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【レポート】フードチェーンにおける食品ロスの現状と削減に向けた技術的課題

【レポート】フードチェーンにおける食品ロスの現状と削減に向けた技術的課題(本文1,953文字)
 
 
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のイノベーション戦略センターアグリ・フードテックユニットは、令和6年9月11日付にて「フードチェーンにおける食品ロスの現状と削減に向けた技術的課題」を報告しました。ここでは報告内容のエッセンスのみご案内致します。詳細は<一次情報>からご確認ください。
 
 
<概要>
1. はじめに
世界的な食料不足の問題が深刻化する中、持続可能な食料システムの実現が重要な課題となっています。国際連合食糧農業機関(FAO)は、2011年に世界の生産量の3分の1にあたる13億トンの食料が毎年廃棄されていると公表しました。2015年に採択された持続可能な開発目標(SDGs)のゴール12、ターゲット12.3および12.5では、食品ロスの削減が重要課題として位置付けられています。

■ターゲット12.3■
2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる。
■ターゲット12.5■
2030年までに廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。

本レポートでは、国内外の食品ロスの動向を整理し、日本における将来的な食品ロス削減に資する技術開発・導入の在り方を検討します。
 
2. 日本における食品ロスをめぐる動向
日本では、2020年に「食品ロス削減の推進に関する基本方針」が策定され、「食品ロス」を「本来食べられるにもかかわらず捨てられる食品」と定義しました。2030年度までに家庭系および事業系食品ロス量を2000年度比で半減させる目標が示されています。また、2021年に公表された「みどりの食料システム戦略」では、2050年までに事業系食品ロスの最小化を図ることを目標としています。
 
政府は、食品ロス削減をフードチェーン全体の課題として捉え、関係省庁が連携して施策を展開しています。具体的な取り組みとして、以下のような施策が挙げられます:
 
■農林水産省・・・ 商慣習の見直し、流通・物流の効率化、フードバンク活動団体の支援
■経済産業省・・・ IoTを活用したサプライチェーンのスマート化支援
■消費者庁・・・・・ 消費者への普及啓発活動
■環境省・・・・・・・ 食品廃棄ゼロエリア創出の推進
 
2022年度には事業系食品ロス発生量が236万トンとなり、2030年度の削減目標が達成されました。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた年度であり、今後の経済活動の回復状況によっては、2030年度目標の継続的な達成や2050年度の目標達成が困難となることが想定されます。
 
3. 日本における食品ロス削減に資する技術開発とその課題
食品ロス発生要因はフードチェーンの各段階で異なり、削減に向けた課題も多様です。技術導入によって解決が期待できる課題として、以下の4つが挙げられます:
 3-1. 需要量と供給量のマッチング
フードチェーン全体にわたるデータ活用が必要であり、個社での対応が困難です。関連する産業が連携してデータ活用基盤を整備し、「需要予測と収量予測のデータ連携」や「商品状態の見える化とダイナミックプライシング」などの技術開発・導入を進めることが重要です。
3-2. 商品状態変化への対応
商品状態のばらつきを把握し、適切な販売量を最適化するための技術が求められます。
3-3. 廃棄物の再資源化
廃棄物を再資源化するための技術開発が進められています。
3-4. 家庭における食品在庫の把握
家庭内での食品在庫を把握し、無駄を減らすための技術が必要です。
 
4. まとめと考察
食品ロス・食品廃棄物削減は、持続可能な食料供給システムの実現に向けて重要な課題です。日本では、2030年度の食品ロス削減目標の達成に向けて施策が展開され、2022年度には事業系食品ロス量の削減目標が達成されました。しかし、さらなる食品ロスの最小化に向けては、データ活用基盤や商品状態の見える化とダイナミックプライシングなどの技術導入が期待されます。技術導入にあたっては、多くのステークホルダーが関わる食品関連産業の構造に影響を及ぼす可能性があるため、関係者での議論を重ねて最適な連携の方向性を模索することが必要です。
 
5. 食品ロス・食品廃棄に係る各国の制度等
アメリカでは、食品ロス対策を主目的とした連邦法はありませんが、州法レベルでは関連する法制度・税制優遇措置が設けられています。
ほか、フランス、オーストラリア、中国の食品ロス・食品廃棄に係る各国の制度等を資料として別添しています。
 
報告の詳細は<一次情報>からご確認ください。
 
 
 
<一次情報>
【NEDO】フードチェーンにおける食品ロスの現状と削減に向けた技術的課題
https://www.nedo.go.jp/content/100981978.pdf
 
<参考情報>
【FAO】Global Food Loses and Food Waste(2011)
https://www.fao.org/4/mb060e/mb060e00.htm
【JAICAF】世界の食料ロスと食料廃棄
http://jaicaf.or.jp/fao/publication/shoseki_2011_1.pdf

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