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クリップを拾うようにしたら、ご飯が少しおいしく食べれるようになった話

オフィスの物陰に、書類を束ねていたクリップが、よく落ちている。

邪魔にはならない。拾わなくても、誰も迷惑とは思わない。

しかし、鈍いながらも妙にキラリと光るものだから、
なんとなく通る度に目に付く。
きっと、みんなそうだと思う。

でも、誰も拾わない。

拾わなくても、別に差しさわりないから。
拾うのには、かがんだり、手を伸ばさないといけないから。
取っても、誰にも褒めてもらえないから。

そして、落ちていても、何とも思わないから。
そもそも落ちていることにすら気づいていない人もいるだろう。

僕も、拾ってなかった。
しかし、綺麗好きでもないくせに、見て見ぬふりをする度に、「見て見ぬふりをしてしまった」という僅かばかりの後悔を覚えていた。

気がついたら拾えばよかった。と。

しかし、そんな思いはいつも一瞬で忘れてしまう。
でも、また落ちているクリップを見つけてしまうと、また後悔する。

その後悔は、少しずつ積もり続けて、
なにか舌触りの悪い嫌な気持ちへと膨らんで行く。

僕は、ある日、落ちているクリップを、拾うことにした。

きっと別に、誰も気付いてないだろうし、僕が後悔しなくなっただけ。

変わったことと言えば、手を伸ばしたりかがんだりした分、少しお腹が減るようになったのと、何か変な気持ちが無くなって、

ご飯がおいしく食べられるようになったくらいだろう。

落ちているクリップを拾う。
なんか、色々、そういうことかなぁと思った。

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