映画びようり2022年映画ランキング
2023年最初のnoteです。今回は以前からお伝えしていた「映画びようり2022年映画ランキング」を発表します。キネマ旬報形式で洋画と邦画を分けてお気に入りの10作品をそれぞれあげ、20作品+αを発表します。ちなみに上半期ランキングは以下から確認できます。
洋画編
『バビ・ヤール』
映画は1941年ウクライナで起こったドイツ軍によるユダヤ人大量虐殺の記録映像。ただありのままを映し出すこの作品には説明字幕こそ多少あるものの、物語性や情緒的な音楽は一排除され、フィルムは事実のみを伝えています。
この映画にあえて順位をつけなかったのは、そもそもほかの映画と同じ土俵にあげていいものかと思ったからです。しかしながら2022年公開作品で最も不快だった作品であり、最も忘れ難い一本となりました。
10位 『NOPE』
2022年最も腰を抜かした映像作品といえば『トップガン・マーヴェリック』そして『NOPE』でした。そしてなんと言っても『NOPE』の人間の網膜感度に勝るとも劣らない映像にはただただ驚きました。月明かりに照らされ、うすら光る荒野、輝く馬の皮膚の美しさ。ホント「何これ」でした。何かをやってくれる。その期待に答えてくれるのが冗談でなくジョーダン・ピール。次回作が今から待ち遠しい監督の一人です。
そんなジョーダン監督と冗談でなく世界観が繋がってしまったのは『ドント・ウォーリー・ダーリン』のオリビア・ワイルド監督。作品は『マトリックス』と『アス』を足して冗談で割ったみたいな内容でジョーダン監督の影響力を感じずにはいられませんでした。
9位 『わたしは最悪。』
鑑賞してから少し時間が経ちましたが、北欧のマジックアワー、街並みの美しさが今でも脳裏に焼き付いています。文字通りマジックを感じた作品。こんなにも知的でセクシャルでエモーショナルな作品は初めてかも知れません。そして成熟した登場人物たちに少し焦った作品でもあります。
8位
『インフル病みのペトロフ家』
このランキングの中でも唯一無二感が際立つ作品です。アートワークのキャチコピーにもあるように狂気という言葉がしっくりくる、ちょっとイっちゃってる作品。ロシアを逃れた監督の近況はどうなっているのでしょうか?命をかけて映画を作る。そんな気迫を感じた作品。
7位 『チタン』
ジュリア・デュクルノー。
きっと彼女はフランス女性映画監督の中で作家性というカッコいい言葉を思わず使いたくなる監督のひとりでしょう。
こんな映画を作る彼女の映画体験はいったいどうなっているのか?クローネンバーグ、三池崇史、塚本晋也をフェイバリットにあげているのは納得。一方で細田守や宮崎駿をフェイバリットに挙げていたのはセリーヌ・シアマ。ここ最近のフランス人女性映画監督の勢いはとどまることを知りませんね。
6位 『あのこと』
そんなフランス人女性監督からもう1作品。『チタン』『あのこと』ときて、この並びは鑑賞した方ならもう何を言いたいか分かるかも知れません。あの衝撃シーン。どちらも恐怖のあまり直視出来ませんでしたが、わたしにはこの作品の持つリアリティーの方が断然恐ろしかった。
5位 『PIG』
2022年ダークホースといったらかなり上から、そして失礼なんですが、何もかもが予想外で、素直に感動した作品です。この作品でケイジ先生も復活したとかしないとかで、ギャラがあがったとかあがらないとか。物語は一言で言えば、拝金主義に立ち向かう豚使いの話。といったところです。
4位 『パリ13区』
みんな大好きセリーヌ・シアマ共同脚本。上半期ランキングでは『チタン』より下位にいましたが結局逆転してしまいました。同じく共同脚本であるレア・ミシウス監督作『ファイブ・デビルズ』も2022年の印象に残る作品でした。躍動感溢れるアフリカ系と白人の肌のコントラスト。美しかった。
3位 『リコリス・ピザ』
ポール・トーマス・アンダーソンを、PTAと略した時に人は映画好きを自認するものだと長年思っていました。やってみるとなんのことはない。でも今日から映画好きの十字架を背負って生きていくのです。
2位
『秘密の森の、その向こう』
みんな大好きセリーヌ・シアマ。
好きなインディーズバンドがメージャーにいった瞬間に、ちょっと距離を置きたくなるのはバンド追っかけあるあるですが、映画に関してこの現象は個人的には当てはまらないようです。
セリーヌのことをインディーズから追っかけてもないわたしですが、作品を重ねるうちにどんどん追っかけていることに気付きます。彼女の作家性をあらためて確認し、何より意外でもあった本作。可愛らしく、そして愛おしい作品。好きです。これからも追っかけます。
1位 『C'MON C'MON 』
やっぱ好き。
もはや何が良かったのか良く分からなくなってるんですが。美しい映像、音楽。映画の醍醐味ですよね。音楽かな。やはりドビュッシーの月の光、泣いた。それこそドビュッシー、ドビュッシーと泣いた。
映画館で感じたあの体感を覚えておきたい、だから配信ではなるべく観ないようにしている作品です。また観てがっかりしたら嫌じゃないですか。あまのじゃくです。残っている体感が消えて分からなくなったら再度観ようと思っています。
それくらい好きなんよねぇ。ドビュッシー。
洋画総括
2022年の洋画総括です。
2022年は豊作でしたね。って言ってみたいところですが、2021年まではあまり映画館行ってなくて。2021年で覚えているのは007ノータイムトゥー〜くらいでしょうか。
何と言っても2022年の洋画といえば『トップガン・マーヴェリック』、『RRR』でしょう。流行り病の影響で映画館から人々が遠のいていたこの3年近く。主演の3人のマッチョが体を張った曲芸で映画館に再び人々を呼び戻してくれました。なんだかんだいって結局こういうマッチョをわたし達は求めているのかも知れません。
なかでも印象的だったのは『RRR』の踊り・ムトゥです。あのトリッキーで鬼気迫る踊りになぜだか涙が止まりませんでした。ムトゥで泣くって。我ながら少し焦りましたが、2023年はあのキラッキラ顔でムトゥをむしろ踊っている側になっているかもしれません。
しかしこうしてみるとフランス映画が4本。確率高いなと。おフランスが好きなわけでは全くないんですが、本当は『マッドマックス・怒りのデスロード』のような作品が好きなんですよね。だから『トップガン・マーヴェリック』、『RRR』はそれこそデスロード感満載だし、オバマ元大統領もトップガンを2022年お気に入りにあげていたし、全然ランキングに入ってもおかしくないんですが。2022年はフランスの判定勝ちということで。ドキドキハラハラの映画体験をありがとう!
邦画編
10位
『MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』
2022年の日本映画を代表する作品だったと思います。アイデアの宝庫というか、面白い動画をずっと見続けているような感覚。深夜のドラマ枠でやっていてもおかしくなさそうなんですが、結果的にはロングランで映画館に多くの人を連れてきた印象があります。気負わなくてもいい気軽さ、でもきちんと感動させてくれる2022年を象徴するコンテンツ。いい仕事してます。
9位 『夜を走る』
衝撃作。
宇野祥平さんが新興宗教の教祖をやっていまして、非常に胡散臭かった。褒めてます。このnoteでも宇野さんに言及することが多く、勝手に親近感がわいている今こそ、宇野祥平特集をしてもいいかも知れません。しないかも知れません。
そしてこの劇中にとんでもない「変態」をしてしまった足立智充さん。つい最近観た『ケイコ 目を澄まして』で新聞記者役で拝見した瞬間、思わず「あっヘンタイっ」って口から漏れ出しそうになりましたが、それをグッと噛みしめたのはわたしだけではないはずです。
三浦友和さん扮するジムの会長へのインタビューシーン、素晴らしいじゃないですか。わたしには足立さんがもうあの「変態」のほうにしか見えなくなってしまって。。勝手にパニクってしまって。。
8位
『春原さんのうた』
まずよくこの企画通ったなって。素人ながらに思います。わたし、色々想像しながら観るのが好きなんです。この作品はある意味ずっと想像していける。だから宇宙のような広大な世界に身を委ねることも出来る。
ひとつの映画体験のあり方です。
そしてこの体験は人によっては試練かも知れません。しかしその試練が大いなるカタルシスに繋がったとき、映画の懐の深さを改めて思い知ったような気がします。やっぱ映画って凄いな。
7位 『窓辺にて』
今泉力哉監督作品です。
これまではどちらかと言うと若者の恋愛を描いてきた印象が強かったのですが、稲垣吾郎が主演と聞いてどうなるかと思っていました。蓋を開けてみればこれまでのドライブ感はそのままに、稲垣吾郎演じるミステリアスで可愛い中年男子・市川という男にハマってしまいました。
6位 『恋は光』
恋。
多くの人が経験したであろう、そしてこれからも経験するであろう恋についふてこんなに真剣に考えたことがあったでしょうか?そして映画の最後にはまるで恋をしたかのような感覚に陥る不思議な体験。素敵でした。
なーんだか残ってる。光だけに半年近く経った今も光るなにかを感じます。上半期ランキングでも6位でした。
5位
『ちょっと思い出しただけ』
上半期映画ランキング1位の作品でした。やはり鑑賞してから時間も経つので少しずつランクを落としていますが、健闘しました。クリープ・ハイプの主題歌『ナイト・オン・ザ・プラネット』が鑑賞後頭の中でグルグルと無限ループし続けていた当時を思い出します。
4位 『さがす』
2022年の年明けからとんでもない映画を観てしまったと思ったものです。印象は薄れましたが、清水尋也さんが演じた殺人鬼、『コクソン』の國村準ばりの悪魔感で不気味でしたね。
それにしてもジャケ買いしたくなるくらいの美しいデザインを手がけたのは韓国のデザイン会社propaganda。わたしも何かデザインするときは依頼したいくらい。彼らの交差しない目線の先に探しているものがあるのでしょうか?彼女は父を見ているのだと思いますが、こっちを見ているようにも見えなくもない。こちらを見ているとしたらなぜなんだろう?考えてみるとちょっと眠れなくなります。
3位 『LOVE LIFE』
映画を観た後に色んなことを考えるが個人的な映画の楽しみの一つです。鑑賞後すぐには言語化できない気持ちを、なんとか言葉にしたいと思ってこのnoteを始めたのですが、この作品は2022年鑑賞した映画の中でもなかなか言語化出来なかった作品だったと思います。おそらく色んな人の想いが画面に溢れていて、しかもそれがなんかドロドロしているんです。でもそんななか、パクという物語を掻き回す人物だけは、ひとりどこかひょうひょうとしてる。パクを演じた砂田アトムさんに個人的には2022年の最優秀俳優賞をあげたい。
2位 『さかなのこ』
なんといってものんさんが唯一無二でした。彼女の独特なオーラ、存在感はいったいどこからくるのでしょうか?これはみなさんが指摘することだと思いますが、なかなか言葉にするのが難しいんですよね。このnoteは言語化できないモヤモヤを言葉にしたいという趣旨で始められたので一応考えてみました。「童顔でありながら感じられる強い意志」童顔に意志がないように聞こえたら全国の童顔をお持ちの方ごめんなさい。これが2022年の結論です。また何かわかり次第ご報告いたします。
1位 『こちらあみ子』
鑑賞した後、なんとも不思議な感覚に包まれた作品。お互いを尊重し自由に生きられる、境界線のない世界があればどんなに素敵なことでしょうか。いまだに心の片隅に引っ掛かっている作品。これからも繰り返し見返すであろう作品。青葉市子さんの音楽が決め手でした。
邦画総括
2022年の日本映画の話題は『シン・ウルトラマン』でしょうか。2023年は『シン・仮面ライダー』も公開も控えていますが、実はどちらも世代的に個人的にはあまり思い入れはないんですよね。でも日本実写映画を盛り上げる意味でも観にいこうと思ってます。
で、個人的には『ある男』『かわっぺりムコリッタ』『千夜、一夜』『百花』『ケイコ 目を澄まして』この辺りはどれも素晴らしい作品で甲乙つけがたかったですね。全て10位以内に入ってもおかしくなかった作品でしたが、ラストシーンに個人的には一筋の光を見出す事ができた『LOVE LIFE』を選びました。
このnoteを始めてそろそろ1年になります。いまではもうすっかり生活の一部になってしまいましたね。2023年も1月から話題作品が多く、アカデミー賞候補作品の公開も控えています。個人的に気になるのは1月『イニシェリン島の精霊』、『ノースマン』に始まり、その後の『バビロン』『フェイブルマンズ』『EVERYTHING EVERYWHERE ALL AT ONCE』などでしょうか。
今年も楽しくなりそうです。このnoteでは引き続き映画感想文をお届けしてまいりますのでよろしくお願いします。
今回は以上です。
それではまた!