遠隔でオッサンのイビキを止めてみた
私は、鍼に通っている。
そこは、カーテンを隔てて患者が10人ほど横になるスタイルで。
先生は回遊しながら、患者に鍼を打つ。
先生に鍼を打ってもらった後は、数十分、その場でリラックスするのだ。
私はこのリラックスタイムが好きだ。
鍼が刺さっているので、動いてはいけないという制限の中でじーっとする非日常。
先生に鍼を打ってもらい、「ハァ〜〜」っと、一息ついた矢先、
「グガァ〜〜〜〜!!」とオッサンのイビキが聞こえてきた。
オッサンもリラックスモードに入っているのであろう。
リラックスしすぎて爆睡しているようだ。
オッサンのリラックスし放題のために、私、ひいては他の患者全員のリラックスが犠牲になるなんて許せない!!
と思ったものの、今の私は、針のムシロ。
動くこともできない中、どうやってオッサンのイビキを止められるだろう?
私は、ふと、映画『マトリックス』を思い出した。
マトリックスの中の世界は、人も含め、こーんな感じのコードで出来上がっており、だから、イメージするだけでどんな自分にもなれる・・みたいな、
そんな話だったような・・。
そして、現実世界も、素粒子というもので出来ており、人間も金属も全て、細かくしていけば、最後は同じ素粒子だという話を聞いたことがある。
とすると、この世界のベース構造はマトリックスと同じになるんじゃないか?
だとすると、
こーんなこともできんじゃね?
というわけでやってみることにした。
まず、どこに寝てるのか分からんオッサンをイメージしてみる。
これだけの声量を出すおっさんだ。
それなりの体格のオッサンに違いない。
イビキの音質からして、おそらく50代であろう。
できる限り確率を上げるために、オッサンを100人集めたら、50人はいるであろうオッサンのビジュを想像する。
よくも一人で気持ちよく寝てくれたな、オッサンよ・・・
お前のイビキもここまでだ!!!
とイメージの中のオッサンの鼻を、グバッっと防いでやった。
すると、どうだろう。
オッサンのイビキが止まったではないか!
ありがとう!マトリックス。
ありがとう!キアヌ。
しかし、オッサンも負けてはいない。
ちょっと黙ったと思ったら、また徐々に音を上げてきやがる。
なんと、油断のならないオッサンだろう。
私の心のキアヌとイビキ・オッサンとの壮絶な戦いだ。
しかし、心のキアヌが優勢に見える。
心のキアヌが、ビシっと鼻をつまむとその瞬間、オッサンは少し黙るのだ。
この調子だぞ、キアヌ!
「そんなわけあるかい」
って思われる方もいるだろう。
しかし、私は信じている。
確かに、心のキアヌでオッサンの鼻を塞いだ途端にイビキは止んだのだ。
その後も続いたオッサンとの戦いのせいで、全くと言っていいほど、リラックスはできなかったが。
まぁ、それはそれとして。
#創作大賞2024 #エッセイ部門
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