11月は薬剤耐性（AMR）対策推進月間です！
11月は薬剤耐性（AMR）対策推進月間です！（本文2,344文字）
内閣府食品安全委員会は、令和6年11月1日付にて薬剤耐性菌の食品健康影響評価に関する情報を更新し、11月を「薬剤耐性（AMR）対策推進月間」とし、2023年12月から2024年11月までの1年間の薬剤耐性の対策取組について情報を公開しました。
【11/18】追加情報
厚生労働省が、「11月は「薬剤耐性（ＡＭＲ）対策推進月間」です」として、情報発信をしています。詳しくは厚生労働省HPまたは＜関連情報＞をご確認ください。
＜薬剤耐性とは＞
食品安全委員会は、「薬剤耐性菌（AMR: Antimicrobial Resistance）」を次のように説明しています；
薬剤耐性菌とは
病原菌に感染した患者の治療に抗菌剤が使われます。抗菌剤は、菌の分裂を止めてしまう、菌のタンパク質合成や遺伝子の複製を阻害するなど、様々な作用で菌に働きます。これに対して、細菌も抗菌剤を分解する酵素を出したり、抗菌剤の作用部位を変化させて結合できなくするなどして抵抗（耐性化）します。このような耐性化により、抗菌剤の効きが悪いまたは効かなくなった細菌を、薬剤耐性菌といいます。
抗菌剤の使用により、抗菌剤に耐性化していない感受性の細菌が死滅する一方で、薬剤耐性菌が選択的に生き残り、増えることがあります。薬剤耐性には様々なメカニズムが存在しますが、薬剤の使用による選択圧は薬剤耐性の最大の誘導因子の一つです。不要な投薬を長期間続ける等の不適切な抗菌剤の使用は、薬剤耐性菌の問題を顕在化させます。
薬剤耐性菌は、ヒトや動物、環境を通じて広がります。抗菌薬の不適切な使用は耐性菌の選択圧を高め、問題を悪化させます。風邪などのウイルス感染症に対して安易に抗菌薬を使用することは避けるべきでるとされます。世界保健機関（WHO）は、薬剤耐性の問題を「今日行動しなければ、明日の治療はない」として取り上げ、各国で対策を進めています。日本でも、適切な薬剤使用を推進するためのアクションプランが策定されています。
＜薬剤耐性菌と食品について＞
食品安全委員会は、薬剤耐性菌と食品について次のように説明しています；
薬剤耐性菌と食品
抗菌剤は人だけでなく、動物の治療や、飼料中の栄養成分の有効利用のためにも使われています。
食品安全委員会では、家畜や水産動物への抗菌剤の使用によって選択される薬剤耐性菌について、畜水産物等の食品を介して、人に対する健康への悪影響が発生する可能性とその程度を、科学的に評価しています。
なお、薬剤耐性菌も細菌の一種です。食肉については、十分に加熱して食べることが食中毒対策としても大切です。
図 抗菌性物質の使用と薬剤耐性菌
抗菌剤は動物の治療や成長促進に使われますが、薬剤耐性菌が発生することがあります。これが食品を通じて人に感染すると、治療が難しくなる可能性があります。食品安全委員会は、このリスクを科学的に評価しています。抗菌剤の使用にはメリットもありますが、リスクも伴うため、食品の安全な摂取には注意が必要です。
＜薬剤耐性菌の食品健康影響評価＞
食品安全委員会は、薬剤耐性菌の食品健康影響評価を次のように説明しています；
薬剤耐性菌の食品健康影響評価
薬剤耐性菌の食品健康影響評価では、家畜への抗菌剤の使用状況、家畜由来の細菌での薬剤耐性菌の発生状況など（発生評価）、家畜や水産物がどのくらい薬剤耐性菌に汚染されているかなど（ばく露評価）、抗菌剤の人医療での重要性や代替薬の有無など（影響評価）について、科学的なデータを用いて検証し、総合的にリスクの程度を推定します。
食品安全委員会では、これまでに、次の動物用抗菌剤についてリスク評価を行い、農林水産省に通知しています。
農林水産省では、各抗菌剤のリスクの程度に応じて、使用対象動物、使用量、使用時期等に関する基準を設定し、責任ある慎重使用を進めています。また、全国的なモニタリングにより、耐性率の推移について調査を行っています。
表 これまでに評価した動物用抗菌剤
＜薬剤耐性（AMR）対策アクションプランに係る食品安全委員会行動計画＞
食品安全委員会を「薬剤耐性対策アクションプランに係る食品安全委員会行動計画」を公表しています。
薬剤耐性（AMR）対策アクションプランに係る食品安全委員会行動計画
食品安全委員会は、薬剤耐性菌に関するリスク評価の一層の推進や向上に向けて、2027年度までに実施する取組をまとめた行動計画を決定しました（2024年２月）。毎年度、その進捗状況をワーキンググループにおいて確認することとしています。
1. 薬剤耐性（AMR）対策アクションプランに係る食品安全委員会行動計画2023-2027
この計画は、食品安全委員会が2023年から2027年までに実施する薬剤耐性対策をまとめたものです。具体的な行動としては、食品健康影響評価の推進、リスクコミュニケーションの徹底、科学的知見の収集など。
2. 薬剤耐性行動計画2023-2027の概要
普及啓発・教育、動向調査・監視、感染予防・管理、抗微生物剤の適正使用、研究開発・創薬、国際協力の6つの分野に関する目標と具体的なアクションが記載されおり、薬剤耐性対策の全体像を示しています。
3. 2023年度進捗状況の確認について
2023年度の薬剤耐性対策の進捗状況を確認する文書です。各施策の進捗状況や成果、今後の課題について報告されています。
＜まとめ＞
食品安全委員会は、薬剤耐性菌（AMR）が食品を介して人の健康に及ぼす影響を科学的に評価しています。2023年から2027年までの行動計画に基づき、家畜や水産動物への抗菌剤使用による薬剤耐性菌のリスク評価を実施しています。11月は「薬剤耐性（AMR）対策推進月間」として、普及啓発活動を強化し、国民や関係機関への情報発信を行っています。
今後の展望として、薬剤耐性菌のリスク評価をさらに深化させ、科学的根拠に基づいた対策を強化していきます。また、国際的な協力を推進し、グローバルな視点での薬剤耐性対策を進めまていきます。普及啓発活動も継続し、国民の理解と協力を得ることで、薬剤耐性菌の脅威に対する総合的な対策の実現を目指していきます。
＜一次情報＞
【食品安全委員会】薬剤耐性菌(AMR)の食品健康影響評価に関する情報「薬剤耐性（AMR）対策推進月間」
https://www.fsc.go.jp/senmon/sonota/amr_wg/amr_info.html
専門調査会別情報_薬剤耐性菌に関するワーキンググループ
https://www.fsc.go.jp/senmon/sonota/yakuzaitaiseikin.html
【食品安全委員会】薬剤耐性（AMR）対策アクションプランに係る食品安全委員会行動計画2023-2027
https://www.fsc.go.jp/senmon/sonota/yakuzaitaiseikin.data/fsc_amr_ap2023.pdf
【食品安全委員会】薬剤耐性行動計画2023-2027の概要
https://www.fsc.go.jp/senmon/sonota/amr_wg/amr_info.data/fsc_amr_ap.pdf
【食品安全委員会】2023年度進捗状況の確認について
https://www.fsc.go.jp/senmon/sonota/amr_wg/amr_info.data/ap_fu_2016.pdf
＜関連情報＞
「食品安全委員会の20年を振り返る」 第2回 薬剤耐性（AMR）のリスク評価に挑む
https://www.fsc.go.jp/iinkai/20shunen/02_amr.html
【厚生労働省】薬剤耐性（AMR）対策についてhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000120172.html
薬剤耐性AMR対策推進月間2024 キャンペーンサイト｜ＡＭＲ臨床リファレンスセンター
https://amr.ncgm.go.jp/information/campaign2024.html