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待草雪
2023年2月27日 20:13
8「お前は死ぬのか?」 ヒュウラは日雨に差し出された緑茶を啜りながら、至極ストレートに虫の亜人に尋ねた。摘んだ葉っぱを千切りにして炒って煎じて作っている”櫻國茶”も偏食狼の口には合うらしく、湯呑みを片手で掴んでワイルドに半分程飲んでから、日雨に向かって再び尋ねた。「山から出ると死ぬのか?」「うん。私の種は、この国の山の中でしか生きられないの」 日雨は桜色をした非常に長い髪の間から出てい
2023年2月27日 09:00
6 その女は、黄色味が強めだが白い肌をしていて、肩まである少し長い黒色の髪を二つ括りにしていた。白と薄紅色の迷彩服の上に、白銀の西洋鎧を付けている。 腰に白いオートマチック銃を2丁、革製のホルスターに入れてベルトで固定していた。チェリーレッド色の目をしていて、その目は櫻國の山の一角から、ランタンと双眼鏡を使ってある場所を見つめている。 藁で作られた屋根をしている大きな一軒家に付いた木製の煙
5 ヒュウラは、木に引っかかった状態で上下逆さまにぶら下がっていた。思わぬ”詰めの甘さ”をしてしまったせいで、特技である崖キック下りすら忘れてしまう。 幸いにも暴走狼を優しく受け止めてくれた木々は、枝葉にしなやかさがあって衝撃に強い植物だった。小さな擦り傷を全身に負っただけで済んだヒュウラは、上下逆さまになったまま、目の前に立っている謎の女と無言で見つめあっていた。 人間のような生き物の女
3 屋根に瓦(かわら)という湾曲した鉄の板が敷き詰められている、土と木で作られた独特な形状をした建物の屋根を軽やかに跳ね飛んで走り回る1つの影に、繁華街を観光している外国人の旅行者達は、皆が揃って相手を見付けては「オウ!ワンダフル!!ニンジャ!!」と叫んで大いに喜んだ。 実際はそんな存在では無く人間ですら無い狼の亜人・ヒュウラは、己も初めてやってきた未知の国”櫻國(おうこく)”の街を屋根の上
清稜風月(せいりょうふうげつ)1 現地の革命武装部隊と手を組んで3勢力の支配者達と死闘を繰り広げた”紛争地帯アグダード”から無事に脱出し、復興が終わった『世界生物保護連合』3班・亜人課の支部に戻る途中で偶然、”櫻國(おうこく)”という別の国にやってきた保護組織3班現場部隊長シルフィ・コルクラートは、アグダードの任務に特別保護官として同行させていた絶滅危惧種の狼の亜人に、突然休暇命令をした。
これまで人間達が作っている様々な国を巡って、物語を伝えてきた。我々が生きている世界とは違うこの世界は、大きく違うモノも1つ存在しているが、他の殆どは我々の生きている世界と変わらない。 これまで見せてきた2つの物語の舞台であるこの世界は、我々が生きている世界に居る人間を含めた生き物達の他に、人間と動物の両方の長所を持つ”亜人”という特殊な生き物が加わって生きている。 この世界は亜人達と人間達が