9月19日(火):「いろは歌」将(リーダー)の心得編
現在は島津忠良(日新斎)の「いろは歌」に関連したことを記しており、本日もその続きをもう少しばかり。
「いろは歌」の日新学は薩摩藩における教育の基本となり、島津4兄弟はもとより戦国島津家の家臣団へ、さらには近世の鹿児島藩の家臣団である郷中教育でも重視・尊重されて、明治維新の志士たちを生んでいきます。
また現代でいえば薩摩出身の名経営者であった稲盛和夫さんも、自分が受けてきた教えの原点がこれだとご自身で語られている通り、今に至るまで脈々と受け継がれて多くの人材を輩出する基盤を担ってきました。
一昨日は47首の中から生きるうえでの「考え方」に付随するものを、昨日は「日常の心得」に言及したものピックアップしましたが、本日は「将(リーダー)」について触れたことを紹介します。
「科ありて 人を斬るとも 軽くすな いかす刀も ただ一つなり」
※意訳
罪人であっても軽率に処罰をしてはならない。慎重に考えなさい。殺すことより生かすことの難しさをよく考えなさい。
「そしるにも ふたつあるべし 大方は 主人のために なるものと知れ」
※意訳
主人の悪口には二通りあって、本当に主人のことを思って心から諫言しているのと、自分の私利私欲から鬱憤を言っているとあるが、いずれにしても主人の為になることであるから主人は寛大な心で受け止めて、反省するべきである。
「やはらぐと 怒るをいはば 弓と筆 鳥にふたつの つばさとを知れ」
※意訳
上に立つものはあまり優しくては部下になめられる。しかし厳格過ぎても陰口をたたかれる。鳥に二つの翼があるように、優しさと厳しさの二面を上手く使い分ける人が、人を動かす。
「酒も水 ながれも酒と なるぞかし ただ情けあれ 君が言の葉」
※意訳
将たる者は、深い情けで部下に当たるようにいつも心がけなければならない。そうすることにより部下は大いに士気を高めるものである。厳しい言葉の裏の優しさが人の心にしみる。
「もろもろの 国やところの 政道は 人にまづよく 教えならはせ」
※意訳
いろいろな国や所の法律を人民にはよくよく教えておかなければならない。十分にわきまえていない人民を、法を破ったからといって罰することは慎むべきである。真の民主的な政治は「よく知らしむる」ことから始まる。
なお明日は「戦」編をお届け予定です。