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偽善者の僕
みなさんこんばんは、roofです。
ゆらゆらバスに揺られ、
コクコクと頭も揺れる。
ある休日の昼間。
用事があった為
日中バスで移動していた。
朝とは違い、
人もそれなりに空いていたし
僕は決まってバスに乗る時は
一番後ろの角の席に座るように
している。
陽の光が当たって
そこが一番気持ちいいし、
後ろからだと全体を見渡せるから
人間観察もできる。
後ろの席の特権だ。
ただ丁度良い室内温度と
日光のせいで
おまけに少しの揺れで
めちゃくちゃに眠い。
とそんな時に停車駅で
老夫婦が乗車してきた。
買い物でもしていたのだろうか、
両手に大きな紙袋を持って
少し重そうに歩いてきた。
丁度前の席が2つ空いていたから
そこに座ろうとしていたが、
そこを割り切って若い女性の方が
座った。
ええ、、
僕は初めて見るのに
どこか懐かしみを感じる老夫婦の
雰囲気を見て
自分の祖父母と照らし合わせる。
こんなに重たそうにしている
二人ともを見てると座っている事が
情けなくなり立ち上がり
席を譲ろうとして前の方に移動した。
良い人ぶった訳ではない。
ただ二人に座って休憩を
してほしかっただけだ。
そういえば僕の祖父も
足が弱っているなぁとか
考えたり、元気にしてるかなって
その時祖父母の顔を思い出す。
人は当然老いていく。
そして皆共通に結果は死が待ち受ける。
分かってる
そんなことは分かっているけど
その死を思うと
自分の事はどうでもいいけど
他人の死を想像すると
胸が張り裂けそうになる。
老夫婦は僕が立ち去った
席に二人で座っていた。
やっと座れたという安堵のもと
口元は緩んでいた。
僕は何故かまったく関係のない
人にでも気持ちが乗り移る。
僕は偽善者なのかもしれない。
だってその場だけの感情であって
暫くしたら忘れるのだから。
老夫婦の微笑ましい
空間が僕にだけ
特別な空間に思えた。
長年寄り添ったパートナー、
でもお互い弱っていっている様を
お互いがそれを感じ
残りの人生を二人で生きて行く。
当たり前のようで当たり前じゃない。
当たり前だけど特別。
でもそれに気づくのは
失ってからでは遅い事は分かっている
筈なのに当たり前は当たり前になる。
なんとも悲しい事実だ。
一人バスの車内で立ちながら
気づくと目的地の駅に着いていた。
最後に老夫婦に目を配ると
二人はコックリコックリ頭を揺らしていた。
二人の人生において
僕は存在していないことになっているが、
はっきり僕の中では二人の人生を
勝手に微笑ましく感じていた。
そしてまた当たり前を
蔑ろにしてはならないなと
強く心に誓ったほんの数分。
ありがとう。
ではまた次回に。
最後までご一読ありがとうございました。
roof