【インデックス投資を始めよう】5.将来の経済成長から考える投資すべき国
前回は投資すべき資産について学習しました。
しかし、どの国の資産を買えばいいのか迷う方もいらっしゃるかと思います。
そこで、今回は投資判断の基準として「将来の人口増加」、「将来のGDP」、「国の信用・影響力」に注目するようにしましょう。
●GDPとは
GDPとは国内総生産のことで、一定期間内に国内で新たに生み出されたモノやサービスの付加価値のことです。このGDPがどのくらい増減したのかを確認することで、国内の景気変動や経済成長を推定することができます。
これを百分率で示したものを経済成長率といいます。
●経済成長は人口増加と労働生産性の上昇
経済の拡大には「人口の増加」と「労働生産性の上昇」が必要です。経済の成長を考えるとき、まず着目すべきは将来の人口がどう推移するかです。
人口が増えると労働者が増え、経済の成長につながります。
それに加えて労働生産性も上がれば、より力強い経済成長が望めます。
●GDPと株価に相関はあるのか
実はGDPで計った経済成長と株価には相関があるとされています。
株価は市場参加者の投機的な行動も反映するため、実際の価値よりも高くなったり、低くなったりすることがあります。
しかし、最終的には企業の配当利回りや利益成長を反映した本源的価値に収束していきます。
『インデックス・ファンドの父』ジョン・C・ボーグル氏は株式市場の本源的価値と経済成長について、以下のように記しています。
●将来の人口増加
2019年に発表された国連の新たな報告書によると、世界人口は2019年現在の77億人から2050年の97億人へと、今後30年で20億人の増加となる見込みです。さらに、世界人口が2100年に約110億人でピークに達する可能性があると結論づけています。
つまり、世界経済は2100年まで成長し続ける可能性が高いのです。
今から投資を始める方はとても良い時代に生まれましたね。
では2100年をゴールにして投資すればよいのかというと、そうではありません。今(2022年)から78年後にお金持ちになっても意味がないからです。
今回私たちに必要な情報は今から28年後の2050年までの人口の推移です。
2050年まで世界人口は増加を続けるものの、地域によって増加率に大きな差があるようです。
世界人口の増加の過半は、インド、ナイジェリア、パキスタン、コンゴ民主共和国、エチオピア、タンザニア連合共和国、インドネシア、エジプト、米国(予測される人口増が多い順)の9カ国で生じます。インドは2027年頃、中国を抜いて世界で最も人口が多い国になるとみられます。
現在GDP世界首位の米国の人口は、2020年で約3億3,000万人です。2019年に国連が公表した世界人口予測では、2050年における米国の人口を約3億7,900万人と推計しており、2020年から増加の見込みです。
さらに2100年では、4億3,400万人になるとされています。こうした人口の増加は、米国経済の成長に寄与するでしょう。
●移民人口と移民比率
世界人口が増えてますが、増えた人口はその国にとどまるとは限りません。
それでは人口はどこに流れていくのでしょうか。
これは移民人口をみればわかります。
移民人口が増えれば、その国での出生率が低くても人口減少に歯止めをかけることができます。
そして、移民比率の大きい国は人口減少が起きにくく、継続的な経済成長が見込めます。
景気が安定していることで知られ、30年以上リセッション(経済のマイナス成長)を経験していないオーストラリアは移民比率が約30%と非常に高いです。オーストラリアは移民人口ランキング9位で人口が約2570万人に対し、移民が770万人です。
移民人口ランキング1位の米国は、人口が約3億3,000万人に対し、移民が約5060万人で移民比率は約15%です。
移民人口ランキング2位のドイツも人口が約8,300万人に対し、移民が約1,580万人で移民比率は約19%と比較的高いのが特徴です。
そして移民人口ランキング3位のサウジアラビアは、人口が約3480万人に対し、移民が約1350万人で移民比率は約39%もあり非常に注目集めています。
その他、移民人口ランキング8位のカナダも人口が約3,800万人に対し、移民が800万人で移民比率は21%と高いです。
ちなみに日本の移民比率は約2%と少なく、人口減少に歯止めがかからない状況です。
●将来のGDP
基本的に人口が増えれば、経済も成長していきます。
それでは2050年までのGDPはどう変化するかを確認していきましょう。
今回は皆さんになじみの深いMERベースのGDPの変化を確認していきます。MERベースのGDPとはドル建てで計算したGDPのことです。
下記の表は2016年~2030年~2050年の世界GDPランキング(MERベース)の予測です。2030年までには中国が米国を抜き、世界1位になっています。その他、インドは2030年までに日本を抜き世界3位の経済大国になっています。
下記のデータは2016年~2050年までの平均人口増加率、平均1人当たりの実質GDP成長率、MER変換成長率、平均GDP成長率(米ドル)をまとめた表です。
平均人口増加率、平均1人当たりの実質GDP成長率がいずれもプラスになっている国は将来の経済成長に期待できます。
●国の信用・影響力
皆さんにとって信用のある国とはどのような国でしょうか。
おそらくイメージされる国のほとんどが先進国ではないでしょうか。
先進国とは工業や科学技術で発展しており、生活・教育・医療・インフラ整備等の水準が高く、政治的に自由で安定している国を指します。
先進国の中でもG7のカナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国の7か国は世界経済に大きな影響を与えています。
またG7に経済力のある国を加えたG20もより大きな力を持つようになっています。加盟国のGDPが世界の約8割以上を占め、世界の経済分野において大きな影響力を有しています。
G20はG7にオーストラリア(先進国)、韓国(先進国)、アルゼンチン(新興国)、ブラジル(新興国)、中国(新興国)、インド(新興国)、インドネシア(新興国)、メキシコ(新興国)、ロシア(新興国)、サウジアラビア(新興国)、南アフリカ(新興国)、トルコ(新興国)、欧州連合・欧州中央銀行を加えた20か国・地域です。
これらの国は世界経済を牛耳っているといえるでしょう。
●投資すべき国はどこか
今回の投資判断の基準は「将来の人口増加」、「将来のGDP」、「国の信用・影響力」でしたね。
2050年まで人口及び1人当たりGDPが増加し、なおかつ世界経済に影響力のある国は以下の通りです。
【先進国】
オーストラリア、米国、カナダ、イギリス
【新興国】
インド、インドネシア、南アフリカ、トルコ、メキシコ、サウジアラビア
最後に国別の豊かさの指標となる1人当たりGDPを計算し、投資すべき優先順位を決定します。豊かな国は政治や経済が安定しやすい傾向にあるのでカントリーリスクを抑えることが期待できます。
【対象10か国の2050年の1人当たりGDPランキング】
1位 米国 89980ドル
2位 サウジアラビア 78430ドル
3位 イギリス 72474ドル
4位 カナダ 67880ドル
5位 オーストラリア 66733ドル(※)
6位 トルコ 42073ドル
7位 メキシコ 35855ドル(※※)
8位 南アフリカ 25676ドル
9位 インドネシア 21985ドル
10位 インド 17095ドル
※日本は64071ドルでオーストラリアの次の順位
※※中国は35548ドルでメキシコの次の順位
UN, World Population Prospects : The 2019 Revision及びPwC
長期的な経済展望:世界の経済秩序は2050年までにどう変化するのか?(The long view: how will the global economic order change by 2050?)
Table B1: GDP at MER rankings (at constant 2016 US$bn)のデータを元に著者算出
以上の結果から最も優先して投資すべき国は米国となりました。
第2位はサウジアラビアとなりましたが、サウジアラビアは新興国であり、投資リスクが非常に高いと考えられます。サウジアラビアについて、詳しく知りたい方は下記のリンクをご確認ください。
【サウジアラビアETF】おすすめのETFご紹介
2050年までに世界経済は年平均約2.5%のペースで成長すると予想されていますので、リスクを分散しつつ投資するのであれば世界(オールカントリー)に投資しても良いですね。
なお、投資する上での注意点は、経済成長率と株価や債券価格は必ずしも比例しないという点です。お金は信用できるものほど集めることができます。
先進国と新興国で比べた場合、信用において分があるのは先進国となるでしょう。
特に新興国債券はリスクが大きいためご注意ください。新興国債券は高い利回りが期待できる反面、デフォルトリスクや為替リスクが高い傾向があります。
様々な観点から考えて投資するようにしましょう。
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