#adtechtokyo 鹿毛氏による「表立って言うと本当は怒られるテレビの本当の話」参加メモ
どうも、フクパンマンです。
ad:tech tokyoに縁あって登壇させていただきました関係で、各セッションも参加しました。何個かぜひ皆さんにも共有したい内容がございますので、noteにまとめさせていただきます。(自分の登壇内容は後日まとめます)
さて、一発目は10/30に行われた、エステーで年間1位のCMを数々作り上げるなど様々な輝かしい実績をもつ、かげこうじ事務所 鹿毛さんによる「表立って言うと本当は怒られるテレビの本当の話」です。
TVCMとWEB広告は分裂して語られがちだが、分裂しているのはおしりくらい。視聴者は一人、どっち見てるかなだけ。一緒に良いところを使って補いあっていけばいい。
私のようなデジタルを中心としているマーケターとしては、知らなかった基本的なTVCMの内容から、WEBも絡めた活用方法に至るまでお話しいただけたので、本当に面白くあっという間の50分でした。
TVCM中心の方、WEB中心の方がそれぞれのメリットだけを語る講義や記事が大半だと思います。私も然り。それは、TVの方はWEBに自信がない、WEBのほうはTVの知識がないからです。両方にお詳しく実績もある鹿毛さんのお話は本当に参考になりました。特にWEB側のマーケターの方は参考にしかならないので必読ですよ。
よくある質問に対して鹿毛さんが回答を示していくという流れでしたので、その内容に沿ってお送りします(一部私の解釈をまじえて)。あと、内容の公開については鹿毛さんの許可をいただいております。ではどうぞ。
TVCMの"値段"について
まずは一番気になるテレビCMのお金の話。高い、費用対効果悪いと思いがちですよね。
〇TVCMって、高くないですか?
ひとりに「それ(伝えたいこと)」を届けるためのコストは、他のメディアに比べてTVは安いといえる。やはりTVCMの力は強い。それが高く感じるのは視聴者に響いていない、もしくは測れていないからだろう。
〇誰でも買えるんですよね?
"秘密のテレビCLUB"が実際にはある。笑
同じ単価でもいろんなメニューがある。そして、WEB広告と違い、メニューは全員に公開されているわけではない。
そして、見積を取ると、お客様ごとに値段が変わる。これは、業界として良くも悪くもあること。
「過去の数字」×「CMの入れ方(枠、場所など)」×「秘密CLUB経由かどうか」といった変数は、最終的なリーチや価格にかなり影響がある
(コメント→TV CMにおいては誰から何を買うかは本当に大事だと思います。情報の強弱は人と人の付き合いでも当然にありますよね。)
〇最低いくらから買えるんですか?
5000万円1週間
全国の人に2,3度見てもらうにはこれくらい必要。
しかし、6割以上の費用が首都圏関西出稿のために使われている。
100万円1週間
特定エリアの人に2,3度見てもらうならこれくらいでできる。エリアに絞ると結構お得ともいえる。
という感じでエリアに絞れば安く買える。これはコツでもあるが、上記の通り安いからリーチ効率がいい、効果が高いわけでもない。安く出稿できるよ、という話。
(コメント→まさにアドテックスポンサーのノバセルさんの話ですね。地方でクリエイティブテスト後、全国展開していく手法です。)
“物理的”に見てもらうためのクリエイティブとは
続いて、クリエイティブの話です。ここから更に本質的な議論になりました。
○制作費は高いのでは?
製作費はメディア費の1/10はかけるべき。クリエイティブを大切にしているかしていないかが本当に大事。
気にしないといけないのは、クリエイティブには賞味期限があるということ。どれくらい放映するからどれくらいの強さが必要か。強弱をつけるということ。
瞬間的に1週間だけ出すCMを作るならかなり強めに。クリエイティブの作り方は賞味期限を意識する必要がある。
例えば、消臭力は1か月くらい流し続けてももつように考えて作られてるし、むっしっしーは年中流れていたら気持ち悪いので1週間くらいの出稿でインパクトが出るように考えた。実際短期間の出稿なのに大きなインパクトを残すことができた。
〇制作にあたりTVCMは審査が厳しくないですか?
TVCMの考査は厳しく不透明。そして、TV局によって考査が違う。法と倫理を守っているか、著作権、肖像権、放送倫理、表示法などあるが、曖昧なところなのでいかに解決いくのかは勝負。
例えば、ムッシュ熊雄がバーに座っているシーンで「動物にお酒を飲ませるな」とクレームが来る可能性があるので、熊雄の前に蜂蜜を置いたりした。笑
ネットは逆に審査が甘く不透明。業界として文章化されていない曖昧さは何もすべて否定するところではなく曖昧がゆえに自由なところもあるとも言える。要はそこの中でどう戦っていくかだけ。
TVCMとWEB広告の使い方から見る最適解とは?
そして、TVCMの使い方、WEB広告との使い分けについて具体例を交えてお話しいただきました。
〇TVCMはWEB広告みたいにターゲティングできないのでは?
その通り、おおざっぱ。しかしこれでいいとおもう。こだわるならターゲット含有率という指標もあるが(別に見てはいない)。
ターゲティングできてしまうネットはセレンディピティがない。セレンディピティは、生活者に気づきを与えることができる機会になるので大事。
〇TVは記憶に残るというのは本当か?
全業界で1か月に4,500本のCMが流れる。その中で生活雑貨は1か月に350本。さらにそのうちで反応あるCMは100本。
その中で物理的に見せる(人の心に残る)クリエイティブが必要。GRP量だけではない。クリエイティブが大事。実際、一位を取った時もGRP量は多くはない。もちろん多い方がいいが、量とインパクトは比例しない。
〇TVCMって認知のメディアなんですよね?
広告主もTV局ですらも認知のため、と言ってしまうが、TVは認知だけでない。
トライアングルモデル「ブランド共感のピラミッド」がある。TVCMはこれのすべてを満たし、獲得につなげることもできる。正確にいうと、TV CMをフル活用すればすべてを満たすことができるということ。
人は経済合理性で動いていない、だからこそその人も気づいていない心のツボを押すことが大事で、心のツボはアンケート調査ではわからない。そしてその心のツボを押すことがしやすいのがTVCMだ。
結局、TVCMが得意なところ、WEB広告が得意なところはある。
〇TVCMとネット広告はやっぱり対立するの?
視聴者は一人。別にTVCMだろうがWEBだろうが広告には違いない。
TVCMをやったとき、効果が5,6倍になるときもある。しかし明確にTVCMが影響しているかどうかは言えないだけ。
上記の通り、TVCMで(しっかり計算したうえでの)心のツボ押しをし、ネットでエビデンスという流れにする。
エステーではコロナ後のユーザーの気持ちを推し量り以下のTVCMを作った。予想以上の反響で、エステー商品にも絡めつつ大きな効果を得ることができた。
ベスト個別学院ではコロナ後の不安を徹底的に解消していくことで、「大丈夫だよ」というメッセージにし、WEBサイトで大丈夫な理由を明確に示した。結果、3,4月は40%程度だった入塾数が、8月は前年比217%になった。
TVCMはWEBを利用すれば認知だけで終わらない。TVCMだけでももちろん獲得につなげられるが、WEBのいいところをもっと活用すればよい。
オンもオフも超えてお客さんのために一緒にやっていく
最後に、「お客さんは変わっていない。2007年もエステーではTwitterと連動したり、同じようなことをやってきた。
TVとネットの得意技をミックスさせる必要がある。TVという単独論で語ってはいけない。消費者を事業主の理論で分裂させてはいけない。」
と鹿毛さんは締め括りました。
いかがだったでしょうか。個人的には疑問に思っているところを完璧につぶしていただけた気がします。
テレビCMは高い。テレビCMは認知。ターゲットできない。そんなのは思い込み&うまくつかっていないだけ。テレビCMはこれからもずっと残りますから、どう活用すべきかのヒントが満載のこのセッションは宝になると思います。
心のツボ押しはTVやYoutube、WEB広告でエビデンスという役割整理も明確で何か霧が晴れた気がします。
鹿毛さん、本当にありがとうございました!
他のセッションレポートはこちらからどうぞ。
https://note.com/fkd89/m/m1f61c1d1d257
それでは、んちゃ。