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#adtechtokyo 価値創造型マーケティングへの転換~販売偏重からの脱却~

どうも、フクパンマンです。

アドテックレポート第五弾は、サイバーエージェント 羽片氏、ニューバランスジャパン鈴木健氏、コカ・コーラ サブストロームパトリック氏、オルビス 西野氏によるセッションで、ad:techのセッションでベストプレゼンテーションを獲得した内容です。

このセッションはadtechキーノート後一発目のセッションだったのですが、今まで書いてきたレポートをすべて読んだ後の方が腹落ちが得られるため、このタイミングでの公開としました。1位をとっただけあって金言満載、価値のありすぎるセッションでした。ぜひまだの方は、他のレポートもご覧くださいね(一番下にリンクが張ってあります)。

先にお伝えしたほうが文章が読みやすいので書きますが、以下の視点でそれぞれの方がお話しされています。根本は同じながらも見事に様々な視点での価値創造が語られた素晴らしい内容です。
 ・西野氏→社内起点の価値創造、
 ・鈴木氏→市場バイアスをアップデートする価値創造
 ・パトリック氏→価値の最高点を決めずに高めていくプロセス
ではどうぞ。

社内で価値創造型の重要さの議論はどのようにされている?

販売偏重になりがちな中、どう価値創造型の考えにもっていくのかの議論が最初にされました。

鈴木氏:「それって〇〇らしいの?」の大切さ

この商品は何のためにあって、役に立っているのか?何のためにあるのか?が一番大事。自分が思っていることがお客さんにもそう思われるかは一番外しやすい。価値創造はうまくいかないほうが多い。
社内での議論は「それって〇〇らしいの?」他社が成功していることをやりがちだが、「それってニューバランスらしいの?」と必ず立ち返る。これができる企業はフィルターが強く、市場強いと思う。「ブランドは北極星みたいなもの。」方向はわかるが、日々の決定には役に立たない。方向があっているが成功するとは限らないという事。

西野氏:キャンペーンを作る仕事だけではお客様は動かなくなった

オルビスでも同様。「お客様を動かす」という言葉をよく使う。それを作業的にとらえてキャンペーンを作ることに終始してしまいがち。「特別感謝祭」というイベントが定期的に催されてきたが、何に感謝しているのか社内で誰も応えられなかった。
リブランディングをするきっかけは「社内の元気がなくなった」こと。キャンペーンだけではお客様が動かなくなり、市場でのプレゼンス=お客様とのつながりの強化をしないと事業が継続しないと感じた。トップダウンで「いいものを作っているなら、そういう風に伝えていかなきゃ」と奮い立って実践し効果が見え始めてきた。キャンペーンを作れば売れるという時代は終わったという事。

パトリック氏:世の中にまだない価値を通じて楽しさ・驚きを提供することによって世の中を活性化していく

コカ・コーラでは「新たな価値創造を通じて世の中を前向きに変革していく」というビジョンがある。常にここからスタートする。これをかみ砕くと、世の中にまだない価値を通じて楽しさ・驚きを提供することによって世の中を活性化していくということ(新しいコンテクストの発見)。
コカ・コーラでの初めてのアルコールである「檸檬堂」を開発するとき、競争が激しいところでどう勝っていくのか、まさにここはブランド価値が必須。今はお酒は「カテゴリーの価値」で買われていることが多いので、徹底的にレモンサワーの呑まれ方を追求し、レモンサワーはいまこだわりが価値となるとわかったので専門店のこだわりサワーというブランディングにした。

価値の見つけ方

続いて、どのように価値を見つけ出すのかが話されました。非常に具体的で刺激的な内容です。

パトリック氏 :「コネクティングドット」、意思と経験で価値を導く

檸檬堂の時に大事にしてたことは、消費者は自分が知っているものに対してしか評価できない。知らないものに対しては評価がブレる。リサーチは気付いている話で驚きはない。だからマーケティングを担当している人の意思が大事。それまでの経験+勘をもとに潜在的なところを伝えることが大事。

「コネクティングドット」が大事。どのドットとどのドットをつなぎ合わせると価値になるのか、そこがマーケティング担当の腕の見せどころ。過去の自分のドット、市場のドット、それをどうつなぎ合わせるか。

西野氏:社内の人間が同じように自社のことを語れるようにする

オルビスでは社内の人間が同じようにオルビスのことを語れるようになることから始めた。「値段と価値が本質的にバランスが取れたところ」を全員が同じバランスで話せるようになること。付加価値ではなく本質的価値を改めて見つめ直すことをした。原点回帰。処方が大事なのではなく、その処方をした理由。そうすると、手段が大事ではなく、本質的なところが大事であると理解でき、もともとオペレーションには自信があったので、その先の施策も一貫性が出た。社内で進めたときは象徴となるプロダクトを定め、合言葉を「follow me」-めげずにやり続けることが大事。

鈴木氏:バイアス(思い込み)を「そうじゃないかもしれませんよ?」と市場に問いかける

ニューバランスでは売れていたものが正義と思われがちだが、なぜ売れたのか、上位概念までWHYを深堀すると新しい考えがでてくる。もともとニューバランスは新しいものに挑戦してきた会社なのに挑戦しなくなること自体がブランドから反すること。顕在化したものはバイアスがかかっているので、そのバイアス(思い込み)を「そうじゃないかもしれませんよ?」というだけで市場は変わる。ランニングシューズも、あまり運動しない人がクッションが強すぎる靴を履くとよくない。「短い距離を走った感が欲しい」だけので反発力が高い、早く走れる靴の方がいい。

価値の確かめ方

そして、見つけ出した価値が「本当に価値のあるものかどうか」をどう確かめるのかについて話されました。

羽片氏、鈴木氏:「ニッチ」で終わらせない、オポチュニティーをテスト

ちょっと試してから広めることが多いが、「ニッチ」で終わらないように気を付けないといけない。常に次のことを考えながらテストしないと小さくまとまる。もしくはそれを見た競合に真似されたらおわり。オポチュニティーをテストするという考え。

西野氏:共通言語で立ち返れるようにする

オルビスではやはり、共通言語があると価値が確かめやすいと感じる。私たちは何の会社ですか?という共通認識があれば確かめた後も戻ってこれるから。オルビスは「通信販売の会社」ではなく「スキンケアを中心としたビューティーのブランド」としたことで価値が確かめられるようになった。

パトリック氏:価値の最高点を決めずに揺れながら進めていく

檸檬堂はユニークだった。通常だったらコンセプト→確認→商品開発→確認→導入が普通でそれぞれでチェックポイントがあるが、すべて並行で進めていった。そうすることによって、商品開発からのフィードバックをベースにコンセプトをブラッシュアップし、そのブラッシュアップされたコンセプトをもとに商品開発に生かす、といったことができた。さらに、市場に出した後も続けた。アウトプットの最高点(価値の最高点)を決めずに揺れながら進めていった。時間もストレスもかかるができたものはいいものだった。

社内で進行していくうえで苦労したこと

最後に、実際に価値創造型で社内を動かしていくときに苦労した点が語られました。

西野氏:社員に市場に目を向けさせる。そしてその市場で勝てることを徹底的に伝える。

歴史に誇りをもっている社員に対しては「なぜやらなきゃいけないのか」をしっかり伝えないといけない。しかし世の中でのプレゼンスが落ちてしまっていることを認めさせないといけない。「とにかく外部視点」にさせる。そして、比べされる土俵になったときに勝てるブランドであることをしっかり見せることが大事。すると自信を損なう事なく新しい環境に移動していける。

鈴木氏:マーケターは潤滑油にならなければならない

ニーズがあるときにすぐプロダクトを出すことが大事だが、メーカーだと18か月くらいかかってしまう。その時間のズレを無くす。価値の源泉はマーケティング・営業が見つけやすいので、プロダクト側に、常にもっとお客様の声をきいてすぐ伝えるような、潤滑油のような役割を果たさないといけない。

パトリック氏:戦略を熱く押し通し既視感を作る

檸檬堂は初見必ずアゲインストだった。レモンだけで3種類。パッケージもしずる感がない。しかし「うちはうちでしかできないことをやろう」で押し通した。戦略を熱く繰り返し伝えて「既視感をつくる」。

まとめ:社内から、市場から、まだ見ぬ世界からの価値創造をバランスよく

冒頭の繰り返しになりますが、西野氏からは社内起点の価値創造、鈴木氏からは市場バイアスをアップデートする価値創造、パトリック氏からは価値の最高点を決めずに高めていくプロセスが語られました。

これらはどれがいいというのではなく、すべて大事なのと、状況によってどれからすべきなのかは異なるという事です。ぜひ皆さんの立場に置き換えたとき、どう価値創造をしていけるのか参考にしてみてください。

以下、他のレポートになります。ぜひ。

高広氏による「コンテクストプランニングによるマーケティング」概論まとめ

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