3月11日(月):飲食店でのファストパス導入とサービスマーケティングの8P
先般の日経MJでは「行列店も有料『ファストパス』」と題した記事がありました。
こちらでは飲食店向けの予約サービスを手掛けるテーブルチェックが、行列のできる飲食店を有料で予約できる「テーブルチェックファストパス」を始めた旨を報じています。
テーマパークにおけるファストパスと同様、何時間も行列に並ばなくても済むように「時間をお金で買う」ことへの選択肢です。
導入事例として取り上げられていたのはミシュラン1つ星のラーメン店で、同店のように来店者の6割が外国人観光客のような状況だと、これを導入する意義は大きいでしょうね。
インバウンドユーザーにとっては日本滞在期間内に、できるだけ多くのところへ行ったり、多くのものを見たり、時間を有効に活用したいところです。
そのため行列に何時間も費やすのはもったいないから、今回のように500円程度のプラスαで並ぶことなくお目当てのお店での食事ができるなら、それを選択するユーザーも多いことでしょう。
この点はサービスマーケティングの8Pに照らし合わせてみても理に適っています。
サービスマーケティングの8Pは以下の通りですが、今回のファストパスはその中で「価格とその他コスト」面へのアプローチです。
1、サービスプロダクト
2、場所と時間
3、価格とその他コスト
4、プロモーションと教育
5、サービスプロセス
6、物理的環境
7、人
8、生産性とサービス品質
「価格とその他コスト」でのポイントはサービス利用者にとっての総コストを考える点にあります。
なぜなら顧客はサービスを受けるにあたって料金以外のコストも負担しているからです。
そのため他のコストを削減すれば価値が増して価格の妥当性は高まるし、場合によっては価格アップも可能になってきます。
その他コストの例としては以下のような要素があげられます。
・時間的コスト(待ち時間、受付時間)
・身体的コスト(疲労、煩雑な操作など)
・心理的コスト(不満、苦痛)
・感覚的コスト(うるさい、臭い、寒暖など)
・必要な追加サービスのコスト(時間延長、サポートなど)
・問題解決のコスト(トラブル対応)
今回の飲食店におけるファストパスであれば、待ち時間の時間的コストが削減されるし、何時間も外で立ちながら待たなければならない身体的コストや、それによる不満などの心理的コストも解消可能です。
これらがワンコイン程度で解決できるとあれば、そこにプラスαの金額を投じる人はいるので、ユーザーの潜在的な「不」を解決しながら実質的な単価アップにもつなげています。
ファストパスそのものは「時間をお金で買う」ことへの選択肢ですが、大事なポイントは前述したようにサービス利用者にとっての総コストを考える点にあるでしょう。
そのような観点のもとで自社サービスを点検してみると、その他コストを削減して価値と価格のバランスを改善していく余地が見つかるかもしれません。