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奇跡の手感度は偶然から生まれた。

当工房のオリジナルロッドブランドである 斬-ZAN!!- 。

その名の由来となったのが、「圧倒的な手感度」と「魚の掛けやすさ」を両立させた『カワハギ斬-ZAN!!-TypeHH』です。

しかしこのロッドが生まれた経緯は正直言って偶然でした。

と言うのも、通常の開発のように、素材やテーパーデザインをあれこれ試して試作を重ねたというよりも、直感的に採用した材料で組んだロッドがテスト釣行でいきなりとんでもない手感度を発揮してしまったからです。

手感度釣り楽しすぎ!!

初めてカワハギの手感度を理解できたのは、確かカワハギ釣りを始めて2年目辺りだったと思います。

11月の寒い日、竹岡沖でした。

錘が着底してゼロテンで待っているとすぐに餌がツルツルにされ、ほとんどシグナルを感じ取ることが出来ません。

そこで、何となく仕掛けを1メートル程持ち上げゆっくりと下げていった時でした。

カサカサッ カスッ と仕掛けが何かに接触したような感触が手元に伝わりました。

?????

となりつつ小さく仕掛けを持ち上げるとコココッ!!とワッペンGET。

次の一投でもまた、カサカサ → コココッ とワッペン追加。

このまま10枚のワッペンを一気に釣りあげました。

その後は (今にして思えば) 魚の速度が上がったようで手感度のシグナルが小さくなり、当時の私にはついていけない難易度となり、最終釣果は16枚でしたが、とにかくカサカサをカワハギのアタリだと理解できた喜びで有頂天になったのを覚えています。

手感度ロッドを手にして有頂天になった後、大いに悩む

その後、人からのススメでカーボン穂先のロッドを手にするようになると手感度は更に鮮明になり、とにかくこの微細なシグナルを追いかけて釣りを組み立てるようになりました。

この釣り方の良いところは、とにかく楽しいこと!!

全く穂先に現れない細かい振動を捉えて掛けに行くことで勝負が早く、連発しだすと止まらない!!

この釣り方こそ万能なのでは?と勘違いしてしまうほどの楽しさに、ここから数年間はひたすらに手感度命(笑)


しかしこの釣りを続けていると、うまく攻略できない壁にぶち当たります。

手感度がどうやっても出ない状況、時期が存在するようなのです。

何とか手感度釣りをその時期に当て嵌められないか、延々と数年間悩み釣り方を試行錯誤。

しかし解決には至りません。

そこで悩んだ末に私が考えたのは2つの選択肢。

  1. 全く違う釣り方を学んで取り入れていくこと(目感度と誘い掛けをきちんと自分の釣りに組み込むこと)

  2. 更に手感度を追及したロッドを探すこと

しかし、2については当時の市販ロッドで手感度を謳っているものは極少なく、しかも感度についても似たり寄ったりで満足いくものはありませんでした。

「売ってないなら自分で作るしかない」

こうして究極の手感度ロッドの開発が始まりました。

仕掛けを完全に止めた状態で手感度を出したい

その当時使用していたロッドで手感度のシグナルを出す為には一定の条件が必要なことがだんだんとわかってきました。

まず、微細な振動故にラインをしっかり張っておく必要があること。

そして、仕掛けを完全に止めてしまうよりも、若干の動きを与えたほうがシグナルが生まれやすいこと。


ラインを張っておくことは手感度シグナルの性質上変更できない条件ですが、仕掛けを止めたままでシグナルを出すことはロッド自体の感度の向上で可能になるのではないか、と言う仮説が成り立ちます。

前述の通り、市販品にはそれを満たすものはありませんでしたから自分で作るしかない。

もともとロッドの自作は趣味の一つでしたが、フルビルドとなるとなかなか大掛かりになりますし、何より目的にぴったり合ったブランクスを選ぶのが大変。

なので、ここはまず穂先を自作してやろう、と言う事に。

ショップやネット上で材料探しをして購入し、自作を繰り返します。

しかし、穂先の変更では目立った成果が得られません。(お陰で穂先の製作についてはかなりの知見を得ることが出来ましたが(笑))


結局、穂先の変更だけでは解決策を見出せず、悶々としたまま数年が経過していくこととなります。

カワハギ斬-ZAN!!- TypeHHの誕生

ところで、カワハギの手感度と言う概念は、今や説明するまでも無くフリークの皆さんはご存じの通りです。

しかしこの手感度は「振動の伝達そのもの」に大きく依存するので、どうしてもその感じ取り方がロッドのコンセプトや性能によって変わってきてしまいます。

PEラインからの振動が最初に入力されるのが穂先で、それがブランクスを介して釣り人の手に伝わる。

たったこれだけのプロセス、しかもたかだか180cm程度の距離ですが、材質による手感度の伝達には雲泥の差が生まれます。


まずは微細振動の入力を減衰させない穂先素材。

これは素材の特性からカーボン一択でしょう。

ここで、伝達力だけを優先するとソリッド(無垢)ではなくチューブラー(中空)のカーボンと言う選択になりますが、中空の材料では先端を細く削り込むことが難しく、カワハギを掛けに行く際に求められる先端数センチの曲がり、つまり ”タメ” を作るのが困難です。

もしも穂先のタメを無視して曲がらない穂先を採用することで手感度が向上しても、魚を掛け難いのでは本末転倒。

そこで、穂先素材はカーボンソリッドとして、きちんとタメを残すことが決定事項となりました

つまり、穂先については大きな変更は無しと言う事です。


穂先を弄り続けた数年の間考えていたことは、「結局はブランクスから見直すことが必要なんだろうなぁ」でした。

入力されたシグナルを手元に大きく伝えるには、途中で減衰させないことが大切ですから当然と言えば当然です。

数十センチの穂先と1メーター以上あるブランクス。

全体に占める割合だけを見ても改善すべきと言う事が分かります。

あれこれ考えていても始まらない。

まずはインスピレーションでブランクスを選んでとにかく作ってみよう。

と言う事で最初に手に入れた硬質のブランクスを加工して製作。

9月のカワハギ釣りでテストすることになりました。

残暑の残る時期のカワハギは産卵からは回復していますが、まだまだ固まってはおらず、竹岡沖では散在するつぶ根に付いていてなかなか動きません。

従って、キャストして根を探しつつの釣りになります。

根から離れて追って来ないカワハギを釣るには、根の中に仕掛けを止めて置く必要がありますが、前述の通り従来の手感度ロッドはこれが苦手。

しかし、テストロッドで探り、根を見つけて止めておくとカサカサと明確なシグナルが発生しました。

え???

と驚きつつ聞き上げると間違いなくカワハギ。

これで連発します。

試しにそれまで使っていたロッドに持ち替えて同じ場所に投入。

するとシグナルは拾えません。

そればかりか、それまで明確に感じ取れていた根の感触が薄れ、ともすると根が見つけられない状態に・・・・

うそ????

と思い、テストロッドに持ち替えると明らかに根が有るのが分かり、止めるとカサカサ。


面白い程の連発劇となり、40枚を超える釣果に一番びっくりしたのは私でした(笑)


何かの間違いかもしれない、と次の週もテスト。

しかし結果は同じ。

ボトムの輪郭がはっきりと分かり、根の中で完全に止めた状態でのカサカサが発生。

60枚超えの釣果となり、完全に開発の成功を確信したのでした。


こうして、偶然にもいきなり最適なブランクスを探り当て完成した奇跡のロッドは、その手感度の斬れ味の鋭さから『斬-ZAN!!-』と名付けられたのでした。

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