が創り出したものに違いを見出すことは困難である」というデカルトの思想とリンクした。

人間を大切にすること

自分のことをちゃんと大切にするだけでなく、誰かのことも大切にできたらいい。ちゃんとできているか自問自答したら自信がない。まだまだ私には難しいことなのでしょう。本書には次のように書いてました。

人間を大切にすること。人として、企業家としての私の指針はここにあります。人間の尊厳のために働くなど雲をつかむような怪しい話であり、現実にそんなことはできるはずがない。そう感じられるかもしれません。しかし私は人間の尊厳を守るために働くことは誰でもできると考えています。それは何か目にみえる結果を出すのではなく、いかに行動するかという問題だからです。人間の尊厳を守ることは結果よりも自分の思いと行動次第なのです。

人間主義的経営 第3章 私の心の大学(ブルネロ・クチネリ)

強くて、とても美しいなと思いました。

立春を迎えたばかりの寒さの中でも強く、美しく咲く花。多分梅。
立春を迎えたばかりの寒さの中でも強く、美しく咲く花。多分梅。

美しさ

この本ではいくつかの美についての記述が好きでした。特に気に入っているのは以下の文章でした。

美は外形ではなく、人間の内面の性質が形になったものです。美しいものは素朴で平易であり、美の存在するところには真実が存在します。素朴さは大きく豊かな精神の統合の結果であり、発想や素材の不足によるものではありません。平易さは明確さであり、美への理解を深め、人間の資質を向上させます。

人間主義的経営 第4章:カシミアの祈り(ブルネロ・クチネリ)

物事を複雑にしていないだろうか、素朴さは持ち合わせているのだろうか。そんな観点で物事を捉え直す必要が、私にはありそうです。

庭園の端っこにそっと咲いていた椿。なんとなく素朴さを感じた気がする。
庭園の端っこにそっと咲いていた椿。なんとなく素朴さを感じた気がする。

窓から空が見える方がいい

最後にまたのWebサイトを参考に好きなところをあげて終わりにしたいと思います。「Rai3のテレビ番組「In mezz'ora」にて、モニカ・マッジョーニから受けたインタビューの抜粋」です。
この動画の2分30秒あたりから、仕事中に空を見上げることが無駄なのかどうかという話が出てきます。ブルネロ・クチネリさんはこう言います。「でも空を見上げることは大切なことです。」と。

私にとって、空を見上げることは何より大切なことです。クリエイティブな仕事に従事しているわけではないのですが、それでも壁の色や空気の香り、そして何かあったらいつでも空を見上げることができるかどうかは、とても大事にしていることでした。

仕事してたら、生きていたら。傷つく日もあるかもしれないし、癒される日もあるかもしれない。いいことばっかじゃないし、なんでこうなるのってことも結構あります。そんなとき、なんとなくふと空を見て、落ち着ける時がありました。これからもあるでしょうね。とても共感しています。

明日も空を見上げようと思いました。鶯の鳴き声、そろそろ聞けるといいなと思います。今週も素敵な1週間になりますように。

真っ青な空と鮮やかな梅の花
真っ青な空と鮮やかな梅の花

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