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岩屋観音堂

  ― 岩屋観音の来歴 6 ―



咲き乱れる花々
ゆるやかに過ごす鳥
それらを包みこむ四隅の波濤

観音堂の天井画は
天保15年(1844)に制作された
歳月を経るうちに
色彩の鮮やかさは失われたが
祈願しつつ
観音のお告げを待つ
夢のお堂に
ぬくもりを醸しつづけている



古びた列車に乗っていた
帰宅するために

うっかりまどろんでしまった
窓の外には西日のまばゆい田園風景
ゆっくり近づいては遠ざかる
車内に聞き覚えのない駅名が流れる

いったいどこなのだ
どこに向かっているのだ
安易に停車駅で下車できない
そのまま置き去りにされてしまうのでは・・・・・・
このまま乗車しているのも不安だ
どこで乗り間違えたのだろう

乗客は周りにぼんやりと浮かんでいる
ここはどこですか
訊こうとしても声が出ない
人々は私の姿など見えないかのようにふるまう

陽が沈み
外はしだいに暗くなる
車内も翳ってきた

幾度も思い出そうとした
ここはどこか
幾度も調べようとした
この列車はどこ行きか
額を窓にくっつけて
通過する駅の表示を
読み取ろうとしても
暗くてもうわからない

乗客たちはもぞもぞと
大きな布を広げて
寝入ろうとしている

どこへ行くのか
私がまとっていた
すべての現実を置き去りにして

私はうとうとし始めた
もうなりゆきにまかせるしかない
どうにでもなれ

ゆらゆら揺られている
ゆらゆら ゆらゆら
あたたかい
からだが
溶けていくみたいだ
羊水の中を
漂っている
いや 海か

さざ波が
ゆらゆら ゆらゆら
心地いい
暗い 暗い
けれど
どこからか放たれる
あおい光が
ほのかに滲んでいる









△▼ ▲▽ △▼ ▲▽ △▼ ▲▽



みなさん、お元気でしょうか。
朝夕、涼しいを超えて、寒い日も。
服装選びに迷うときもあります。
お体に気をつけて、お過ごしください。

今週は、岩屋観音シリーズの6回目です。
岩屋山の頂上に聖観音像が立ったのも
架橋の工事に行き詰まって、
観音堂に籠り、夢のお告げを得たことが
きっかけでした。
このことに関しては、このシリーズで紹介しました。
観音堂は、世俗から離れた特別な空間です。

岩屋観音を含めて、
愛知県と静岡県の境にある、
西から東へと連なる丘陵(弓張山地または湖西連峰)
とその景観を
高架産業道路建設から守りたいと
地味に活動しています。
関心のある方は、
「浜松湖西豊橋道路を考える会」のホームページも覗いてください。


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noteへの投稿から生まれたフォトポエム集です。

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