海と鮮魚、ときどきコーヒー。
わたしは海がだいすきだ。
心地よく聞こえてくる、さざなみの音。潮風。そして、広くどこまでも続き、波が立っては消えていく海をぼーっと眺めていると、全てを忘れてなんだか別の時間を生きている気がしてくる。目の前の大きな力にやさしく包み込まれているようで、とても癒されるのだ。
海へいくとわたしは必ず、海のものをいただく。
いつからだったろうか。新鮮なおさかなをたべたときに、口いっぱいに海が広がる、あの味わい深さへの感動がずっと自分の中に残っていて、その魅力の虜となり、海へ行くときには必ず、鮮魚をいただけるお店を探すようになった。海を眺め、海の恵みに感謝をする。
さらに、あったら嬉しいのがコーヒーだ。
海を眺めながら、コーヒーを嗜む。体に、心に、じんわりと沁みわたっていき、コーヒーの苦味がわたしの感覚をさらに研ぎ澄ませる。さざなみの音と共にゆっくりと流れていくその時間が、最高に贅沢でしあわせなひとときなのだ。
海と鮮魚、ときどきコーヒー。
これらは、わたしの「うみたび」には必要な存在だ。
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わたしが今まで行った「うみたび」の中で、
一番お気に入りの場所が、山口である。
新山口駅から友人と、レンタカーへ乗り北上する。山道を車で抜けていき、視界が開けた瞬間に目の前いっぱいに広がる海。そして、海の向こうに見える”角島”へと架かる白く長い、”角島大橋”を渡っていく。
そう、角島こそがわたしの「うみたび」で忘れられない場所の一つだ。
角島大橋を渡っていくのは、まるで海の上を飛んでいるような感覚でもあり、とても気持ちが良かった。
角島へ上陸し、ちょうどお腹も空いてきた頃だったので、念願の鮮魚をいただく。
角島の西部にあり、海を眺めながら海鮮丼をいただくことができる、”グランビスタ角島”さんに伺った。わたしが頼んだのは、極上丼(まぐろ、うに、いくら)。友人はうにいくら丼。「おいしそう、でも食べるのもったいない…」と思ってしまうほど、宝石のようにつやつやと輝いていた。
海を眺めながら、どんぶりを頬張る。
いくらはぷちぷちと弾力があり、マグロはとろけて、ウニはバターのように甘く溶けていく。この三重奏に見事に身も心もとろとろになってしまった。お味噌汁もお漬物もおいしかった。
おなかが満たされたあと、”しおかぜコバルトブルービーチ”という、心踊るような魅力的な名前のビーチへと向かった。
白い砂浜にコバルトブルーの海。
ちょうど日が西に傾いている頃で、波が引いてわずかに砂浜に残った海水に、日が反射をしていて、とても眩しく輝いていた。
山口の海は、荒々しくもとても力強く美しかった。
そして、サンセットを見に、急いで夢崎明神海岸へと向かった。
サンセットのタイムリミットに追われながらも、途中で手に入れたコーヒーを片手にようやく腰を下ろして海を眺める。だんだんと空がオレンジ色に染まり、太陽が沈んでいく様を見届けることができた。少しおしゃべりに夢中になり、見逃しそうになってしまってはいたものの、こういう時間だからこそできる話もあるもので、これも一興。楽しく優しいひとときだった。
そして、もう一つ。「うみたび」で感動した場所が、唐戸市場だ。
実は、朝から唐戸市場で鮮魚をいただきたいがために、市場から歩いて5分ほどのホテルに宿泊していたのだ。
市場の中へ入ると、お店が軒並み構えており、自分が食べたいと思ったお寿司やあら汁などをそれぞれで買うことができる。また、お寿司はパックに詰め合わせていくので、自分好みの自分専用のお寿司セットを作ることができるのだ。わたしはアジがすきなので、2つ、それぞれ違うお店で買ってみた。こういう楽しみ方ができるのも、ここならではの醍醐味だ。
外に出て、海とそれを挟んで対岸にある、福岡(門司港)を眺めながらいただいた。ふぐ刺しも食べれるなんて思ってもみなかったので、お寿司にふぐに朝から贅沢三昧だった。そして何より鮮度が抜群!ずっと口に入れていたくなるほどおいしかった。ちなみに次の日の朝もここ、唐戸市場でお寿司をいただいた。
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わたしは旅をすることがすきだけれど、正直、こだわりはあっただろうか…と考えてしまったが、振り返れば、海がだいすきで、海に行くと必ずおさかなを食べて、ときどきコーヒーを片手に海辺をさんぽしていたな、と気づかされた。こうしている時間は、わたしの心を潤いで満たしてくれる、しあわせでかけがえのないものなのだ。
そしてまたわたしは、「海と鮮魚、ときどきコーヒー」を求めて旅をする。