【フィナンシェ話#6】小学生に伝えたい! お金のおはなし(前編)
様々なバックグラウンドの方に伺う、子どもとの買い物、お小遣い、お年玉、寄付や投資のこと…。そこから自分の子どもにつながるフィナンシェ(金融家)なヒントを探ります。
今回お話を伺ったのは、「キャサリンとナンシーのお金のおはなし」の活動をされている、キャサリンさんとナンシーさんです。お二人は証券会社出身そしてFP(ファイナンシャルプランナー)の資格を活かし、主に小学校で子どもたちに金融のことを教えていらっしゃいます。
■ 母親、夫婦である以外のやりがいを探して
――お二人共、お子さんがいらっしゃる中、「キャサリンとナンシーのお金のおはなし」を展開されていらっしゃいますが、そのモチベーションはどこから来ているのでしょうか?
ナンシー:振り返ると、もともとお金の計算をしたり、家計簿をつけたりと、お金に対しての関心はあったのだと思います。そんな中、旦那さんの転勤に付いていく度、人間関係を一からやり直さないといけないのか。人生このままで良いのだろうか…。と思うようになりました。子どもが大きくなった時に働くことも考え、CFP®(Certified Financial Planner)の資格を子どもが幼稚園に行っているときに取得。もともと教師になりたかったこともあり、その後キッズマネーステーションの認定講師になりました。
キャサリン:私も子どもを育てていて、このまま家と近くの畑の往復だけで終わってしまうのかなぁ、と思ったことが始まりでした。証券会社には一般職で入ったのですが、その後総合職となり、初めて株式投資に触れました。それがきっかけで株の面白さを知ったのです。「株式投資は面白い」ということを他の人にも伝えたいというそんな気持ちもあり、当時受けたキッズマネーステーションでナンシーと出会い…。なんと同じ会社出身、路線も同じ、同じ学年の子どもがいる…!ということでつながったのです。
■ お互いの得意分野で補完しながらの金融教育
――子育てで大変な時期に、すごい行動力ですね! そこからどのようにキャサリンとナンシーの結成に至ったのでしょうか?
キャサリン:実は、子どもの小学校で先生との個人面談があったんです。その場で担任の先生に「私、金融教育をやっているんですが、小学校で授業をしたいんです!」といったんですよ。そうしたら先生が「授業やっても良いですよ」って言ってくださり…。
ナンシー:こういうところ、キャサリンのすごいところですよね。なかなか子どもがいる学校の先生に、授業やらせてください!とは言えないですよ。
キャサリン:そうなんですけど、いざとなると1人では荷が重たいなぁ…と思って。そこで、ナンシーに電話をして一緒にやってほしい!と頼んだんです。
ナンシー:私も学校の先生になりたかった、ということで手伝いたい!となって。1年目から1学年で4授業をさせてもらいました。でもおかしいことに、授業が終わるとみんなキャサリンの方に行くんですよねぇ。
キャサリン:金融教育をライフワークにするつもりだったんですけど、本名や顔が出るのが嫌だなぁと思っていたんです。だから、私だけキャサリンという名前で話したり、鼻眼鏡をかけたりして子どもたちの前に出ていました。偶然ではありますが、子どもたちの印象に残りやすかったのでしょうね。
ナンシー:2年目もお声掛けいただき、今度は3学年の授業を担当しました。でも私の名前を子どもたちに覚えてもらえず…。3年目ようやく私が「ナンシーです」と言ってみたら、これが受けたみたいで。次に、「キャサリンとナンシーのお金のおはなし」とFacebookにアップすると「いいね!」がたくさん付いたんです! その後、ロゴを作ったり白衣を着るようにしたり…、と今のスタイルになってきました。
振り返ってみると、はじめはお互いが主婦だったので、0.5+0.5=1でも良いと思っていました。 今はお互いに得意な所を生かして、1+1>2以上になりたい、と。始めは2人でどう子どもたちに教えるか、を考えるのが一番辛かった…。けれども先生が惚れ込んでくださって、おかげ様でキャサリンとナンシーは7年目に突入しました。
(小学校5年生向けのクラスでは、子どもたちがキャッシュレスについて学ぶ機会もあります!)
■ 家は経済の一部! だからこそ、ひらがな版の経済を小学校から。
――学校の教育では、お金のことを全く教えていないわけではないですよね。実際お子さまの学校で受けた金融教育の内容などを見ていて、学校の授業では足りないなと感じる点はありますか。
ナンシー:日本での「家庭科」って料理やミシンなどの裁縫、掃除のやり方など、家事が想像されますよね。一方で、英語で家庭科ってなんていうかご存じですか? 実は家庭科のこと"Home economics”というんですよ。家は経済の一部です!と、英語ではそのままのことを言っているんです。
日本の家庭科で教えている家事の要素は大事なこと。家庭科の先生もお金のことを勉強されている。けれど、買い物の仕方で終わってしまっている印象です。例えば小学校5年生で学ぶ意思決定の方法というのが教科書にあって。どうやったら消費者として上手な買い物ができるか、もう少し経済的な要素が入れば良いな、と思うことがありました。
(低学年向けのお店やさんごっこでは、子どもたちがお客さんに買ってもらえそうな商品名、お店の名前、看板を考えたそうです)
――なるほど! そもそもの金融や経済に対するスタンスが全く違うんですね。キャサリンさんはいかがですか?
キャサリン:日本の金融教育は消費者金融に傾いているなぁと感じることが多いです。私が子どもたちにお金の話をするのにあたって目指しているのは、株式など今までになかった視野を持ってほしい、ということです。
実は私、証券会社に入るまでお金のことはもちろん株式も知りませんでした。大学の就職活動で初めて銀行の仕事がお金を貸していることを知ったんです。その時はとても衝撃的でした。それに、今は自分で運用してくださいという時代に変わり、高校でも投資の話を始めるという動きになっている。でも、いきなり「投資は…」「ポートフォリオ(注:何種類かの金融商品の組み合わせのこと)の割合は…」と話しても唐突すぎてピンとこない。もっと幼い小学生のころから、ひらがなの経済のこと、株や銀行の仕組み、お金のことを始めた方が高校生になったときに腑に落ちると思うんです。そこがまだ社会で補えていない部分ではないでしょうか。ここを埋める役割を「キャサリンとナンシーのお金のおはなし」でやっていきたいです。
ナンシー:先生方の経済に対する考え方、というのもありますね。お金の話をあまり好きではない。お金の話をしてはいけない、という風潮がまだ学校には残っていますね。2年目の時に、株式の授業をしました。株で儲けよう、という話ではなく、東インド会社が登場する株式の歴史です。でも、先生は「株式なんてまだ全然早い!」という感想だったんです。
(株式の歴史としくみをゲームで学べる授業もあります。私も小学生だったころ、こんな授業受けたかったです)
キャサリン:そうなんです。株式のことを先生がご存じでも、ギャンブルとか損するとか悪いイメージがあるようで…。株のことを教えたい!と話していても、先生が前向きにはならないんですよね…。
――実は、私も高校生の時日経STOCKリーグに参加したのですが、学校の先生が「女子高生に株式を体験させるなんて!」と反対されていた、というのを後で知りました。私のは昔の例になりますが、今でも先生の反対はあるのですね…。
キャサリン:(インタビュアーに向けて)日経STOCKリーグに参加して、初めて株式投資を知って、その時はどんな感想だったんですか?
――視野が広がった、というのが大きかったですね。
キャサリン・ナンシー:そうなんですよね…!!
キャサリン:やはり株に出会うのと、出会わないのとでは、物の見方が変わりませんか? 視野が広がる。このことを伝えたいんです。子どもたちが株式に出会うきっかけをまずは作って、「こんなに視野が広がるんだ!」と感じてほしいです。
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偶然にも共通点が多いお二人が出会い始まった「キャサリンとナンシーのお金のおはなし」。そこには、母や妻としてではなく、「私個人」としても生きていきたい、という世の中の女性が多く抱える気持ちを体現した側面も伺えました。また、家庭科がHome economicsと表現され、家も経済の一部である、というお話にも共感することが多かったです。
後編ではお家でもできることやご自身のお子さんにどのようなことを教えているのか伺っています。ぜひご覧ください♪
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お話を伺ったのはー
キャサリンとナンシーのお金のおはなし
公立小学校をはじめとする教育機関、金融庁・金融広報委員会など公的機関主催の金融教育の講座を行なう。講座実績は2020年3月時点で200を超える。
・第15回金融教育に関する小論文・実践報告コンクール(2018年)奨励賞受賞
・第14回日本FP学会賞 奨励賞受賞(2019年)
キャサリン:講座ではブルーの白衣を着てひげメガネをしている。 中学生と小学生3人の母親。証券会社に入社して資産運用を学び、その中でも株式投資に興味を持つ。趣味は読書とラジオをきくこと。
ナンシー:講座ではピンクの白衣を着ている。 中学生と小学生2人の母親。小さい頃の夢は教師。教員免許を取得するも縁あって証券会社に入社したことが今の仕事に繋がっている。趣味はバドミントン。
(取材日:2020年4月24日、取材・文:Mari Kamei)
写真はWebpageおよびFacebookページより転載
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