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待草雪
2024年2月13日 23:54
265 萌えし国 暁(あかつき)浴びて 未来(みく)へ行(ゆ)く 桜花(おうか)の虫音(むしね) 永遠(とわ)に響いて 小枝で作った焚き火が燃えていた。卯月の最終日。日雨の家の庭で、ヒュウラとコノハは2冊の本を焚き火に投げ入れて燃やしていた。 甘夏と槭樹から受け取った黒い革張り表紙の”元凶本”が、悪臭を放ちながら炭と黒煙になって、天の彼方に上っていく。人工の染料で染められている謎
2024年2月7日 13:23
263(良い加減にして。調子に乗らないで)(何で1回見せただけで、教えても無いのに私を超えて其の場で直ぐに再現するのよ。どんな事も)(殺す時期を短縮してやる。今直ぐよ) ーー”人間”と同じか超えていると、調子に乗り続けていたからだ。ーー ーーどうして、人間じゃ無い存在は、人間では無いという曖昧な理由で、人間のように振る舞えば人間から容赦無く罰を受けさせられるのだろう?上では無く対等
2024年1月31日 17:25
262 睦月・スミヨシには、幼馴染が1体と2人居る。亜人の幼馴染は特殊な仲であるが、人間の幼馴染とも物心が付く前からの部族同士の付き合いで、友という枠には嵌っているようで嵌って無いようなモノであり、内の1人とは自由に会う会わないの選択が大人になっても殆ど出来ない”腐れ縁”の間柄だった。 一方で、もう1人とは自由に会う会わないの選択がお互いに出来る。今の相手は己よりも遥かに権力を持っている人間
2024年1月28日 02:51
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2024年1月26日 01:24
259 現在、櫻國の山の中腹部に主要の人間達と亜人達が集まっていた。唯一肉体が其の場に居ない人間の女が、青い目に掛けている銀縁眼鏡を指で調整してから、執務机に乗せて起動させているノートパソコンの画面を凝視する。 黒い背景が無く、山を示す黄緑の図形が全体に写っている保護対象(ターゲット)位置確認画面には、図形の至る所にアルファベットと数字が組み合わさった記号が、蛍光イエローに光りながら並んで表
2024年1月23日 01:40
257「音楽というモノは良いよね。自然が奏でて作る魂の洗濯場も、人間が楽器を奏でて作る、涙あり感動ありの魂の大冒険場も」 其の人間は、突然言ってきた。言葉を聞き取った存在が首を傾げると、人間は機嫌良く言葉を続けた。「私も音楽が好きだ。此の国の出入り口で披露されていた『和楽器ロック』は、録音して持ち帰りたいくらい気に入った。だけどあのハイスピードのメロディを鳴らす最適なモノは西洋の電子楽器。
2024年1月18日 01:16
255 コノハ・スーヴェリア・E・サクラダは、信じるべきか判断に困るものを見付ける事になる。完全に意識を取り戻した睦月に日雨の捜索を一旦任せ、己は山の麓まで単独で足を運んでいた。 上司のシルフィには麗音蜻蛉の保護を命じられていたが、麗音蜻蛉の護衛役である人間に「麓の様子を見に行って欲しい」と依頼された故に、別行動を取っていた。”起きたばかり”の状態である睦月よりも、明瞭に意識がある己の方が長
2024年1月11日 21:41
253『5分』 シルフィ・コルクラートが首輪の奥から言ってきた。己は自信満々だと、声の音調と音程で首輪を装着している亜人に伝えてくる。『300秒。分殺より秒殺の方が、上出来感が出るわね。理想は瞬殺で、貴方なら其れもしようと思えば出来るでしょうが。確実性を重視して無理はさせないわ。トゥトゥ、アヴォマルク』 ワンちゃん、位置に付いて。を、北西大陸上部にある国の独自語で言ってきた人間の女に、ヒ
2024年1月3日 01:45
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2023年12月30日 11:13
247 甘夏は、また麗音蜻蛉の羽音を聴いた気がした。此の世で最も美しい音色。己が愛する此の東洋の島国にだけ住んでいる、此の島の宝で、神でもある亜人。
2023年12月28日 05:27
245 ヒュウラが其の場を離れて十数分後に、その人間は其の場に到着した。
2023年12月24日 21:24
241 同じ星の上に存在しながら、東洋と西洋ではあらゆるモノが非常に大きく異なる。自然環境や、自然と共に生きながら日々進化している多くの生き物達の種類に加えて、人間という同じ種の1生物ですら、東洋と西洋ではまるで別々の惑星に住んでいる存在であるかの如く、何もかも違う。 例え理不尽な脅威が無い安全な土地で生まれ暮らしやがて死ぬ人間同士であっても、東洋の人間と西洋の人間では常識という基本的価値観
2023年12月21日 14:05
240 余計な事をもうすべきでは無いと悟ったのだろう。それ以来、此の島に充満している摩訶不思議な力は『届ける』事を止めた。 あらゆる命の寿命までの時を進める歯車の取手を握って好き勝手に回す『運命』の妨害を、生き物達に委ねる。魔犬が人間達に警告した通り、死せる存在が生者達の世界に干渉する事は法度(はっと)である。一度でも死した存在がどんな形でもエゴで蘇って生者達に干渉する事は、命が頻繁に死して
2023年12月17日 01:54
238 生涯、幼馴染や子供の頃に親しくなった存在と縁が切れずに最期まで”友”として深く関り合いながら命の時間を終わらせる事が出来る存在は、極めて少ない。大抵の存在は時の経過と共に、繋がり合っていた縁の糸が切れる。縁という名の糸は極めて脆い。些細な出来事がキッカケで切り落とし、切り落とされる。運命が切る事もある。死別がそのひとつである。 友と友が繋がり合う縁という名の糸は、余りにも脆く切れやす