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『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』/映画感想文

原題:『Killers of the Flower Moon』

イチャイチャしすぎだろ!
と冷やかしたくなるほどのスコセッシ×レオ様コンビにデニーロも加わる。

否が応でも期待が爆上がりしてしまった今作、しっかり期待にこたえてくれました。

1. あらすじ

1920年代、オクラホマ州のおじのオジキを頼って舎弟が一獲千金を狙ってやってくる。
オイルバブルに沸く原住民の利権や財産がターゲット。
直接奪うわけにもいかないから、原住民内部に入り込んでから殺してしまおう!というなんとも陰湿な手法を用いる。

実話(をもとにした小説)ベース。

2. 点数

91点

”これこれ、いい映画っていうのは!”と唸らせる作品。

一流の監督やキャストの力量は言うまでもなく。
衣装や撮影などにもしっかりお金をかけているのが画面越しに伝わってくる。

”どや、これが映画じゃ!”と胸を張り、お金を払うべき映画体験というものをしっかりと表現して見せつけてくれました。ありがとうスコセッシ。

もうすでにレオ様主演で次回作を準備中らしく(もうこいつら付き合っちゃえよ)、まだまだこれからに期待。

3. 感想

上映時間の長さ

206分。3時間半。インターバルなし。膀胱との戦いは必至。

実際、膀胱との戦いに屈した戦士たちが席を立って敗走する様をみた。
事前の準備は怠らないようにしよう。

私は今回、初の試みとしてTOHOシネマズのプレミアボックスシートを使ってみた。劇場の真ん中にある、幅広でふかふかシートのアレだ。
そのおかげか、膀胱に打ち勝つことができた。

追加料金は1000円となかなか強気な設定だが、上映時間とは連動しないので、上映時間が長いほどお得?という見方もできる。

そしてもちろん疲れにくい
ひとりの世界に入り込めて足を投げ出せる。お尻にゆとりがある。最高。

本作は作品自体のクオリティでおつりがくるほど鑑賞料金をペイしてくれるので、追加料金を払っていい席にグレードアップするのがオススメだ

女優の大抜擢

レオ様とデニーロ。個人的に好きな俳優の共演なので、必然的に高評価。
でも一番印象に残ったのは、原住民でレオ様の妻役を演じた、リリー・グラッドストーン(Lily Gladstone)

メジャー作品未経験からの大抜擢。
どうやらある先住民の血を引くらしい。顔を見てみるとたしかにアングロサクソン系とは明らかに違う系統。
どこかアジア系の香りも残しており、日本人にもなじみやすい。

本作では名優2人を完全に食ってた
主演(助演?)女優賞でオスカーノミネートは確実でしょう。
ほとんど笑わず知的な雰囲気。それでいて、全体的に丸みを帯びたそのフォルムが妖艶。

日本でいう「肝っ玉母さん」
妻の強さと包容力を静謐に演じていた。

姉妹が次々と消されていき、次は自分が標的になるとわかっていたはず。
それでも取り乱すことなく、運命を受け入れようとする。夫を信じようとする。
ラストの「はぁ、もうええわ、帰るわ」の落胆した表情は秀逸。

彼女の感情が直接的に表される場面は少ないため想像するしかないが、これが本作の醍醐味のひとつだ。

暗部のえぐり方

白人にとっては恥ずべき黒歴史だろう。
開拓当時に先住民を迫害していたのは全世界が知っているが、近代になっても利権強奪のために大量殺戮をしていた。
こんなタブー化されてしまいかねないテーマを正面からとらえた本作。

偶然なのか、最近みた作品は同様のものが続いた。
『福田村事件』、『月』と国内でもタブーに切り込んでいる。

タブーに切り込む姿勢は大好きだが、上記2作品は映画としては称賛はできなかった。
製作側の「こういうメッセージを届けたい!」がありきで、そこにつながる演出が多かった(特に『福田村事件』)。

本作でももちろん監督のメッセージ性はあるのだが、そこまで濃くはない。
ラストの監督自身が出演する後日談シークエンスでメッセージ性が垣間見えるが、これはFBIが宣伝目的で流したラジオ番組を再現しており、
「事件を手柄宣伝のネタにするな!」という強烈な皮肉が込められている。
ステキやん。

メッセージ性とエンタメ性の抜群のバランスを保ちながら、ラストでおしゃれな演出の引き出しを披露。

さすが巨匠、格が違いますわ。

オジキと舎弟

ここまでスルーしているが、主演2人は当然にハイクオリティ。
3割30本打ってくれるのが当たり前になってる感じですね。

・オジキ
デニーロはいつものドンであり、king であり、god である。
god なのでお尻ペンペン!もお手のもの(ただしおっさん同士。期待するなよ)

ニコニコ笑顔でfriend だ!と原住民と肩を組みながら皆殺し計画。
さくっと殺さないところが逆に悪質。

しかしこのおっさん、仰向けで髭剃りされてるの似合いすぎだろ(『アンタッチャブル』の冒頭シーンのオマージュですかね)。

・舎弟
加齢の影響なのか上半身のボリュームアップ。小者感もアップ。

常にオジキに頭が上がらないが、狙って原住民妻をあっさりゲットする色男ぶりは失っていない。

後半の妻にインスリン注射を拒否されたところで、お待ちかねのレオシャウトきたー!! 
必死に「right medicine!!」のシャウトでわろた。
やっぱりこれがなきゃ。


ストーリーラインのインパクトのなさや上映時間の長さが敬遠されたのか、国内で伸び悩んでいるのが残念。すでに上映館数も減ってきているようで。

「いい映画知ってるで!」とドヤ顔できること間違いなしなので、時間の都合をつけてぜひ映画館で!


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