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本のこと全般。絶版本。忘れられた療法。
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記事一覧

John Bowlbyの「母子関係入門」(邦題)に関して①

私は前にも少しだけ他の記事で触れましたけども、臨床での基本姿勢は「here and now」です。here and nowは最もパワフルで純粋で、曇りがない。それは大学院を出てから時間が経っても変わっていないですし、現場でも大事なことを繰り返し確認するだけです。 (ただし、所属している組織側から苦しめられ続けることになる。最大の問題はそれです。ほとんど人間が現実に隷属するのを見てきた。それが現実だ。でも他よりもちょっと勇気がある人は、現実に落ちた者たちと戦い続けなければならな

エティエンヌ・ド・ラ・ボエシの「自発的隷従論」について

「たしかに人間の自然は、自由であること、あるいは自由を望むことにある。しかし同時に、教育によって与えられる性癖を自然に身につけてしまうということもまた、人間の自然なのである」 p. 43 「よって、次のように言おう。人間においては、教育と習慣によって身につくあらゆることがらが自然と化すのであって、生来のものといえば、もとのままの本性が命じるわずかなことしかないのだ。と。したがって、自発的隷従の第一の原因は、習慣である。だからこそ、どれほど手に負えないじゃじゃ馬も、はじめは轡

私は森有正さんの著書「いかに生きるか」が大好きです

森有正さんの「いかに生きるか」はもう絶版になってしまっていますが、とても良い本です。復刻されてもよさそうな本と思います。 森さんは神学者…になるのですか…、臨床心理の先生ではないですけど…、っていうか、ある人の「肩書き」なんぞhere and now原理主義者みたいな私にとってはほとんど無価値と思っているのですが、とにかく、厳密な意味で、私とはやっていることが違ったとしても、私はこの「先生」をすごくすごく尊敬している。 この本には、人として…というか「日本人」として…です

Judith Hermanの「心的外傷と回復」についての私見

この本は現行です。何理由かわからないが、過去(絶版)バージョンに比べて現行ものはサイズが小さくなっている。 小さくて分厚い本は開き癖が付きやすいのでやめてもらえないですかねマジで。なんなんだこれは。 内容は、重めです。精神医学の範囲。ストリートで軽く言われるような口語的トラウマのようなものが載っているのではなくて、病院で扱われるような重い範囲の内容です。とても大切なことがたくさん書かれている。 (重め、と言っても、ストリート的トラウマを考える上でももちろんとても参考になる

大切な本の中の1冊

河合隼雄さんの「心理療法論考」はすごく心に残っている一冊。私の心理学の勉強はこの本から始まった。言うたら私の心理学のスタート地点。 根。 この本をよく読んでいた頃の、思い出も一緒に封じ込められているのでかなり特別な本。大学の図書館で棚から抜き出して、その場で何回も、何回も、立ち読みした。 そんなことを繰り返していたらどうしても欲しくなってきて、買うことに決めた。Amazon。当時約5000円。むちゃくちゃ高い。届くまでは本の状態が心配だったが、図書館でいつも読んでいたも