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Bounty Dog【清稜風月】

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遠く、でもいずれ来るだろうこの世界の未来を先に走る、とある別の世界。人間達が覇権を握るその世界は、人間以外の全ての存在が滅びようとしていた。事態を重くみた人間は、『絶滅危惧種』達…
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2023年8月の記事一覧

Bounty Dog 【清稜風月】152

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 睦月の頭の中で今だに左右に揺れている手の平よりも小さな縮緬赤忍者の如く、小柄で身軽な”馬鹿犬”は指示完全無視で超人技を軽々としてきた。石垣を蹴り一撃で叩き壊した後にハイジャンプ1回でカンバヤシ邸の平屋の屋根に登るなり、屋根の端から無感情の顔を出して睦月を見下げてくる。頭部に出来ている大きなタンコブに、人間と9割見た目が同じである犬科の亜人の背から降りた東洋人のような見た目の西洋人の保護

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Bounty Dog 【清稜風月】150-151

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 櫻國組の人間2人と2種の亜人は、ヒュウラとコノハが滞在して28日目の早朝に、山の頂上付近にある一軒家の居間に集合していた。睦月とヒュウラが寝ていた和式の布団は、押し入れに収納しておらず居間の隅に畳んで置かれている。日雨も今日は朝食(あさげ)作りを辞めていた。コノハも風呂は昨晩入ったので、銭湯へのGOはしていない。フローラルな香りは放っていないが、身は清潔な状態になっていて人間として問題

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Bounty Dog 【清稜風月】148-149

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 星を半周する程の距離間で行われた、国際保護組織亜人課保護官と超希少種亜人・麗音蜻蛉の日雨専属護衛役による“通信作戦会議”は、2時間半も掛けられて実施された。会議は、先ずシルフィが”麗音蜻蛉殺し情報提供者殺し容疑者・K”が殺害した和菓子屋店主が呼び寄せたらしき密猟者グループについて事前に調べていた情報を睦月に伝えてから、睦月が密猟者グループと同じ日に入国していたとシルフィに伝えられた、怪

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Bounty Dog 【清稜風月】144-145

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 先ずポケットに入っている”アレ”を使って気を逸らしてから、渾身の力を込めた右ストレートパンチで1番右にいる人間を殴り飛ばす。そしてその横にいる人間も渾身の力を込めた左フックパンチで殴り飛ばし、周囲を阿鼻叫喚状態にさせた後に、襖に力の限り体当たりして奥に乱入する。もしくは、アレを使って気を逸らしてから1番左にいる人間を持ち上げて床に足で大穴を開け、持ち上げた黒服人間を穴に落とし、他の黒服

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Bounty Dog 【清稜風月】141-143

普段は全く使わないモノ程、窮地に陥った時に役立って危機から救ってくれる。

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Bounty Dog 【清稜風月】140

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 ーー人間も、間違って思い込むと何処までも間違った方向に突き進んで行くのだな。ーー
 人間では無い生き物である”彼”は、イヌナキ城の外門から堀を伝って移動している間、人知れず他の命も知れずに思考に耽ていた。彼も数日前まで”神輿”という人間の道具に対して、明らかに見当違いの方向に向かって暴走に暴走していた馬鹿犬である。その馬鹿犬の暴走を至極穏便な形で喪失させた、ある意味で彼の”恩人”である

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Bounty Dog 【清稜風月】139

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 主人と準主人よりは下にすると決めている。3番目に高い位置にいるのはシルフィだが、シルフィと同じ位置に置くか、更に下に置くかで、ヒュウラは睦月の事について悩んでいた。
 ”ノウ”ことコノハは『煩い』という共通点があったので、人間の服と服屋という謎の箱とセールという謎の人間の祭り云々で頻繁に騒ぎ騒ぐモグラのミディールと同じ子分位置に速攻配置して定着させていた。犬科の亜人の脳内では、縦の形式

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Bounty Dog 【清稜風月】137-138

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 準備が出来た睦月とコノハは準備が出来たヒュウラを連れて、日雨の家を出た。日雨が家の前で手を大きく振って”友達”を見送る。今日は臨時護衛役が来ない虫の亜人は幼馴染のむっちゃんに指示された通り、家から一歩も出ずに家事をしながら皆の帰りを待つ事にした。
 睦月は山の麓にある地蔵と鳥居の前で、コノハとヒュウラにSの捜索を先に始めておくように指示をした。YESと御意が同時に睦月の耳に入ってくると

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Bounty Dog 【清稜風月】134-136

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 ヒュウラとコノハの櫻國滞在可能期間は、残り3日になった。残り3日で少年Sを探し出して逮捕し、此の国と此の国の亜人を脅威に晒している元凶・Kの居場所を吐かせてKを見付け出し、逮捕しなければならない。

 緊急任務にヒュウラと一緒に参戦する許可を得る為、国際保護組織の亜人課現場部隊保護官は、櫻國滞在27日目の午前に通信機で上司に連絡をした。半日の時差がある『世界生物保護連合』3班・亜人課の

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Bounty Dog 【清稜風月】131-133

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 コノハは骨の形をしたぬいぐるみをポケットから取り出した。ぬいぐるみに付いている伸縮する紐を限界まで引っ張ってから、縁側に向かって投げる。布で出来た犬用の玩具は縁側の一角に落ちて、ピルルル、ピルルル震えながら鳴き出した。
 だが日雨から駒の遊び方を学んでいたヒュウラは、ノウがしてきた誘惑をナチュラルに無視する。ピルルル、ピルルル、ピルルルピルルル鳴きに鳴く骨型ぬいぐるみを拾いに行ったのは

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Bounty Dog 【清稜風月】129-130

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「ハアイ!猟師君、ナイス・トゥ・ミー・トゥ(出会えて嬉しいわ)!!マイネーム・イズ・コノハ!ノウじゃ御座いません。YES!マイネーム、イズ、コ・ノ・ハ!!」
 睦月は返事も反応もしなかった。現在己の眼前に居る人間の女性は白い迷彩服に短い西洋鎧を付けた格好をしており、黄色い肌と茶眼をしていて、少し長い黒髪を高い位置でツインテールに結んでいる。
 見た目は己達と同じ櫻國人だが、服と雰囲気は完

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Bounty Dog 【清稜風月】127-128

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「ヒュウラさん、あのね。あー君とむっちゃんも、ずっと昔に私の群れの虫さん達、探してくれたよ。ヒュウラさんだけじゃ無いよ、私にずっと生きて欲しいって思ってくれる人」
 日雨を背負って一軒家に帰る途中、日雨がヒュウラに背中越しに言ってきた。”ノウ”から奪い取った双眼鏡は、日雨に譲渡している。何時でもまた好きな時に山の外の景色が見られるようにしてやった。山からは一歩も出ようとしないが、日雨は山

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Bounty Dog 【清稜風月】126

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 正確には1体と1人と、無数の”匹”を連れていた。ヒュウラは日雨を背負って、己達を陰から追い掛けてくるコノハの気配を察知しつつ、喧しく鳴きながら堂々と追い掛けてくる虫達を無視して山の中を疾走していた。
 日雨の道案内に従って、山の中腹で方向転換する。海側と反対の方向に数分間走ると、途中で木の太枝に跳ね飛んで、枝から枝へ飛び移りながら目的地へのショートカットをした。
 背後から聞こえてきた

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