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消防から消防への転職には、こんな事情があった

先日、当本部の採用試験に、すぐ近くの消防本部に勤務する職員が受験に来ました。
なぜ現役の消防職員が受験に来たのか、しかもこんなに近くの消防本部を。と気になり聞いてみると、
「仕事の日に、出動があるわけでもないのに、夜寝ることが許されない。それが、とてもつらい」
とのことでした。

彼が勤めるのは、人口5万人程度を管轄する小規模な消防本部。
彼によれば、
「先輩が深夜まで事務作業で起きていると、若い職員は寝られない。というよりも、寝ることが許されない。だから勤務の日はいつも寝られません」
とのことでした。

小規模消防の内情

彼が働いているような小規模な消防本部では、車両の更新や整備の事務は出動隊である消防・救急隊が担当します。
中規模以上の消防本部(管轄人口約30万以上)になると、専門の部署が事務を担当するため出動隊の事務は少なくなりますが、小規模な場合は、少数の職員で消防業務全般をこなさなければなりません。
そのため、出動隊の事務の守備範囲が広いのです。

わたしの勤める消防本部は、中規模な消防本部ですので、出動隊にそこまでの事務負担は課せられません。
出動隊の事務作業と言えば、出動後の報告書を作成する程度。
とは言え、深夜でも報告書を作成するために、眠れないことがあります。
ただし、それは出動があった場合です。
彼が務めるような小規模消防本部では、
出動はないけど、事務作業が終わらない。
ために深夜も眠れないのです。
しかも、彼のような若い職員は、自分の仕事が終わっていても、先輩の誰か一人でも起きていれば、先輩に配慮し、寝ることができないのです。
これは小規模な消防本部ではよく聞く話です。

起きているだけでは時間外手当は支給されない

出動隊であれば
「寝ることができないのは当たり前」
という意見もあると思いますが、出動していれば緊張感もあり、自然と目が覚めます。時間外手当も支給されます。
しかし、当たり前ですが「先輩が寝ていないから起きている」という理由では手当は支給されません。

もちろん寝ることを優先したいのであれば、毎日勤務の事務職を選択することもできますが、現場で活躍したい思いがあるのであれば、彼が別の消防本部を受け直す選択をするのも理解できます。

改善するために

小規模な消防本部で働く職員の方は、業務の守備範囲が広く、大変だとは思います。
しかし、深夜の時間帯は仮眠時間として職員は休息が認められています。
「仕事がないのなら、出動に備えて仮眠をとる」ことは当たり前のことです。
無駄に起きていなければいけないという風潮を変えるべきでしょう。

これまで続けてきたことを変えようとすると年長の職員の中には
「俺の若いときは…」
と言い、改善が進まないことが想像できます。

そんな場合には消防職員委員会があります。
職員委員会で複数の職員から意見が上がれば、消防長は職員に回答を示さなければなりません。仮眠時間は与えられた休息時間なので、仮眠をとるのは当たり前という回答以外できないはずです。

最後に

意味のない業務や良くない風潮は少しずつ改善すべきです。
若い職員がこれからも希望を持ち、長く働ける良い職場にしたいものです。

結局、試験を受けに来た彼は不合格となりました。彼は在職しながらの受験でしたので、今も元の消防本部で勤務しています。
彼が将来、悪い風潮を変えられる幹部職員になることを期待しています。

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