背負わず、投げない
はじめに
初心者クラスで「何か質問はありますか?」と尋ねると、毎回のように「テイクダウンを教えて下さい」という答えが返ってくる。
ブラジリアン柔術(BJJ)の場合、投げによる一本がないので、背負投や内股で相手をどれだけ綺麗に投げても2点しか入らない。
確かに、背負投や内股はカッコいい。
しかしながら、BJJでは相手を投げる≒テイクダウンした後も、試合やスパーリングは続き、展開のほとんどがグラウンドで行われるので、テイクダウン・テクニックの習得にあまり多くの時間を割くのは効率的な練習のやり方ではない。
「セルフディフェンス」も念頭に置いて考えるならば、私のスタンド戦略は「クリンチ」一択になるが、(特にギの場合)こちらがクリンチを狙っている事を知っている相手に対して、距離を詰めるのはなかなか難しい。
柔道やレスリング経験者であれば、それまで培ってきた「テイクダウン」技術を活かせばいいが、組み技未経験者が「テイクダウン」テクニックの習得に取り組む場合、(ジョン・ダナハーの受け売りになるが)その選択に当たっては次の2点に留意すべきだろう。
まず、①そのテクニックの理合がシンプルで、短期間で習得できるモノである事。
そして、②そのテクニックを用いた「テイクダウン」に失敗しても、リスクが低い事。
この観点から背負投について考えてみると、①これを覚えてスパーリングで使えるようになる迄に、少なくとも5年は掛かるだろうし、②失敗した時に、バックを取られる危険性が高い(=ハイリスク)ので、組み技未経験者が最初に覚えるべきテクニックとは言い難い。
①②の条件をクリアした「テイクダウン」として、ウチの会員さん達にはまず「カラードラッグ」と「アンクルピック」を教えるようにしている(注1)。
注1)「カラードラッグ」は、失敗しても安全に(=バックを取られる事無く)「引き込み」が出来る。
また、「アンクルピック」は、失敗しても状況は5分5分になるので、自分から立ち上がってしまえば、振り出しに戻るだけで済む。
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