ふぐにちなむ23の豆知識/23 Random Pieces of Trivia ふぐ
ふぐにちなむ23の豆知識/23 Random Pieces of Trivia ふぐ(本文2,373文字)
今年は秋が短く、あっという間に冬になりました。
年末年始に向かって忙しくなっていきますが、宴会シーズンでもあります。高級食材を食べるチャンスもあるかも知れません。
そこで今日は「ふぐ」にちなんだ豆知識を23個お伝えします。楽しんでください。
01 世界には約180種類のふぐが存在するといわれており、日本近海には53種類が確認されています。淡水で生活するふぐもおり、食用として許可されているのは22種類です。
02 ふぐの学名「Tetraodon(テトラオドン)」は、「4つの歯を持つ」という意味です。ふぐの歯は、エビやカニ、巻き貝なども簡単に砕くことができます。顎と歯が融合しています。
03ふぐは毒を持つことでもよく知られています。フグ毒の「テトロドトキシン」は青酸カリの約1,000倍ともいわれる毒性を持つ神経毒です。主に肝臓、卵巣、皮に含まれ、特に肝臓は危険とされます。致死量は0.5~2mgで、標準的なトラフグ一匹分の毒は約10人分の致死量に相当します。解毒剤は存在しません。
04 フグ毒のテトロドトキシンはヒトデなどを食べることで移行し、体内に蓄積されていきます。したがって、理論上、卵から完全養殖したフグは毒を持たないということになります。
05 ふぐはふぐ調理師が取り除き、有毒部位は鍵付きの専用容器に保管されます。さらにこれらは専門業者が回収し、焼却処分されます。調理器具も徹底的に洗浄・消毒され、ふぐ料理の安全性が確保されます。
06 ふぐ調理師の免許は国家資格ではなく、各都道府県知事が定めたふぐ条例に基づいて交付されます。名称は「ふぐ調理師」「ふぐ処理師」など様々です。免許は基本的に取得した都道府県内でのみ有効です。
07 無免許でのふぐの調理は違法ではありませんが、有資格者の指導の下で行う必要があります。飲食店等で提供されるふぐ料理も、必ずしも全てがふぐ調理師免許を持つ方によるものとは限りません。
08 ふぐは、主に外敵から身を守るために膨らますことができます。ふぐは「膨張嚢」という特殊な胃を持ち、大量の水や空気を取り込むことで体を膨らませます。また、ストレスを感じたときにも膨らむことがあります。
09 ふぐは縄文時代から食べられており、貝塚からふぐの骨が出土しています。安土桃山時代、文禄・慶長の役の際にふぐ毒による中毒死が続出したため、豊臣秀吉が「河豚食禁止の令」を発布し、ふぐ食は途絶えます。しかし、伊藤博文が下関でふぐを食べたことをきっかけに、ふぐ食は復活しました。
10 明治時代半ばまで禁止されていたふぐ食ですが、実際には下関などで日常に食べられていたことが分かっています。
11 落語に「ふぐ鍋」という噺があります。男が友人を招いてふぐ鍋を振る舞うが、毒が怖くて食べるのをためらいます。通りすがりの男に毒味させて安全を確認し、二人で楽しみます。後でその男が「実はまだ食べていなかった」と告げると驚きますが、無事だったため問題ありませんでした。江戸時代、ふぐ毒による中毒が多発し、ふぐ食が禁止されていた背景があります
12 厚生労働省の調査では、現在でも毎年30件程度のフグ中毒が発生し、約50名が中毒を発症し、数名程度が死亡しているとしています。死亡率が高く、日本で起こる食中毒死亡者の半数以上を占めています。
13 厚生労働省の報告「令和5年食中毒発生状況」によれば、令和5年は、9件の事故が発生し、10名の中毒患者が医療機関で治療を受けています。幸い死亡者の報告はありません。
14 ふぐを食べて中毒になった時の対処方法として「土に埋めること」というのがあります。他にも「桜の木の皮を煎じて飲む」、「茄子のヘタを食べる」、「イカの墨を飲む」などの言い伝えがありますが、どれも効果はなく根拠もありません。
15 ふぐとおこわ、または赤飯は食べ合わせが悪いといわれます。これは栄養成分や健康上の理由ではなく、高級品どうしを組み合わせて食べることは、贅沢すぎるとの戒めとされている。
16 厳しい管理のもと、現在ふぐは安全に広く親しまれています。主な料理には刺身、鍋、唐揚げ、焼き物、寿司、皮の湯引き、白子焼き、煮こごり、などがあります。
17 珍しいところでは、「ふぐの子糠漬け」という石川県の伝統的な珍味があります。卵巣を塩と糠で漬け込み、毒を無害化したものです。チーズのような芳醇な香りと味噌のような深い旨味が特徴です。
18 薄く切ったふぐの身を美しく盛り付けた刺身は、「てっさ」とも呼ばれます。「ふぐの毒に当たると死ぬ」=「鉄砲の弾に当たる」という意味から「てっぽう」と呼ばれ、それが「てっさ」に定着していったといわれています。
19 関西地方では、ふぐの鍋料理を「てっちり」と呼びます。「てっさ」と同じく、当たると死ぬ「てっぽう」と、「ちり鍋」を組み合わせて「てっちり」と呼ばれようになったとされています。最後に雑炊を作るのも人気です。
20 ハリセンボンもふぐの仲間です。毒はありませんが、ウロコが変化したトゲで体を覆い外敵から守っています。もちろん身や肝などは食べることもできます。
21 ふぐの名前は「吹く」から来ており、砂の中のエサを探す際に水を吹き出すことに由来します。漢字では「河豚」と書き、豚のような鳴き声をしていたことから名付けられました。他にも「鰒」「鯸」「魨」などの表記があり、それぞれ異なる由来を持ちます。
22 最も消費されているふぐは、「ふぐの王様」と呼ばえるとらふぐで、農林水産省調べでは、漁獲量は1,000~1,500トン/年ほどです。このうち約半分が東京都や大阪府で消費されています。とらふぐの後には、まふぐ、ごまふぐ、からすふぐ、しょうさいふぐなどが続きます。
23 とらふぐの寿命は約10年で、これは犬の平均寿命とほぼ同じです。最も長寿のふぐは15年以上生きた記録があります。また市場で取引された天然のとらふぐの中で最大のものは、2016年に記録された約10キロです。
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