将棋のビジュアライズ 〜 将棋の勉強4
将棋の上達には詰将棋が重要といわれる。そんなわけで、3手詰めを1日50問ペースでまわし600問ほど解いてみた。
繰り返す数が多いほど、脳は行為の学習定着は強まる。学習においては、9手詰めをじっくり考えるより、1手詰め〜3手詰めを0.1秒で解けるほうが重要と推測される。9手詰めを1問解く時間で、3手詰めを10問以上やれるからだ。3手詰めで超高速な回路を形成してから、難しい課題に挑戦するほうが、9手詰めで高速回路を形成するより、効率がよいだろう。
他分野を乱学習した経験からいうと、自分のスキルを大きく超えた課題に時間をつぎ込んでも、たいして上達しない。ピアノで初手から月光とか、デッサンで初手から透明物とか、英語で初手から小説を読む…とかは、だいたいうまくいかない。おそらく、将棋もそうだろう。ちょい雑魚な課題を大量に繰り返し、瞬殺可能になってからステップアップするのが、上達の早道に思える。
そのような方向性で、詰将棋を繰り返していて、なんとなく思い至った仮説やコンセプトについて。
どうも将棋は「王をとる」というイメージを捨て、もっと抽象的に捉えるほうがよいのではないか?という感覚を得ている。
支配領域のビジュアライズ
初期段階の図において、下手の支配領域(利き)を青、上手の王の生存可能領域を黄色にビジュアライズした図。
王の生存可能領域が右側に固まっている。詰将棋は「王をとる遊び」ではなく、この「生存可能領域を消滅させる遊び」と記述できる。
1手目。▲3二飛成。
竜と角の支配領域と接続され、王の現在位置が生存不可能な領域になった。王は黄色い3タイルのどれかに逃げなければならない。(1二は、王の移動にともない生存領域として潰れるので、死に手)。
△1一王。
王は逃げるしかない。下手の支配領域からは脱出できたが、周囲から生存可能領域がなくなってしまった。
▲1二銀
王頭に銀を貼って詰み。王の周囲は、下手の支配領域に塗りつぶされて、生存可能領域が完全に消滅している。
初手が▲3二角成だと、その後の▲2二銀で王が詰まない。生存可能領域が1マス残ってしまうのが見える。
つまり、駒を見るのではなくて、この青い領域と黄色い領域を心の目で見て、黄色い領域を塗りつぶすゲーム…として、ビジュアライズできる。
TVの将棋の実況は、こういうシステムがついていて欲しい。需要があるなら、自分(THE GUILD社)で作りたいくらい。
連結のビジュアライズ
もう1つの可視化コンセプトとして、「連結」がありえるのかなと考える。
多くの詰将棋や棋譜を見る限り、将棋というゲームは「自軍の駒Aと駒Bを連結する」「敵軍の駒Aと駒Bを分断する」という2つの作業から成り立っている。
先ほどの詰将棋で、連結を可視化すると以下のようになる。
守りが硬いというのは、「連結が密結合している」あるいは「連結に柔軟性がある(多少動いても、連結が維持される)」と記述できる。
攻めるというのは、「敵陣の連結を解除する」という行為に、攻めが厳しいという状態は「連結を解除せざるを得ない状態」と記述できる。
例えば、下図のように横並びの金は、相互連結された強い防御だ。1枚の竜では突破できない。一方で、頭に垂れ歩を1枚おくと…
左の金で受けてしまうと、相互連結が、一方こう連結になってしまう。下の金が丸裸に。結果、竜に突入されてしまう。逆に、右側の金で受ければ、2つの金の相互連結は維持される。
もう一枚、垂れ歩をかませると、この縦の相互連結も崩壊してしまう。
この、「強い連結、弱い連結の見極め」と「連結構造の維持、破壊のノウハウ」のボキャブラリーが、強さの基礎体力(詰めと受けに共通する普遍化能力)ではないかと推測される。
まとめ
おそらく、あらゆる将棋トレーニングの基礎前提として、この「支配領域や接続を瞬時に認識できる」「連結と分解を意識できる」という能力を、持っているほうがよいと感じる。
このスキルの習得は、伝統的なアプローチでは、大量の詰将棋、対局を経て、無意識に行われるのだろう。将棋を勉強する一番最初の段階で、この感覚を効率的に脳内で作ることはできないだろうか…と悩んでる。
3手、5手詰めを1000問づつぐらいやれば、見えてくるものだろうか?
日本デザインセンターのVISUALIZE 60の企画展にあやかって、将棋も色々なビジュアライズができないかなと考えた。VISUALIZE 60、オススメです。
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