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米国の食品トレーサビリティ規制と日本企業

米国の食品トレーサビリティ規制と日本企業(本文1,408文字)
 
 
株式会社野村総合研究所は、令和6年12月24日付にて「米国の食品トレーサビリティ規制と日本企業にもたらす挑戦と機会」と題した米国の食品トレーサビリティ規制に関する情報を発信しました。ここでは簡単な概要をご案内します。詳細は<一次情報>からご確認ください。
 
 
1. 2026年1月施行の米国食品安全規制とその背景
2026年1月に米国で食品トレーサビリティ記録・保持の義務化が始まる。これは、食品安全への懸念が高まる中で、食品による健康被害を迅速に特定・対応するために制定されたものである。米国食品医薬品局(FDA)が食品安全強化法(FSMA)第204条に基づいて、「高リスク食品」を取り扱う食品関連事業者に対し、トレーサビリティ対応を義務付けた。高リスク食品とは、野菜・果物・魚類・甲殻類など主に生鮮品である。過去の食中毒事件(2006年の生ほうれん草や2008年のピーナッツバターによる事件)を受け、現行規制の有効性が問われるようになった。
 
2. 米国大手小売による法規制を超えたトレーサビリティ要求
米国の大手小売企業KrogerとWalmartは、FSMA204を超えるトレーサビリティ対応をサプライヤーに要求している。Krogerは2023年12月に、FSMA204準拠のトレーサビリティ対応をすべての食品に拡大し、2025年6月30日までに準備を完了するよう求めた。Walmartも同様に、2024年9月にすべての食品を対象にFSMA204準拠のトレーサビリティ対応を求め、2025年8月1日までに準備を完了するよう求めた。

図 FSMA204の要求と米国大手小売2社の要求の相互関係
 
3. 米国大手小売が及ぼす、日本の食品輸出企業への影響
日本の農林水産物・食品の輸出は増加しており、米国市場は重要な位置を占めている。米国への輸出金額は2,062億円であり、加工食品が多く含まれている。今後、米国市場での競争力を維持・強化するためには、トレーサビリティ対応が不可欠となる。
 
4. 農業の輸出競争力向上のため、トレーサビリティ強化に取り組んだ豪州
豪州ヴィクトリア州では、農業の輸出競争力向上を目指してトレーサビリティ強化に取り組み、輸出柑橘類を対象とした実験が行われた。この実験では、米国のFSMA204のフレームワークが使用され、成功裏に終わった。日本企業もこれを参考に、トレーサビリティ対応を進めるべきである。
 
5. 日本の加工食品輸出企業に迫られる選択:競争力強化のトレーサビリティ戦略
日本の加工食品輸出企業は、米国小売企業からの「法規制を超えた要求」に応えることで、米国市場への参入や競争力維持・強化が可能となる。トレーサビリティを通じて商品の品質やブランド価値を高めることが求められる。Beyond Complianceへの対応は、米国市場だけでなく、グローバルな競争力を高める上で重要である。企業は、法規制を超えて戦略的に対応することが求められる。
 
このように、米国の食品トレーサビリティ規制は日本企業にとって挑戦であると同時に、競争力強化の機会でもある。企業は戦略的に対応することが求められる。
 
 
米国の食品トレーサビリティ規制(FSMA204)は、日本企業にとって大きな挑戦であり、同時に競争力を高める機会でもあります。米国の大手小売企業が法規制を超えた対応を求める中、日本企業はこれに応じることで、米国市場での競争力を維持・強化することが求められています。トレーサビリティ対応を通じて、商品の品質やブランド価値を高め戦略的に対応することで、グローバルな競争力を強化することできます。同時に、企業は法規制を超えて積極的に対応する姿勢が要求されることになります。
 
 
<参考資料>
What is the Food Safety Modernization Act (FSMA)?
https://www.gs1us.org/supply-chain/standards-and-regulations/food-safety-modernization-act
Top 100 Retailers 2024 List
https://nrf.com/research-insights/top-retailers/top-100-retailers/top-100-retailers-2024-list
Food Traceability Requirements (Walmart)
https://one.walmart.com/content/food-safety/en_us/food-safety-requirements/food-traceability.html
The Kroger Co Food Traceability Policy & Requirements (The Kroger Co、2023年12月1日)
https://edi.kroger.com/EDIPortal/documents/Maps/kroger-modernized-systems/Food%20Traceability%20Requirements.pdf
輸出拡大に向けた取組状況と今後の展開方向 (農林水産省、2024年8月23日)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/nousui/yunyuukoku_kisei_kaigi/dai20/siryou.pdf
2023年農林水産物・食品の輸出実績(国・地域別) (農林水産省、2024年11月)
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/e_info/attach/pdf/zisseki-239.pdf
柑橘類のトレーサビリティを簡単に (GS1 Japan)
https://www.gs1jp.org/standard/industry/2d-in-retail/casestudies/casestudiesjp10.pdf
Mildura Fruit Company delivers Traceability with VerifyMe, Inc(2023年8月16日)
https://verifyme-website-2024-alb.trust.codes/press-releases/mildura-fruit-company-delivers-traceability-with-verifyme-inc/
 
 
 
<一次情報>
水谷禎志の視点:米国の食品トレーサビリティ規制が日本企業にもたらす挑戦と機会 Beyond Complianceを求める米国小売業に日本企業はどう対応するか
https://www.nri.com/jp/media/column/mizutani/20241224.html
 






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