漁港めぐり【その8】
今回も前回に引き続き若狭湾の魚を買い出しに行きました。今度は、京都府ではなく若狭街道を抜けた先にある福井県小浜市と高浜町の魚市場を巡りました。小浜市は律令時代から日本海側の海の窓口として栄えた港町です。私はこの小浜に調査に行くことをとても楽しみにしておりました。というのも、北陸の魚は美味しいと聞いていたこともありますが、小浜産の魚から初めて発見された寄生虫というのがけっこういるためです。寄生虫がいるかもしれないから魚を買いに来たというと言いがかりのようですが、それだけ魚の鮮度が高く、若狭湾の生物が多様ということなので、前向きに捉えてください。
とれたて市場
小浜漁港の横にある魚市場です。複数の水産店が並んでおり鮮魚や乾物などを購入することができます。近くには卸売市場、フィッシャーマンズワーフ、鯖ずし工場などが並んでいます。フィッシャーマンズワーフではパック詰の握り寿司も売られており、その場で小浜の魚を食べることもできます。
今回は購入を見送りましたが、アマダイ, マグロ, タチウオ, マツバガニ, アカエビ, サザエ, あん肝, ナマコなどが売られておりました。乾物は、サバとカレイの干物が多かった気がします。
UMIKARA
ここも高浜漁港のそばにある即売所?です。最近できた場所のようで、魚市場というよりかは、道の駅のような地産の品を販売する観光客向けのスーパーマーケットのようなところです。地元で採れた魚の海鮮丼などを食べられるレストランも併設されておりました。定員産のジャケットに“サニーマート”と書いてあったので、高浜駅近くにあるサニーマートと関係があるのでしょうか?サニーマートにも地元の魚が多く並んでいました。
購入した魚(とれたて市場)
ユメカサゴ
130〜980mという深いところに住んでいるカサゴ科の魚類です。小ぶりなものが、6匹ほどでまとめて700円で売られていました。以前、浜松で調査した時に寄生虫がでてこなかったので、食べてみたい&安いという理由で購入しました。お腹の中が黒いのが特徴だったりします。
シログチ
底曳を行っている漁港でよく手に入る印象があります。ニベ科に属しており、愛想がないことを表す慣用句「にべもない」の由来となっているようです。結構、寄生虫がいるんですよね。
イシガキダイ
寄生虫的にはあまり印象のない魚でしたが、けっこうお高い魚だったと思うので購入することにしました。シログチ2匹と合わせて1000円でしたので。
購入した魚(UMIKARA)
イサキ
釣りをする方にとっては、磯釣りでの対象種として有名ではないかと思います。とても美味しいのですが、ちょっと高いです(今回も1匹700円前後)。珍しい寄生虫がいるので、奮発して5匹ほど買いました(近所のサニーマートでも)。
クロソイ
1000円ほどしましたが、購入しました。検査魚類の買い付けの際に、魚の見極めをしてもらっている京大生が「刺身にする」といったのが決め手でした。寄生虫とか関係ありません。この魚の刺身が食べたかったからです。
サワラ
ちょっと小ぶりでしたが、500円ほどで購入できました。購入した理由は食べたかったからです。上記の京大生に炙りにしてくれるよう頼み込みました。私のサワラへのこだわりは以下の記事を参考にしてください。
検査結果
今回はイサキから珍しい寄生虫が出てくることを期待して解剖を始めましたが、残念ながら何も出てきませんでした。和歌山(当然太平洋)のイサキから見つけたことあるのですが、よく考えると今回も含めて日本海側のイサキから見つけたことはありません。同様のことが、ユメカサゴでもおきました。和歌山や浜松で購入したユメカサゴには寄生虫はいなかったのですが、今回ユメカサゴから結構な数の寄生虫を発見しました。もしかすると、太平洋と日本海で寄生虫の棲み分けみたいなのがあるのかもしれません。加えて、ユメカサゴの単生類はもしかすると新発見になるかもしれません。要文献調査です。
他にも、サワラやシログチやクロソイからも寄生虫を見つけることができました。いずれも、宿主である魚にもそれを食べた人にも影響を与えることはありません。私がここで寄生虫とよんでいるのはエラに寄生する単生類のことなのですが、この単生類は宿主が死んでエラに血液が流れてこなくなるとエラからはがれていきます。そんな単生類を見つけることができているということは、売られている魚がそれだけ新鮮ということです。
後片付け
検査した魚をそのまま捨てることはしません。ちゃんと美味しくいただきました。ただ、検査の翌日には仕事や学校などがあるメンバーで行っているため、検査や調理にかけられる時間は限られています(私が検査して、終わったらすぐに下ごしらえを始める、みたいな流れです)。限られた時間で全ての魚を調理するために、調理法を限定して調理をしています。今回は、刺身+天ぷらに加えて、私の希望で魚の見極め&調理担当の京大生に「イサキを香草と一緒にホイル焼きにしてほしい」と頼みました。というのも、以前にイサキを食べた時に、何かアクセントを加えたらもっと美味しくなりそうだったというのが、お願いした理由でした。肝心の味というと、「内臓を取ろうとしたら脂肪だらけだったので、あえてそのままにした」という調理担当者の機転のおかげで、寄生虫は取れなかったものの最高に美味しいイサキがいただけました。
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