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Bounty Dog【アグダード戦争】

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遠く、でもいずれ来るだろうこの世界の未来を先に走る、とある別の世界。人間達が覇権を握るその世界は、人間以外の全ての存在が滅びようとしていた。事態を重くみた人間は、『絶滅危惧種』達…
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2022年12月の記事一覧

Bounty Dog 【アグダード戦争】284-285

284

 ヒュウラの首輪に赤いランプが2個付いていた。このランプは1分経つ毎に1つずつ消えていく。残り時間は2分。
 シルフィとイマームに指示されている任務の制限時間は、残り2分。任務で『壊せ』と指示された、彼は本気で最低最凶の物体だと思い込んでいる、人間が作った最終兵器『神輿』の未破壊数は、3個。

「ミディールを捕まえろ。光を付けろ」が、ヒュウラに指示されたリングの任務だった。相棒の狼は会話

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Bounty Dog 【アグダード戦争】282-283

282

 イシュダヌ”掃除”チームを結成している5人の人間達が通信会議を終わらせてから、6分が経過していた。イシュダヌが己の長男に飛行機の手配を依頼してから、既に11分も経っている。
 イシュダヌが飛行機に乗って、麻薬奴隷商会本部から脱出してしまうまで、残り時間は9分しかない。
 更にイマームがヒュウラに”5分以内に達成する任務”を指示してから、2分半が経過しようとしていた。ヒュウラの残り時間は

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Bounty Dog 【アグダード戦争】280-281

280

 2000年以上紛争状態が続いている、南西大陸中東部”アグダード地帯”はヒュウラ、シルフィ、ミト、リングがやって来るまで、3人の人間が”7つの新大罪”を其々犯して勢力を作り、支配していた。
 3人の人間が其々犯していた罪は『人体・生物実験』『金銭欲』『麻薬汚染』。現在は2人が”掃除”されており、残った1人も現在”掃除”され掛けている。
 3人には、脅威になる存在も其々1人ずつ居た。自然界

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Bounty Dog 【アグダード戦争】278-279

278

 モグラの亜人・コルドウのミディールは、全く光が無い闇の空間を自由自在に走り回る。目の代わりに目から出す特殊な超音波が周囲の物に当たって跳ね返り、己に戻ってくる事で障害物を認識していた。これは洞窟等で暮らしている蝙蝠が持つモノと同じような能力であるが、コルドウは更に超音波を当てた物体の色や形状を、闇の中ですらぼんやりとだが認識出来る。
 ミディールの居る側には、人間は1人も来なかった。親

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Bounty Dog 【アグダード戦争】277

277

 其処は、まるで宇宙船のようだった。ーーと、人間であれば殆どの命が感想を抱くような場所だった。

 『イシュダヌ城』『ブサイク城』そしてあと1つ軍曹が勝手に名前を付けているイシュダヌ麻薬奴隷商会勢力本部の最上階に辿り着いた亜人達は、人間のような見た目の雌猫が「ウニャー!」と大きな一声を上げて驚き、人間のような見た目の雄狼は仏頂面だが、好奇心旺盛なのでキョロキョロと辺りを見回している。そし

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Bounty Dog 【アグダード戦争】275-276

275

 リード(引き綱)を持っている人間が、リードを結んだ首輪を付けている相手を強く引っ張った。
 屋上に設けられた麻薬運搬用飛行機とプライベートジェットの滑走路の端に胡座をかいて座っているイシュダヌは、今でも愛して止まない配偶者だった人間の頭蓋骨への頬擦りを止めていた。世界中の影の中に存在している闇の事業代行サービスの1つに己が依頼して殺害させた元配偶者の骸骨を膝の上に大事そうに置き、肘から

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Bounty Dog 【アグダード戦争】273-274

273

 エードウ・ビィ・ファヴィヴァバがある日、イシュダヌの麻薬奴隷商会本部に居たイマームに手紙をくれた。差出人は名前を書いていなかったが、血のように赤黒い背景に植物の葉と茎がダイナマイトに変えられているような紋章が描いている軍旗のステッカーが一緒に出てきたので、ファヴィヴァバに依頼して”彼”が渡してきたのだと、イマームは瞬時に勘付いた。

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Bounty Dog 【アグダード戦争】272

272

『ラ・ムシュキラ(問題無い)』
 もう一度、無感情に言ってきた”彼”は発信機同士で話せる機能が新たに付いた左手首の機械を使って、軍曹の機械越しにシルフィに”アレ”に付いて詳細を尋ねていた。側に居させている後衛だが年齢が10代のミトでは、説明させても情報が不充分になるだろうと判断したらしい。ミトを全く頼らない彼の態度に、イマームは思った。
(シルフィさんは、軍曹の後衛。軍曹とも喋ってる。や

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Bounty Dog 【アグダード戦争】268

268

 イシュダヌがアグダード地帯の外、北東大陸で築いていた家族の数は5人だった。己と配偶者、そしてアシィムという名の長男とイマームという名の次男。真ん中にも娘が1人居た。長女の名前は、イシュダヌは自分の子供なのに何という名前だったか全く覚えていなかった。

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Bounty Dog 【アグダード戦争】265-267

265

 『飛んで火に入る夏の虫』という諺がある。我々の世界ではアジア圏にある島国、ヒュウラ達の世界では東の島国の人間達が使用している諺だが、この諺の意味は”自ら危険や災難、リスクを伴うモノへ進んで飛び込む事”である。
 我々の世界にある別の大国の人間達が使っている言い方では『It is like a moth flying into the flame』と言われており、先程示した小国の諺の虫が

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Bounty Dog 【アグダード戦争】262-263

262

 イシュダヌの『獅子中の虫』は、シルフィ・コルクラートから教えられた保護組織の現場部隊がする独自の任務方法を、頭の中で何度もシミュレーションした。彼女達の所属している組織が使う独自表現である誘導”ナビゲーション”や対象”ターゲット”等の言葉は「世界共通語』として広まっている北東大陸の言語を捩っているモノなので、北東大陸が故郷である彼はすんなり意味を理解する事が出来た。
 『世界生物保護連

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Bounty Dog 【アグダード戦争】260-261

260

 “イシュダヌ”は未だ、奴隷商人兼兵士と兵器撃ち用の奴隷で主に構成した自身の軍の中に、裏切り者が居る事に気付いていなかった。民間人の武装集団である”虫ケラ底辺部隊”に潜り込ませた己の息子の帰りを迎える為に、奴隷商売の決算処理を途中で止めて、あの百合の花と花瓶に覆われた部屋にやってきた。
 瞬間的にイシュダヌは異変に気付く。半分以上倒された花瓶と粉砕した一部の花瓶、蓋が細切れにされて床に散

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