10月14日(土):「肥満薬ショック」とフィットネス
先週の日経新聞には「『肥満薬ショック』食品銘柄の悩みは続く」と題した米国の状況に触れた記事がありました。
同記事の要旨は食欲を抑える肥満薬の売上が大幅に増加したことで、食品メーカーにとっての逆風になるのでは、との懸念が広がった状況を取り上げています。
2020年に登場したノボノルディスクの「オゼンピック」などの肥満薬は、投与された患者の食欲を抑えてダイエット効果を発揮するもので、その高い効果や副作用の低さから保険適用外で処方を求める患者が急増しており、オゼンピックの売上は4〜6月期に前年同期比で5割以上増加しているそうです。
こうした状況を受けて9月にモルガン・スタンレーが公表したリポートでは、2035年には米国の人口の7%にあたる2,400万人が同種の薬を服用するようになり、その結果としてスナックや炭酸飲料などの消費量が3%が減少するとした予測が盛り込まれたといいます。
食品メーカーでは今のところ目に見える影響はなく、グローバルでみれば新興国などの中産階級の成長で食事の簡素化が進み、スナックの需要が拡大している現状に触れて先行きへの懸念を払拭するコメントも出ていました。
記載のようにグローバルでみれば拡大するマーケットもあるから持続的な成長もあるでしょうが、実際に先進国で肥満薬が普及していけば消費される食品の総量やカロリーは頭打ちになっていく面はあるかもしれません。
そして、この点は食品メーカーだけに限ったことではなく、私たちのようなフィットネス事業者にとっても遠からず関係してくる話だと思っています。
というのもフィットネスクラブに新たに通い始める方の入会動機でいえば、その6~7割はシェイプアップを望んでいる現状があるからです。
効果が高くて副作用の低い肥満薬であるならば、それはフィットネスクラブにとっての中心的なニーズを解決する代替手段にほかなりません。
もちろん、肥満薬は食欲を抑えるだけであって体重増加を抑制したり、体重を減らすことには寄与しますが、薬によって筋力が増えたりプロポーションが良くなるわけでもないので、フィットネスクラブで継続的に筋力トレーニングをする必要性が廃れるものでもありません。
それでも頑張って運動や食事の改善をするよりも、手軽に薬を飲んで何とかしたいと思う人は一定数いるでしょうから、間接的な競合にはなるでしょう。
そういったこともアタマの片隅に置きながら、私たちフィットネスクラブとしてはシェイプアップ以外で対応できるニーズを増やしたり、場の魅力を高めていくことが大事だと思います。