【釣り考察】船釣りが上手いひとには3つの共通点があった。【G.F.A理論の構築】
O.F.F 大西釣具工房では、ロッドの企画、製作、カスタム、修理をメインにお仕事をさせていただいていますが、船釣りの普及と技術的なサポートも大切な課題と考えています。
そして、その中でも特に重要性を感じていることのひとつが "基礎" 。
結論を言ってしまえば、基礎を押さえているかどうかが実力の8割を決めると言っても過言ではないほどの重要度だと思います。
案外見過ごされがちなことですが最も大切で、初級者は上達の速度がアップし、中級者は上級者の仲間入りができるようになる最短コース。
これをやらずして細かいテクニック論など、全く意味を成さないと言っても過言ではありません。
何故か釣りには体系的な基礎を学ぶ方法が無い
そんな超重要な "基礎" ですが、どういう訳か釣りにおいては、それを学ぶ術がほとんどありません。
他のスポーツ、例えばゴルフやテニスであれば、まずはクラブやラケットの握り方と振り方、正しいフォームなどをある程度順序だてて学ぶと思います。
なのに、釣りでは何故かそういったものがほとんど見当たらない。
唯一、サーフの投げ釣りとフライフィッシングで、キャスティングの基礎理論と練習方法があるだけで、それ以外では参考となる書籍もネット上の記事もほぼ無く、語られることも無い。
その先の細かい釣法なんかについての記述はたくさんあるのに、です。
少年野球の子供にいきなりカーブやフォークの投げ方を教えても身に付かないように、基礎力が無いままいきなり高度な釣法を学んだところで、その時には分かったような気がするだけで、実際に使いこなすのは至難の技でしょう。
にもかかわらず基礎を教える人が居らず学ぶ機会も無い状況となれば、あとは個々のアングラーのセンスと経験値の積み上げのみが頼りです。
なので、始めから基礎部分が出来てしまった人、つまりとてもセンスの良い人は放っておいても上手くなっていきます。
しかし、大半の人は釣行を重ねたことにより部分的にクリアできたことと、部分的に変な癖がついてしまった状態が混在しています。
このせいで、
日によってはすごく釣れたのに、日によっては全然釣れない
慣れた釣りものなら大丈夫だけど釣りものが変わった途端さっぱり
といった具合に、とても安定感の無い実力になってしまうのです。
しかし何故釣りにはきちんとした基礎固めの理論が無いのか?
これ、すごく不思議ではありますが、まぁそこは置いておいて、
「釣りにもきっちりとした基礎に関するメソッドが有ったら便利だし、短期間でもっと上達するんじゃないかな?」
と、先ずは実用的な方法論を組み立ててみようと考えたのでした。
釣りが上手な人にはある共通点があった
乗り合い船では色々な人と並んで釣りをするのでたくさんの人の釣りを見ることが出来ます。
すると、上手な人が必ずと言っていいほど行っていて、そうでない人は決まって行っていない、ある動作の存在に気が付きました。
それは次のようなことです。
船が動いて竿先から出ている糸の方向が変わる度に竿や身体の向きを変えている
リールのクラッチをカチカチする回数が凄く多い
これは何なのかというと、ロッドと糸の角度を一定に保とうとする動作なのです。
そして、これを無意識にでもやっている人は総じて釣果が良く、名人と言われるようなアングラーに至ってはほぼ100%がこれを実践していたのです。
「これこそが基礎の根幹 "いろはのい" になる部分だ」
と考えた私は、これまで自分がやって来たことを交えつつ、複数の方々にこの点を改善するように教えてみました。
すると、初心者は飛躍的に上達が早くなり、伸び悩んでいた経験者の釣果も確実に向上することがわかったのです。
もちろんこれは基礎ですからこの先に個別の釣法等が乗っかって来ます。
なので、土台である基礎がきっちり固まっているので一度身に付ければ崩れることはそうそうありません。
と言うことで、次は具体的なことをひとつ。
最も重要な竿と糸の角度の関係について掘り下げてみましょう。
竿と糸の角度 90° ± 15°
ロッドは、ミチイトとの角度が小さくなるほど弾力が発揮され、角度が大きく開くと弾力が発揮されない。
そういう関係になっています。
分かりやすい例を挙げると根掛かりをはずす時。
どうしても外れない根掛かりをしてしまった時、仕掛けを外すか切る為にロッドと糸を真っ直ぐにして引っ張る、若しくはミチイトをつかんで引っ張りますよね。
これをするのは、ロッドのしなりがクッションの役割をして仕掛けに100%の引っ張る力を伝えられない = なかなか糸が切れない、からですね。
要するにロッドのしなりが邪魔になるわけです。
ロッドとミチイトの角度が0°、つまり一直線の関係だとしたら、クッションが全く無い状態だというのがお分かりいただけるでしょう。
今度は、ミチイトの角度を180°にして考えるとどうでしょう。
右手にロッド、左手にミチイトを持って、ミチイトをロッドと並行に引っ張ったら、穂先は『し』の字を描いて曲がりますが、一点に負荷が集中する為に素材の強度の限界を超えたところで折れてしまいます。
穂先を折る原因としてとても多い、魚の取り込み時に竿を立てて魚をぶら下げてしまう行為が正にこの状態です。
そんなわけで、ロッドとミチイトには適切な角度があります。
それが、90° ± 15° というわけです。
因みに、きちんと基礎を身につけているとこの前後30°の角度をコントロールできるようになります。
例えばこんな感じ。
強めにしゃくりを入れたい場合 = やや鈍角にしてロッドの弾力を少し抑えてやると動きが出しやすい
なるべく小さな幅で小突きを演出したい = やや鋭角にしてロッドの弾力を大きくしてやることで錘の跳ね上がりを抑えられる
いかがでしょうか?
たったこれだけでも、解ってやっているのとそうでないのでは大きなアドバンテージがあると思いませんか?
角度調整の実践のコツ
ここまでは理屈でした。
でも理屈って、頭ではわかるんですが、釣り場でやるとなるとなかなか難しい。
と言うのも、自分で自分の構えた竿と糸の角度を見るのには少しコツが必要だからです。
もちろん私が船上でご一緒できる場合には、スマホで動画を撮るなどして個別に矯正をレクチャーさせていただいたりします。
しかし人間は一度癖がついてしまうと、無意識にその位地へフォームが戻ってしまうもの。
なので、普段から自分で確認するコツを覚えておいたほうが良いんです。
しかも、そのコツはとてもシンプル。
それはズバリ、
「竿と糸を横から見る」
これだけです。
竿先を視線の正面に持ってくると、竿にラインが隠れて見えにくくなってしまいます。
そして、生真面目な人ほど真っ正面に竿先を置いて凝視しがちです。
しかし、例えば右手でロッドを持つ場合なら、右腕の延長に竿先を持っていき、真っ正面に寄せないようにする。
そうすれば自然に左側から竿先を見ることになり、糸との角度が分かりやすくなります。
見えなければわからないし、見えればわかる。
とっても単純です(笑)
また、竿先と糸を見る為には日差しや水面の反射が邪魔になることが多いので、偏向グラスがとても有効になります。
偏向グラスは眼の保護だけでなく、釣果にも影響するんですね。
このコツを覚えて角度を意識出来るようになると、適切な位地を保ち続ける為に体とロッドの向きを変え、クラッチ操作で糸を出し入れするようになっていきます。
するとフォームが安定し、ひいては釣法のマスターが早まり、安定した釣果へ繋がっていく、といった好循環が生まれやすくなるのです。
まとめ : 基礎固めの『G.F.A.理論』
ということで、今回は基礎中の基礎のひとつである「竿先と糸の角度」について書いてみましたが、本来の順序は
ロッドの持ち方(GRIP)
構え方(FORM)
と来て今回の
角度(ANGLE)
の順番です。
この三つを組み合わせることで基礎固めが完了します。
名付けてG.F.A理論です。
グリップとフォームについては、長くなってしまうのでまた別の機会があれば書いてみようかな。
もちろん、実釣でのレクチャーは喜んでやりますのでご一緒できれば声を掛けてください。