真冬のホラー
先日、友人と話していた時に、「中高大の3学期ってフワッとしいてよかったよね。」ということで話題になりました。その友人も私と同じ中高一貫の私学に通っていたため、高校3年と大学4年以外は、教員が入試や卒業生の対応に追われていることもあり、色々自由に過ごせていました。中学生の頃は、PlayStationやセガサターンなど新しいハードが次々に出ていた時代だったので、ゲーム漬けだった記憶があります。そんなゲーム漬けの中、ゲームより夢中になった映画(小説といった方が正しいかも)のお話です。
先生より怖い
私が通っていた中高校では、1時間目が始まる前にホームルームではなく、読書の時間がありました。当時は昭和の香りを残した男子校だったので、読書以外のことしていれば、しっかりとどつかれていました。そんなある日、読む本がなくなってしまい、母に何か面白い本があれば貸して欲しいと頼んだ時に貸してくれたのが、鈴木光司のリングでした。
「見たものを1週間で呪い殺すビデオテープ」という設定に最初はチープさを感じていたのですが、何とも言えないリアリティがあり、感化されやすい中学生だったので「呪いの原因がわかってないと自分も呪われるのでは?」と思うくらいでした。文字を読むのが苦手な私ですが、その怖さから続きが気になって、休み時間や放課後はもちろんのこと宿題もせずに1日で読み終えました。当然、宿題をしていなければ先生からどつかれるのですが、それ以上に恐怖を感じる作品でした。
ネタバレでは?
今どきの中高生(20代前半まで?)はリングという作品を知らないことが多いのですが、貞子といえば誰のことかわかるようです。貞子が呪いの正体でもあるので、貞子だけ知っているというのは、少し複雑に思います。
それはさておき、私がリングにリアリティを感じたのは、貞子に行き着くまで超常現象が起きないところにあるのではないでしょうか?冒頭で学生が呪いにより死んでしまうところはオカルトですが、その後は雑誌記者(映画では松島菜々子演じるテレビ局のディレクター)の浅川のフットワークと大学講師(映画ではいまやハリウッドスターの真田広之)の高山の観察眼で情報を集めて謎を解き明かしていくだけです。奇妙なことが起こらないので、映像になると物足りなく思う方もいるのかもしれませんが、だからこそビデオテープという身近な媒体に潜む呪いの怖さが際立っているのかもしれません。
思い出補正
リングは、「らせん」「ループ」「バースデイ」と続編や前日譚にあたる作品が出ています。これらは、貞子の出生、呪いの正体や目的が描かれており、呪いのビデオ事件が起きた原因が明らかになっています。貞子が有名なのはこれらがあるからでしょうか?
リングの後に、「呪怨」や「着信アリ」のような身近なものからはじまるホラーがでてきましたが、最近はあまり聞きません。ホラー映画は洋画などもふくめればあるのですが、リングをはじめて読んだ時のようなハラハラ感はありませんでした。やはり中学生の時のように素直に物事を受け取れなくなったのが原因でしょうか。また、学生時代の時とは違って働き始めると1〜3月は年度終わりでどの業種も忙しく「フワッと」できません。しかも、4月になったら新人や新入生の対応で、気がつけばゴールデンウィークになっています。時間がないのは仕方ありませんが、作品を楽しむ余裕くらいはもちたいものです。