Bounty Dog 【清稜風月】253-254
253
『5分』
シルフィ・コルクラートが首輪の奥から言ってきた。己は自信満々だと、声の音調と音程で首輪を装着している亜人に伝えてくる。
『300秒。分殺より秒殺の方が、上出来感が出るわね。理想は瞬殺で、貴方なら其れもしようと思えば出来るでしょうが。確実性を重視して無理はさせないわ。トゥトゥ、アヴォマルク』
ワンちゃん、位置に付いて。を、北西大陸上部にある国の独自語で言ってきた人間の女に、ヒュウラは返事も反応もしなかった。既にプレ、パルテ(よーい、ドン)をしている。ノウが同じ意味の言葉を使ったら「ドギー、オン・ユア・マーク。レディ、GO」と言い、ドギーとGOの前に「YES」をオマケで1回ずつ絶対に喚くだろう。其の場合でもレディ、GOは言われる前からYESであり、既によーい、ドンが先走って行われていた。
彼はトゥトゥでありドギーであり、愛称では無く直接『犬』と人間達が独自語を使って言うなら、シヤンまたはドッグであり、櫻國語ではイヌ。南西大陸中東部の独自語ではカルブンで、更に北西大陸西部にある某国独自語ならペロになる。だがいずれの何でも無く、この犬科の生き物に付いている個の名前は、ヒュウラである。
己以外の誰のモノでも無い。何ならーー。盛大にフライングして任務を開始しているヒュウラは、瞬殺は出来なかったが秒殺は余裕で出来るスピードで任務をこなしていた。木々が騒めき、生き物達も騒めいている。人間も騒めいていた。
騒めいている人間は、1人だった。
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