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人は人生で何を得るのか?

今回は、精神科医である清水研先生の著書
「もしも一年後、この世にいないとしたら。」
という本の内容を紹介します。

皆さんは、自分が本当にしたいことを先延ばしにしていませんか?
自分の人生がいつ終わるかは誰にも分からないのに、これまで普通に
生きてこられたから、明日もきっと生きているだろうと
考えていないでしょうか?

現代人が長生きできるようになったことは喜ばしいことなのですが、
そのせいで死を忘れてしまった人が多くいるような気がします。
誰にでも訪れる死を、多くの人は実感していないのではないかと
思いますので、そのような人は自分がやりたいことがあっても
先延ばしにしてしまいがちです。

そんな人に読んでいただきたいのが今回紹介する本です。
著者の清水先生は、精神腫瘍学というガンと心に関する学問を
専門とする先生であり、ガンに罹患された方とそのご家族のケアを
担当しています。
そんな先生が、これまで3,500人以上の患者さんとその家族の話を聞き、
教えてもらったことや学んだことをまとめました。

今回の内容を通して、今という瞬間の大切さを再認識していきましょう。





負の感情にも意味がある

日本人がガンと診断される可能性がどのくらいかご存じでしょうか?

最新の統計では、生涯においてガンになる確率は男性で62.1%、
女性では48.9%と報告されています。
これだけ多くの人がガンになるということは、もしも自分が
ガンにならなかったとしても、家族がガンになってしまうかもしれないし、
大切な友人がガンになってしまうかもしれません。
そう考えると、ガンは全ての人にとって他人ごとではない病気と
言えるのではないでしょうか。



ガンという病気は患者に死を意識させてしまい、その方が罹患された
ガンの特徴にもよりますが、様々なストレスをもたらします。
治療による身体的苦痛はもちろんですが、ガンの部位によっては
大切な機能を失ってしまったり、社会的な役割が変化して
しまうこともあります。

たとえば、料理人だったのにガンの化学療法によって味覚障害になる。
ボディービルダーの方がガンでやせ細る。
アンチエイジングに必死で取り組んでいた人が、抗がん剤の副作用で
髪の毛が抜け、一気に老け込んでしまう。

ひとくちにガン体験と言っても本当に様々で、100人に話を聞くと
100通りの苦しみがあり、このような苦しみに向き合わなければ
ならなくなったことで、一部の方は精神的に追い詰められてしまいます。

過去の研究では、がん告知後にうつ状態になった人の割合は
5人に1人という報告があり、がん告知後に自殺してしまう人もいます。



そんなガンに罹患し、日々厳しい状況に向き合っている人の言葉には
重みがあります。
死を意識して、厳しい治療を体験する中で、その人が深く考えたことや
感じたことには、説得力があるのです。

私たちが健康である時には、自分が病気になるとは想像せずに
暮らしていますが、そこで唐突に訪れるがん告知・・・・、
がん告知直後は思考停止になったり、病気になったことから
目を背ける方向に心が動く人が多いのですが、いずれはガンという病気に
正面から向き合わなければなりません。

「ガンという事実は変えることが出来ないんだ」と思うと、
諦めや絶望のような感覚が生まれますが、その裏側では
現実に向き合っていくというプロセスが始まります。
大きな恐れや悲しみから泣きわめいてしまう人もいますが、
そのような姿の奥にこそ、大きな喪失と必死に向き合おうとしている
力強さがあるのです。

このような、新たな現実と向き合う力のことを
「レジリエンス」と言います。
レジリエンスとは元に戻ることを表していて、元々は物理学の
用語なのですが、心理学の世界でも使われるようになり、
困難をしなやかに乗り越える心の在り方を示すようになりました。



柳は風が吹くとたわんで形を変えますが、風がやむと元に戻ります。
これが人生における大きなヒントで、多くの人は衝撃的な出来事に
遭遇しても、時間と共に立ち上がってくる
しなやかな心の強さを持っています。

このことを知っているかどうかで、これから先の人生で
辛いことに直面した時の対応が変わってきます。





困難を乗り越えて新たな価値観が生まれる

多くの患者さんの病気に向き合う過程を知って驚いたのは、
困難を経験することで病気になる前とは異なる新しい世界観を
見つけていたことです。
心理学ではこの領域のことを「心的外傷後成長」と言います。

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