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第444回消費者委員会本会議 概要

第444回消費者委員会本会議 概要(本文5,040文字)
 
 
内閣府消費者委員会は、令和6年9月19日に第444回消費者委員会本会議を開催し、「食品衛生基準行政に関する最近の動向や食品の安全性に係る課題」ほか、消費者基本計画の検証・評価・監視について検討しました。
ここでは消費者庁による今後の食品安全に関する方針にクローズアップし、食品衛生基準行政に関する議事をまとめます。
 
<議事次第>
(1)消費者基本計画の検証・評価・監視(食品衛生基準行政について)
(2)消費者基本計画の検証・評価・監視(次期消費者基本計画策定に向けた意見(第2回)素案について)
(3)その他
 
<消費者基本計画の検証・評価・監視(食品衛生基準行政について)の概要>
1. 食品衛生基準行政の移管について
食品衛生基準の策定が厚生労働省から消費者庁に移管された。この移管は、科学的な安全性を確保し、消費者の利益を増進することを目的としている。消費者庁は、食品安全に関する啓発を推進し、消費者のニーズを基準策定に反映させる役割を担う。
 
1-1. リスク評価とリスク管理
食品安全分野におけるリスク分析は、国民の健康を保護するためのプロセスである。リスク評価は食品安全委員会が行い、リスク管理は消費者庁や関連省庁が実施する。リスクコミュニケーションを通じて、消費者や関係者に情報を提供し、意見を反映させる。
 
1-2. 食品衛生基準行政の移管とリスク管理
消費者庁が食品衛生基準を策定し、科学的な安全性を確保することを目指している。リスク評価は食品安全委員会が行い、厚生労働省や農林水産省がリスク管理を担当する。これにより、消費者の利益を向上させることが期待され、また、食品の安全性に関する情報公開や消費者の意見表明の機会を確保する。
 
1-3. 食品等の規格基準と食品衛生法・食品安全基本法
食品衛生法は、食品や添加物の基準を定め、器具や容器包装の規格も策定することを求めている。食品安全基本法では、食品健康影響評価を施策ごとに実施し、生活状況を考慮した施策の策定が求められる。また、規格基準を定める際には委員会の意見を聴取する。
 
1-4. 食品衛生法による規格基準(全体概要)
食品添加物は指定添加物476品目、既存添加物357品目がある。食品に関しては、残留農薬や汚染物質、微生物の基準が設定されており、773物質が残留基準として定められている。また、遺伝子組換え食品についても規格があり、9作物334品種が対象となっている。
 
1-5. 規格基準改正等(令和5年度公布実績)
食品添加物としてL-システイン塩酸塩の基準が改正され、新たにフィチン酸カルシウムやポリビニルアルコールが指定された。また、残留農薬や動物用医薬品に関する基準も見直され、特にミネラルウォーターの鉛基準が改正された。さらに、遺伝子組換え食品に関する基準も更新され、トウモロコシ1品種が新たに規格に追加された。
 
1-6. 食品衛生行政の消費者庁への移管について
消費者庁は食品安全行政の司令塔機能を担い、厚生労働省が所管していた食品衛生基準の策定を引き継ぐことで、科学的な安全性を確保し、消費者利益の向上を図る。この移管により、科学的知見に基づいた食品安全の啓発が進み、販売現場のニーズや消費者行動を迅速に反映させることが可能になる。また、国際的な食品基準に関する議論にも一体的に参画できるようになる。
 
1-7. 消費者庁に移管されたこと
消費者庁に移管された食品衛生行政の具体的な内容について。特別の注意を必要とする成分の指定や、添加物の販売禁止が含まれている。また、食品や添加物の基準・規格の制定、農薬成分に関する資料提供の要請も消費者庁の役割となる。
 
1-8. 厚生労働省にて引き続き実施すること
厚生労働省が引き続き実施する食品衛生監視行政の役割について。不衛生食品の販売取締りや営業施設の衛生管理、食中毒発生時の原因究明などが含まれる。また、感染症対策や健康危機管理も厚生労働省の責任であり、これらの活動を通じて消費者の健康を守ることが求められている。リスク評価や管理の実施状況のモニタリングも重要な業務であり、食品の安全性を確保するための基盤となる。
 
1-9. 食品等の規格基準設定の流れ(食品添加物を例に)
消費者庁は食品安全委員会に食品健康影響評価を依頼し、その結果を基に食品衛生基準審議会で審議を行う。評価結果に基づき、食品添加物の指定が実施される。消費者庁は必要な資料を確認し、評価内容を十分に検討することで、科学的根拠に基づいた基準設定を行う。
 
1-10. 食品衛生基準審議会(新設)の概要 令和6年4月~
審議会は、消費者庁及び消費者委員会設置法に基づき設立され、食品衛生法に関連する規格基準の策定を担う。また併せて、食品添加物の指定や健康影響評価を行い、消費者の安全を確保するための重要な役割を果たしていく。
 
1-11. 食品衛生基準審議会に設置される部会
審議会に設置される部会には、食品規格部会、乳肉水産食品部会、添加物部会、農薬・動物用医薬品部会、器具・容器包装部会、新開発食品調査部会、放射性物質対策部会、伝達性海綿状脳症対策部会が含まれる。各部会は専門的な知見を持つ委員によって構成され、食品の安全性を確保するための規格や基準の策定を行う役割を担う。
 
 
2. 食品衛生基準行政の取組状況等について
食品の生食規格基準の策定や遺伝子組換え食品の安全性審査、農薬残留基準の設定などの取組を通じ、食品の安全性を科学的に確保することにより、消費者の健康が守られ、食品に対する信頼が向上し、国際基準との整合性が図られ、国内外での食品取引が円滑に進むことが期待される。
 
2-1. 食肉の生食に関する規格基準について
腸管出血性大腸菌による食中毒事件を受け、牛肉の生食用規格基準が策定された。牛の肝臓は内部から腸管出血性大腸菌が検出され、生食用としての販売が禁止された。また、豚肉も公衆衛生上のリスクから生食用としての販売が禁止されている。生食用食肉は、腸内細菌科菌群が陰性であることや、専用の設備で衛生的に加工されることが求められる。
 
2-2. 生食用食肉の規格基準の概要
生食用食肉は、腸内細菌科菌群が陰性であることが求められ、専用の設備と器具を用いて衛生的に加工されなければならない。また、肉塊の表面から1cm以上の部分は、60℃で2分間以上加熱殺菌する必要がある。牛の肝臓や豚肉については、特に公衆衛生上のリスクが高いため、生食用としての販売が禁止されている。
 
2-3. 遺伝子組換え食品等の安全性審査
審査を行っていない遺伝子組換え食品や、これを原材料に用いた食品の製造・販売は食品衛生法に基づき禁止されている。安全性審査は品目ごとに消費者庁が食品安全委員会の意見を聴いて実施され、評価結果に基づいて安全性が確認される。
 
2-4. 既存添加物の安全性の確認 令和6年7月末現在
現在、489品目の既存添加物があり、そのうち159品目は基本的な安全性が確認されている。ほか41品目は、現段階での安全性検討が急務ではないとされ、150品目は迅速かつ効率的な確認が求められている。また、139品目は名簿に収載されており、24種類83品目の製造・加工基準が設定されている。
 
2-5. 農薬等の残留基準の設定状況
食品安全委員会は、農薬等の残留基準を設定する際、適正使用に基づく残留試験結果や国際基準を考慮する。ポジティブリスト制度が導入され、すべての農薬等について残留基準が設定される。基準を超える場合は販売が禁止される。現在、773物質に対して残留基準が設定されており、食品の安全性確保が図られている。
 
2-6. 器具・容器包装のポジティブリスト制度の導入
器具・容器包装のポジティブリスト制度は、食品用器具や容器包装に使用される材料の安全性を確保するために設けられたもので、規格が定まっていない原材料の使用を禁止する。したがって、安全が担保された材料のみが使用され、国際的な衛生規制との整合性が図られる。
 
2-7. 食品中の汚染物質について
汚染物質とは、食品の生産や加工、環境汚染の結果として非意図的に含まれる物質であり、代表的なものとしてはかび毒、重金属(カドミウムやヒ素)、放射性物質など。食品衛生法に基づき、汚染物質に対する規格基準が設定されており、特定の食品に対しては個別の基準が設けられている。
 
2-8. 我が国における食品安全行政の枠組み
日本の食品安全行政の枠組みは、リスクアナリシスの手法を用いて、食品の安全性を確保するために、消費者庁が総合調整を担っている。食品安全委員会はリスク評価を行い、科学的知見に基づいてリスクを客観的に評価する。また、消費者庁は食品の安全性に関する情報を公開し、消費者や関係者が意見を表明する機会を確保することが求められている。
 
2-9. 関係府省庁間の役割分担
消費者庁は食品安全行政の総合調整、食品安全委員会はリスク評価、厚生労働省は食品衛生に関する規格や基準の策定、農林水産省は農薬や動物用医薬品の管理をそれぞれ担当する。これにより、各機関が連携し、食品の安全性を確保するためのリスク管理やリスクコミュニケーションが実施される。関係府省庁間の情報共有と協力が、消費者の健康を守る。
 
2-10. 関係府省間の連携強化
食品安全基本法に基づき、各府省庁が密接に連携し、リスク管理やリスクコミュニケーションを推進する。定期的な連絡会議を開催し、情報共有や政策調整を行うことで、食品の安全性を確保するための一貫した施策が実施される。
 
 
<まとめ>
消費者庁への食品衛生基準の移管により、科学的な安全性の確保と消費者利益の向上が目指されている。リスク評価は食品安全委員会が行い、厚生労働省や農林水産省がリスク管理を担当することで、食品の安全性を高める取り組みが進められている。
 
また、食品衛生法や食品安全基本法に基づき、食品や添加物、器具の規格基準が設定されており、特に残留農薬や汚染物質に対する基準が強化されている。ポジティブリスト制度の導入により、安全が確認された材料のみが使用されることが求められ、消費者の健康を守るための体制が整備されている。
 
さらに、遺伝子組換え食品の安全性審査や、既存添加物の評価も重要な課題として取り上げられており、これらの基準設定は消費者の信頼を高めるために不可欠である。関係府省間の連携強化が進められ、食品の安全性確保に向けた総合的な取り組みが期待されている。
 
このように、食品衛生基準行政は科学的根拠に基づいた規制を通じて、消費者の健康を守るための重要な役割を果たすことで、今後も食品安全の確保に向けた取り組みが一層強化されることが期待される。
 
 
<配布資料>
議事次第
https://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2024/444/doc/20240919_gijishidai.pdf
【資料1】 食品衛生基準行政に関する最近の動向や食品の安全性に係る課題(消費者庁食品衛生基準審査課)
https://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2024/444/doc/20240919_shiryou1.pdf
【資料2】 次期消費者基本計画策定に向けた消費者委員会意見(第2回)(素案)
https://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2024/444/doc/20240919_shiryou2.pdf
【参考資料1】 消費者委員会に寄せられた要望書・意見書・声明文等一覧(8月分)
https://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2024/444/doc/20240919_sankou1.pdf
【参考資料2】 委員間打合せ概要メモ
https://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2024/444/doc/20240919_sankou2.pdf
 
 
<【資料1】 食品衛生基準行政に関する最近の動向や食品の安全性に係る課題(消費者庁食品衛生基準審査課)の収載>
1. 食品衛生基準行政の移管について
【スライド01】 食品衛生基準行政に関する最近の動向や食品の安全性に係る課題
【スライド02】 食品衛生基準行政の移管について
【スライド03】 リスク評価とリスク管理
【スライド04】 食品等の規格基準と食品衛生法・食品安全基本法
【スライド05】 食品衛生法による規格基準(全体概要)
【スライド06】 規格基準改正等(令和5年度公布実績)
【スライド07】 食品衛生行政の消費者庁への移管について
【スライド08】 消費者庁に移管されたこと
【スライド09】 厚生労働省にて引き続き実施すること
【スライド10】 食品等の規格基準設定の流れ
【スライド11】 食品衛生基準審議会(新設)の概要
【スライド12】 食品衛生基準審議会に設置される部会
 
2. 食品衛生基準行政の取組状況等について
【スライド13】 食品衛生基準行政の取組状況等について
【スライド14】 食肉の生食に関する規格基準について
【スライド15】 生食用食肉の規格基準の概要
【スライド16】 遺伝子組換え食品等の安全性審査
【スライド17】 既存添加物の安全性の確認
【スライド18】 農薬等の残留基準の設定状況
【スライド19】 器具・容器包装のポジティブリスト制度の導入
【スライド20】 食品用器具及び容器包装のポジティブリスト制度について
【スライド21】 食品中の汚染物質について
【スライド22】 我が国における食品安全行政の枠組み
【スライド23】 関係府省庁間の役割分担
【スライド24】 関係府省間の連携強化
 
 
 
<一次情報>
第444回 消費者委員会本会議
https://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2024/444/shiryou/index.html
 
<参考情報>
食品安全基本法(平成15年5月23日法律第48号
https://www8.cao.go.jp/hyouka/h21hyouka/h21jigo/h21jigo-13shiryou01.pdf
 

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