トークンによる経済圏創造とマーケ変革
このnoteは連載モノですが、本編で最後です!これまでのサマリ ↓
前回のnoteから結構いろんな妄想が膨らんでいて、そこと結構関連性が高い内容になっているので、まだの方は先にそちらを読んでいただけるとです。
では、本編へどうぞ!
コミュニティーのエンジン
コミュニティートークンの活用
FAQコンテンツや無料ウェビナーはロータッチ・テックタッチ、uwotech awardはハイタッチの施策の延長線上にある。これらのコミュニティータッチで作った施策と既存のカスタマーサクセス施策を組み合わせて、新しいカスタマーサクセスの在り方をデザインする。カスタマーサクセスが主体となってCXを尖らせ、サービスの独自性を確立していく。
この時、重要な論点のひとつはインセンティブ設計だ。たとえば他にも利用者がいる中で、他の生産者がしてきた質問に返答するという生産者が何人いるだろうか。そこにインセンティブは存在しない。そのままだとコミュニティーといいつつ、すべての質問に結局運営者である僕たちが回答するほかなくなる。これではただのこれまでのロータッチ施策と変わらない。
コミュニティーに関わるモチベーションをいかにあげるか。その答えがコミュニティートークンだ。
ブログ、イラスト、動画、レシピ、レビュー投稿などといったサービスでも、コミュニティートークンを活用した先行事例がすでにある。
QAのコンテンツ投稿、初心者ユーザへのサポート、ウェビナーへの登壇など、コミュニティーへ貢献してくれたユーザに対してもコミュニティートークンを還元する。
コミュニティーに貢献すればするほど経済的な対価として返ってくる仕組みだ。コンテンツ投稿やユーザサポートに対するモチベーションを作り、コミュニティーが自走・活性化する状態を目指す。
UXの中に輸入されるトークン
促したい行動は何もカスタマーサクセスの施策に閉じた話に限らない。サービスそのもの活用だって同じ話だ。僕たちの仕組みは毎日船の上で使ってもらうサービスなので、粘着性が極めて重要になる。毎日持って行ってもらって記録をつけてもらえないと、記録すべき内容が溜まり、面倒くさくなる。その先にあるのは解約の未来だけだ。こんなバッドエンドは絶対に避けたい。
自動給餌機は使わないと魚が死ぬから、頑張って使おうというモチベーションが湧く。ICTブイなどは特にいじらなくても勝手にデータが取れる。ポケマルなどのECは売上に直結するので頑張って更新しようと思ってもらえる。
でも僕らのサービスはそういう必然性が弱い。今日の記録を今すぐつけなくても魚は死なないし、売上が下がるわけでもない。データを集約・分析するのにも一定の時間が必要だし、その過程は地味で面倒くさい作業が続く。その間はただただ記録を習慣化してもらうほかない。
息を吸うようにデータを記録してもらうためにはどうすればいいだろうか。もちろんUXはとことん磨く。給餌記録がついていない生簀があったら、自動でアラートメールを促すなどできることはやる。ただそれではまだ弱い。
そこで、日々の生産管理で記録をこまめにつけることで、発行者である僕たちが生産者にトークンを発行する。これがコミュニティートークン運用の出発点になる。言ってみれば、カスタマーサクセス起点で考えたトークンの概念をサービスの中に逆に輸入するということだ。サービスを利用すれば利用するほど、トークンが溜まる。コツコツと記録を積み重ねることにインセンティブを設計し、適切な行動が自然と行われるように仕組みで促す。「しなければならない」と怒られるより「思わずやりたくなる」方が圧倒的にUXがいい。
トークンによる新たな経済圏の創造
コミュニティートークンを集めて何かいいことがあるのか。そのメリットについても同時に考えてみたい。
たとえば、限定ウェビナーの参加権や限定コンテンツへのアクセス権といった権利を一定量以上のトークンを持っている人しか付与しないようなルールにする。たとえばuwotech awardがわかりやすい例で、一定量以上のトークンを所有している人だけがエントリーできるようにする。
また新しい機能開発の方向性を考える際にもトークンを使いたいと思っている。発言権の重さをトークンの量によって変える。つまり、1人の票の重さを意図的に変える。サービスを愛してくれている人、より長くたくさん使ってくれている人の意志がよりプロダクトに宿りやすくなるようにする。
ほかにもサービスの利用料の割引や優遇に充てることができても面白いかもしれない。一定量のトークンを持っている人だけに地銀や信金が優遇利率を適用する、みたいな取組みも可能性がありそうだ。
さらにトークン自体にはブロックチェーン技術を活用するため、管理者が必要ない。だから利用者同士で自由にやりとりすることができる。サービス提供者である僕らの手を介する必要はない。たとえばこんなことができるようになる。
繁忙期に人材を融通してもらう代わりにトークンを渡す
中間魚(稚魚から途中まで育てた魚)とトークンを他の生産者と交換する
自社の知見を共有するウェビナーを開催し、参加費をトークンで集める
自社ブランドの商品パッケージのデザイン費をトークンで支払う
参考になった事例の生産者を応援するためにトークンで投げ銭をする
餌や栄養剤を現金ではなく、トークンで購入する
他のデジタル通貨との交換ができるようになったり、トークンを活用したい他のプレーヤー(餌会社など)がコミュニティーに入ってきたりすると、さらに幅は広がる。サービスの活用やコミュニティーへの参加を重ねることで生産者は資金調達すらできるようになる。生産管理を日々丁寧に行い、魚と向き合う努力を重ねれば重ねるほど、資金調達が容易になる。融資でも商社金融でもない新しい資金調達の形を実現できる。
コミュニティーマーケティング
カスタマーサクセスはSaaSにおける生命線だ。そしてここまでの仕組みが機能すれば、セールスの方にも変化がでてくる。
成功事例ができたら、事例を販促LPやAwardのページなどに公表し、対外的に発信できる。事例も充実してくれば、似たような課題感、規模感、魚種のものを伝えることで営業の説得力が増す。
コミュニティーを作っていくことのメリットは他にもある。「魚種別コミュニティー」がそれ。コミュニティー自体に参加する価値があるわけだから、自分たちが必死に営業をする必要はそこまでない。願わくば、生産者間でどんどん場が広がっていくといいなと思っている。もう毎回必死にメールアドレスを集めなくてもいいし、迷惑メールに入れられる死骸リストの山に悲観的になることもない。関わり方はそれぞれだと思うけど、コミュニティーには生産者ならだれでも入れる。
かつては営業はピンポンダッシュと押し売りで売上をつくるスタイルが多かったかもしれない。でも、必要としていない人に無理やりサービスを買わせるというのはなんだか変な話。営業される側もする側もエネルギーを使わないといけなくなる。相手の状況を理解して、どう役に立てるかを考えて価値を感じてもらうのが営業の大事な仕事だと僕は思っている。そういう意味ではコミュニティーに参加している人たちは抱えているリアルな悩みや状況が感じ取れる。自然とサービスと関連する話題が出ることだってあるかもしれない。そうなると、もっと双方にとって自然で、気持ちのいい営業活動が展開しやすくなるんじゃないかと思っている。
トークンによるターゲット拡張
加えて、既存のセールスからの変化を考える上で面白くなるかもなと思っているのが、トークンの存在。なぜならばコミュニティー内での貢献でトークンを手に入れる体験がCXの起点になるからだ。つまり僕らのサービスを体験する手前の段階からユーザはトークンを手に入れ、そして交換する。
この経済圏が成立してさえれば、サービスを使うことがトークンを入手することと直結するわけだから、生産管理の意識やニーズ(データを可視化したい、分析したい)がそこまで高くない人にもサービスを利用してもらうきっかけを演出しやすくなる。
導入が「トークンを増やしたい」でも別に問題はない。我々はサービスのUXの中でデータを可視化したり、日ごろの飼育履歴を振り返ったりすることの価値を時間をかけて丁寧に伝える。そこで本質的な気づきや発見が得られるところまでをCXとして設計しきるところまでの橋渡しをするのがトークンの役割だ。
「時代遅れ」な業界こそチャンス
養殖業界は電話やFAXが主流で、デジタル化がそこまで進んできた業界ではない。生産履歴も紙につけてストックしたままという生産者は多い。システムを入れても、実際はほとんど活用しきれていないケースも多いんじゃないか。データがどれくらい有効に活用されているかには疑問が残る。
逆説的だけど、この状況は非連続的なイノベーションを起こすのには最適だとも考えられる。中途半端に既存の仕組みがあるとスイッチングに心理的にも経済的にもコストがかかってしまうため、急激な変化は起こりづらい。
たとえば携帯電話。30代や40代はガラケー→スマホと変化してきたけど、今の子供たちの場合はいきなりスマホから始まる。ガラケーの時代を知らない。だからガラケーから乗り換えるかを考えない。そしてスマホを土台にした新しいブームが若い世代から次々と生まれていく。
いわゆるイノベーションのジレンマのような苦しみがないので、広がりはじめると一気に業界の常識を書き換えていける可能性がある。ただし最初はめちゃくちゃ大変。データを蓄積することが重要だと考える生産者さんがパートナーになってくれるとはいえ、全員がデジタルツールに慣れているわけではない。不慣れなことを習慣化するのにはストレス負荷もかかる。
ニッチだからこそ価値にフォーカスできる
養殖業界というのは極めてニッチな事業領域だ。会計システムとか転職支援サービスとかなら幅広くターゲットがとれるけど、僕らはそうじゃない。しかも養殖の中でも僕らがターゲットにしているのは魚の養殖だけだ。海藻類や貝類を養殖している人たちには何の役にも立たない。
日本には魚の養殖をしている会社は全国に6300社あまりしかないし、その中でターゲットになりそうな会社はわずか1700社程度のみ。めちゃくちゃ少ない。限定的な市場だ。
数が少ないということは、ティッピングポイントが早期に来るということだ。僕らのような小さいスタートアップでも丁寧に1社1社向き合うことで、面白い社会現象や潮流みたいなものをつくれる可能性がある。
しかも、ニッチな業界は無用な競争をして疲弊するリスクを下げられる。広告に予算を使う必要もないから、小さくても筋肉質な事業運営ができる。純粋にサービスをよくしていくことにリソースを投下できる。
なぜ競争しなくていいのか。それは参入するプレーヤが少ないからだ。ニッチな業界で期待できる売上の伸びは大きくない。他のスタートアップはもっと市場規模が大きいところをやりたがる。大手のシステム会社だって大して売上が期待できない事業領域に積極投資しようとは思わない。
過去投稿もお楽しみください!
最後までお読みいただき、ありがとうございました!このnote、実はもともと2.2万字ある超長編noteの一部でした。そして本編でこのnoteも完結!結構最後2本が壮大な話になってしまいましたが、足元は地道に丁寧に事業を創ります。過去記事もよろしくお願いします!面白ければ「スキ」をお願いします!
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一緒にコミュニティーやカスタマーサクセスを盛り上げてくださる方を募集しています。以下のような方からのご連絡をお待ちしています。
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