砂漠はいつまで砂漠なの?
前回は、草原や森林ができるまでを紹介しました。遷移はとても長い時間がかかるので、今は原っぱしかないところも、いずれ森林になることでしょう。また、山火事などで消失した森林もいつか元に戻るはずです。その一方で、地球上にはほとんど木のない草原や草1つ生えていない砂漠があります。どうして、いつまでも樹木が生えない砂漠が存在するのでしょうか?
バイオーム
草原や砂漠の話をする前に確認しておきますが、地域によって生息している植物(樹木)の種類は異なります。そして、その植物に依存している動物の種類も異なります。このような地域の植生とそこに生息する動物を含めた生物のまとまりをバイオーム(生物群系)と言います。後述しますが、日本でも地域によって生えている植物の種類は異なります。兵庫県出身の私は、大学で北海道に行った時に、その違いをかなり感じましたが、みなさんも旅行などで似たような経験をしたことがあるのではないでしょうか?
バイオームの違いをもたらす要因は年間の降水量と平均気温です。概要は、文字で説明するより図を見てもらう方が早いです。11種類のバイオームのうちサバンナとステップは草原で砂漠とツンドラが荒原になり、この4種類のバイオームでは樹木が生えていません。それをふまえて補足説明をすると、森林を形成するにはそれなりの降水量が必要になってきます。そのため、針葉樹林を除けば、世界の年間降水量(880mm)をこえているところでしか森林は形成されていないことになります。最初の問いかけの「いつまでも樹木が生えない砂漠が存在する」の答えとしては、「降水量がない地域はいつまで経っても砂漠である」となります。また、ツンドラをみれば、気温が低すぎるとそれなりの降水量があっても、樹木はおろか草も生えない事がわかります。つまり、水と温度がある程度なければ、いくら時間をかけても森林になることはありません。
次に、世界にはどのような植物が生えているか(バイオームがあるか)を見ていきましょう。
年降水量が多い地域(森林のある地域)
熱帯多雨林・亜熱帯多雨林:熱帯や亜熱帯の降水量が多い地域にある。主に常緑広葉樹からなる森林で、階層構造が発達している。植物の種類が非常に多く、動物についても種類数が多い。フタバガキの仲間などの植物が多い。
雨緑樹林:熱帯や亜熱帯のうち、雨季と乾季がはっきりと分かれている地域にある。雨季に葉をつけ、乾季に落葉する落葉紅葉樹からなる森林。チーク類などが生息。
照葉樹林:温帯のうち、年平均気温が比較的高い温暖帯に分布。葉の表面に厚いクチクラ層をもつ常緑広葉樹からなる森林からなる。シイ, カシ, タブノキなどが中心。日本だと本州南部や四国と九州に多い。
硬葉樹林:温帯のうち、夏に乾燥し、冬に雨の多い地域に分布している。厚いクチクラ層をもち、硬くて小さい葉をつける樹木が多い。オリーブやコルクガシなど。いわゆる、地中海とか瀬戸内海の植物。
夏緑樹林:温帯のうち、年平均気温が比較的低い冷温帯に分布。主に落葉広葉樹からなり、春の芽吹き、秋の紅葉、冬の落葉と季節による変化が激しい。日本であれば、東北や標高の高いところにある。ブナ, ミズナラ, カエデなど。
針葉樹林:ユーラシア大陸から北アメリカ大陸の北部に広がる亜寒帯。面積は広大だが、森林を構成する種類が少ない。主に常緑針葉樹からなる。トウヒやモミ、カラマツからなる。あと、ここに生息する動物は大型である。ヒグマとか。
ちなみに、年降水量が多い順に紹介しています。
年降水量が少ない地域
サバンナ:熱帯や亜熱帯に分布している。主にイネ科の仲間からなる草本からなる草原で、低木もまだらに存在する。ライオンとかキリンがいる風景を思い浮かべてもらえればいいかと。
ステップ:温帯の内陸部に分布。イネ科の仲間が中心の草原で、樹木はほとんどない。バッタなどの昆虫や穴を掘って生活する哺乳類が多い。モンゴルを思い浮かべてもらえるとよいかと。
砂漠:熱帯や温帯で、降水量が極端に少ない地域に分布している。乾燥に適応した多肉植物(サボテンなど)が点在する程度。動物もだいたい夜行性。
ツンドラ:北極圏などの寒帯にみられる。土壌中の栄養塩類が少ないため、ほとんど植物はない。草本類はあるが、コケや地衣類もある。この地域の代表的な動物はトナカイです。
このまま、日本のバイオームについて話したいところですが、それなりに量が多くなるので、今回はここまでにします。世界各地の森林の特徴をざっくり話しただけになりますが、ここのところはどうやっても面白くすることができません。教えたり、興味を持ってもらうのに難しいところです。
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