1月11日(木):人口8000万人に向けたシナリオと選択
この数日は人口減のことを記していましたが、一昨日に人口問題について有識者グループから「人口を8,000万人の規模で安定させて成長力ある社会の構築を目指すように」との提言(人口ビジョン2100)がなされたことから、昨日はそのことを取り上げました。
今回の提言である「人口ビジョン2100」では以下の4つのシナリオが提示され、そのなかでBケースを目指すように進言がなされています。
●Aケース:2100年に9100万人
「Aケース」では、2040年に合計特殊出生率が人口を長期的に維持するのに必要な2.07に到達し、人口は2100年に9100万人になるとしています。その時点での高齢化率は28%となり、外国人の割合は10%となるとしています。
●Bケース:2100年に8000万人
「Bケース」は、出生率が2060年に2.07に達し、2100年には人口が8000万人で安定します。高齢化率は30%、外国人の割合は10%としています。
●Cケース:2100年に6300万人
「Cケース」は出生率が1.36で推移するシナリオで、2100年に6300万人となります。
●Dケース:2100年に5100万人
「Dケース」は1.13で推移するとしたもので、2100年には5100万人まで減少するとしています。なおCとDの2つのケースでは、その後も安定せず減少しつづける見通しです。
Bケースを実現するには現状の出生率「1.26」から、2040年ごろまでに出生率が「1.6」、2050年ごろまでに「1.8」、そして2060年に「2.07」まで引き上げなければならず、ここに到達させるには劇的な改革が必要になってきます。
人口構成は「既に起こった未来」と言われるように、生まれて以降は各年代の人口があとから増えることもないので、出生率を引き上げる以外に人口の構造を大きく変えることはできません。
そのためには、これからの政策や選択によって未来が半ば決定づけられるといっても過言ではないでしょう。
ちょうど年明けにはNHKスペシャルでも「2024私たちの選択 AI×専門家による6つの未来」と題した番組が放送され、そこでは今から30年後の2054年がどのような未来になっていくのか、AIと専門家によって6つのシナリオが提示される内容でした。
各シナリオは「人口」「賃金」「働き方」「イノベーション」「幸福度」の5つの観点で、それぞれが◎や〇、△、×などで表されたものです。
これらの項目は互いに作用しあい、なかには綱引きが生じるものもあるため、すべての項目が◎になるようなベストシナリオはありません。
それゆえどんな未来を良しとするのか、何を望むのかを考える必要があるわけですが、どのシナリオであっても全ては今後の選択次第です。
それは私たちの社会全体で選択していくマクロなこともあれば、何を大切にして、どこに住んで、何の仕事をして、何に時間を使うか、といった各個人や家庭のミクロな選択もあるでしょう。
ただ人口のような問題は選択の分岐点へのリミットが伴います。
時間軸のなかでの不可逆地点のようなものはあって、そこまでいってしまうと後で選択を修正しても変えられる未来の幅は小さくなります。
だから先送りできない問題と捉えて「いま」何をするかが重要です。
前述した有識者グループの副議長を務める日本郵政社長の増田寛也氏は提言したBケースをもとに次のようにコメントをしていました。
「もしこの数字が達成できなければ、社会保障などは完全に破綻する。若い人たちもさらに出産に慎重になり、地域のインフラの維持も難しくなり、さまざまな場面で選択肢が狭められる社会になっていく。容易ではないが、決して諦めることなくやっていくことが大事だ」
こうした認識に立ちながら、私たちも選挙を通じた政策への選択、そして各家庭や個人での選択をしていくことが大切だろうと思います。
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