「アバター近藤が解説する業界史~逆タイムマシン経営論696」
皆さん こんにちは アバター近藤です。
「逆タイムマシン経営論」として、業界唯一の経営情報誌であるフィットネスビジネス誌のバックナンバーを引用しながら、それぞれの年のトピックスや記事について、示唆することは何かをアバター近藤なりに解説していきます。
「歴史に学ぶ」とは良く使われる言葉ではありますが、フィットネス業界史について、詳細に検証した文献は恐らくないと思いますので、これから良い歴史を作るために何かしらのお役立てになれば大変うれしく思います。
~Fitness Business通巻第24号(2006.5.25発行)「世界の動き~フィットネスに保険が効く時代」1~※名称等は当時、一部文章省略
病の治癒から予防へ、というパラダイムシフトは、国の施策とアメリカ人の行動の両方に大きな変化をもたらしており、それに伴って個人が主体的に自分の健康を管理することに金銭的なインセンティブを与えようという動きが少しずつではあるが広がってきている。
こうした流れは、フィットネス業界の今後25年間の動向、市場規模、社会的役割にもっとも深遠なインパクトを与える要因になると確信している。
フィットネスは全ての人の権利
現在ほとんどのアメリカ人は、医療サービスを受けたり健康を維持することは、個人の支払い能力に関係なく政府がサポートすべき項目であると考えている。
今日では、健康保険は企業の福利厚生制度の必須アイテムとなり、大多数のアメリカ人が健康保険を当たり前の権利と見なすようになった。
フィットネスクラブの会費や、ダイエット、サプリメント、その他の予防医療関連の費用が国庫や雇用主によって助成されるというところまで、もうあと一歩のところに来ている。
予防に焦点を当てた先進的取り組みの事例
現在ほとんどの健康保険団体は、医学的な裏付けのある予防医療(例えばスクリーニングやワクチンなど)に対しては支払いに応じている。
しかしながら、ごく最近まで健康的なライフスタイルを支援するような費目は新奇なものとみなされ、保険の支払い対象とはされてこなかった。
例えば、禁煙プログラムについては、そもそも喫煙そのものが悪であり、その予防にお金を使うのはふさわしくないと考えられてきた。
またエクササイズについては、レクリエーション(遊興の一種)であるとみなされてきた。
減量プログラムについては、様々な研究によりその予防医学的な効果が実証されているにも関わらず、自己満足的なもの、表面的な見かけへのこだわりを助長するものであるという偏見が根強く残っていた。
こうした事情により、健康的な生活を送ることに金銭的なインセンティブを与えるような制度は、疾病の治療やワクチンのような予防医療と比べると、社会の理解も優先順位も支出額も低い状況にある。
しかしながら、ここにきて、肥満は病であるという認識が広まりつつあり、これが起爆剤となって大きな変化が起ころうとしている。
実際、民間を中心に多くの団体や企業が、先に挙げたような偏見や障害を乗り越えて、具体的なインセンティブプログラムを展開している。
~ここまで~
「健康的な生活を送ることに金銭的なインセンティブを与えるような制度は、疾病の治療やワクチンのような予防医療と比べると、社会の理解も優先順位も支出額も低い状況にある」という文言は、現在の日本の状況にもそのまま当てはまると思います。
予防的な観点と保険料経営に親和性が高い民間保険会社では、一部、インセンティブを用いたサービスを提供しているものの、その広がり方は緩やかなままです。
パンデミック下でGOTOキャンペーンを実施し、旅行関連支出を政府が何故支援したかと言えば、経済学の観点で最大公約数的にお金が全国に循環するとの理屈だと個人的には分析しておりますが、その発想で増え続ける医療費全体もコーディネートして欲しいと考えます。
少し前の日経新聞に、医療機関への助成金についての非効率性が指摘されておりましたが、その辺りの問題に鋭くメスを入れて下さる政府関係者が本当に増えて頂くことを望むばかりです。
お読みいただきありがとうございました。