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FDAの「特定食品の追加トレーサビリティ記録要件に関する最終規則」への各業界の対応状況

FDAの「特定食品の追加トレーサビリティ記録要件に関する最終規則」への各業界の対応状況(本文2,919文字)
 
 
レーガン・ユドール財団(米国・ワシントン)は、2024年10月7日にFDA(米国食品医薬品局)による「特定食品の追加トレーサビリティ記録要件に関する最終規則」への各業界の対応の実情をテーマに、「FDA's Final Rule on Requirements for Additional Traceability Records for Certain Foods」と題してネット会議を開催しました。
概要をご案内致します。
 
 
<【FDA】特定食品の追加トレーサビリティ記録の要件に関する最終規則>
FDAの「特定食品の追加トレーサビリティ記録の要件に関する最終規則」は、食品安全強化法(FSMA)に基づく規制である。この規則は、特定の「高リスク」食品(食品トレーサビリティリストに記載)の製造、加工、梱包、保管に携わる企業に、サプライチェーン全体での詳細な記録保持を義務付けている。これにより、食中毒が発生した場合に迅速に発生源を特定し、迅速な回収が可能となる。重要な追跡イベント(CTE)にリンクされた主要なデータ要素(KDE)を記録し、要求があった場合には24時間以内にFDAに情報を提供することが求められる。
 
■ルールの重要なポイント:■
1. 適用対象: 食品トレーサビリティリスト(FTL)に掲載されている食品。
2. 記録保持要件: CTEに関連付けられたKDEを含むレコードを維持。
3. 情報共有: 要求があった場合、24時間以内に情報提供。
4. ゴール: 汚染食品の迅速な追跡と回収。
 
 
<会議全体のアウトライン>
この会議は、FDAの「特定食品の追加トレーサビリティ記録要件に関する最終規則」に関するもので、食品のトレーサビリティを強化するための新しい記録保持要件を説明し、実施方法を議論しました。会議では、規則の背景、具体的な要件、影響、実施スケジュール、そして今後の展望について詳細に説明されました。参加者は、食品の製造、加工、包装、または保管に関わる業界関係者であり、規則の適用範囲や具体的な実施方法についての質疑応答が行われました。


<議事概要>

1. 開会の挨拶
1-1. 会議の目的と重要性について
FDAの新しいトレーサビリティ規則の詳細を説明し、業界関係者が適応するためのガイダンスを提供すること。食品の安全性向上と食中毒の減少を目指す。
1-2. 参加者の紹介と進行方法
食品供給チェーンに関わる主要なステークホルダーが参加。アジェンダの確認と質疑応答の時間を設け、参加者が積極的に議論に参加できるようにする。
 
2. 規則の背景と目的
2-1. 食品安全性の向上と食中毒の発生を減少させるための必要性
食品のトレーサビリティを強化することで、食中毒の発生を減少させ、消費者の安全を確保することが求められています。
2-2. FSMA(食品安全近代化法)の一環としての位置づけ
この規則は、FSMAの一環として、食品供給チェーン全体の透明性と効率性を向上させるために導入されました。
 
3. 具体的な要件の説明
3-1. 重要なデータ要素(KDE)と重要な追跡イベント(CTE)の定義と記録方法
KDEは食品の製造、加工、包装、保管に関する重要な情報を指し、CTEはこれらのプロセスの追跡イベントを意味します。これらを詳細に記録することが求められます。
3-2. トレーサビリティリスト(FTL)に含まれる食品の特定と要件の適用範囲
FTLには、リスクの高い食品(生鮮果物、野菜、乳製品、魚介類など)が含まれます。これらの食品およびそれらを含む製品には、追加の記録保存要件が適用され、製造から消費までの全過程で詳細なトレーサビリティが求められます。
 
4. 影響と利点の分析
4-1. 規則が食品業界に与える経済的影響の評価
新しいトレーサビリティ要件の導入により、食品業界は初期投資や運用コストの増加が見込まれます。しかし、効率的なトレーサビリティシステムの導入により、長期的にはリコールコストの削減やブランド信頼性の向上が期待されます。
4-2. 消費者にとっての健康上の利点と市場への影響
消費者は、より安全で信頼性の高い食品を手に入れることができ、食中毒のリスクが減少します。市場全体では、食品の安全性が向上し、消費者の信頼が高まることで、需要の増加が期待されます。
 
5. 実施スケジュール
5-1. 2026年1月20日までの遵守期限
全ての対象者は、2026年1月20日までに新しいトレーサビリティ要件に準拠する必要があります。この期限までに、必要なシステムやプロセスの導入を完了することが求められます。
5-2. 準備期間中のサポートとガイダンスの提供
FDAは、業界関係者が新しい規則に適応できるよう、ガイダンス文書やトレーニングプログラムを提供します。また、技術的なサポートや質問への対応を通じて、円滑な移行を支援します。
 
6. 質疑応答
6-1. 参加者からの質問に対する詳細な回答
会議では、新しいトレーサビリティ要件の具体的な適用方法や記録保持の詳細についてなど、多くの質問がありました。これに対してFDAの担当者は、重要なデータ要素(KDE)や重要な追跡イベント(CTE)の記録方法など具体的な事例やガイドラインを用いて回答しました。
6-2. 実施に関する具体的な懸念や課題の議論
参加者からは、規則の実施に伴うコスト負担や技術的な課題についての懸念が多く挙げられました。例えば、小規模事業者が新しい要件に適応するためのコストや、既存のシステムとの統合に関する技術的な問題が指摘されました。また、サプライチェーン全体での協力体制の構築や、トレーサビリティシステムの標準化についても議論が行われました。これに対し、FDAは支援策や今後のサポート体制について説明し、技術的なサポートやトレーニングプログラムの提供、ガイダンス文書の配布などを挙げ、業界全体での協力の重要性を強調しました。
 
7. 今後の展望
7-1. 規則の実施後の監視と評価の計画
FDAは、新しいトレーサビリティ規則の実施後、定期的な監視と評価を行います。これによって、規則の効果を確認し、また、食品供給チェーン全体でのトレーサビリティデータの収集と分析を通じて、食品の安全性向上を目指します。
7-2. 業界との継続的な協力と改善の取り組み
FDAは、食品業界との継続的な協力を重視しています。業界関係者との定期的な会議やワークショップを通じて、規則の実施に関するフィードバックを収集し、実践的な改善策を検討します。また、技術の進歩に伴い、トレーサビリティシステムの効率化と精度向上を図るための新しいツールや方法を導入する予定です。
 
8. 閉会
会議の最後に、FDAの担当者は、議論された主要なポイントを再確認しました。新しいトレーサビリティ規則の重要性と具体的な要件、実施スケジュール、そして業界への影響についての理解が深まったことを強調しました。
今後のステップとして、業界関係者が規則に準拠するための準備を進めること、FDAが提供するガイダンスやサポートを活用することが推奨されました。
 
 
<想定される日本への影響>
FDAの「特定食品の追加トレーサビリティ記録の要件に関する最終規則」は、日本の食品輸出業者に大きな影響を与える可能性があります。特に、米国市場向けに高リスク食品(例:生鮮果物、野菜、乳製品、魚介類など)を輸出する企業は、新しいトレーサビリティ要件に準拠する必要があります。
輸出手続きが複雑化し、初期投資や運用コストが増加する可能性がありますが、食品の安全性と信頼性が向上し、消費者の信頼を得ることができます。また、国際市場での競争力が高まることも期待されます。
 
 
 
<一次情報>
【JETRO】米FDAの食品トレーサビリティー規則への各業界の対応状況テーマにウェビナー開催
https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/10/c99a43f00b058643.html
FDA's Final Rule on Requirements for Additional Traceability Records for Certain Foods
(FDAの「特定食品の追加トレーサビリティ記録要件に関する最終規則」に関して)
https://www.youtube.com/watch?v=ae9RREtATR4
 
 

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