Bounty Dog 【清稜風月】131-133
131
コノハは骨の形をしたぬいぐるみをポケットから取り出した。ぬいぐるみに付いている伸縮する紐を限界まで引っ張ってから、縁側に向かって投げる。布で出来た犬用の玩具は縁側の一角に落ちて、ピルルル、ピルルル震えながら鳴き出した。
だが日雨から駒の遊び方を学んでいたヒュウラは、ノウがしてきた誘惑をナチュラルに無視する。ピルルル、ピルルル、ピルルルピルルル鳴きに鳴く骨型ぬいぐるみを拾いに行ったのは、激推し狼では無く虫の亜人だった。
「NO」
様々な心情を込めて、ノウと激推し亜人に未だに呼ばれているコノハは居間から縁側に向かって呟いた。”妖精ちゃん”の方がキャーキャー喜びながら犬の玩具の紐を引っ張っては投げて、ピルルル、ピルルル鳴きに鳴かせて遊んでいる。遊んで欲しかった犬科の亜人は駒の方で遊んでいた。駒の下半分に巻き付けた紐の端を掴んだまま、駒を外に向かって投げる。日雨が投げた犬用玩具の横に着地した櫻國の童(わらし)用玩具がクルクル、クルクル高速で回転すると、
ガラガラガラガラという音が遠くから聞こえてきた。玄関の横開き扉を開けて帰宅した睦月が靴を脱いで居間にやって来ると、コノハが北東大陸連邦国語で挨拶をした。
「ウエルカム・バック(おかえり)!猟師君!!調査の進展は?」
睦月は縁側に居る護衛対象を見た。紐付きの双眼鏡を首からぶら下げながら骨のぬいぐるみで遊んでいる日雨の様子を暫く見つめると、ヒュウラと襖が閉まっている寝室を順に一瞥してから、コノハに視線を移して自信満々に返事した。
「上々。Sが何者かが定まりました」
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