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「美術の経済 “名画"を生み出すお金の話 」の感想:「美術でお金儲けとか、けしからん」という人に丁度良いお金の話です

今年中に読むことを目標にしていた本、「美術の経済 “名画"を生み出すお金の話 」(著:小川敦生 )を読み終えました。

題名は仰々しいですが、美術の雑誌(日経アート)の編集長の経歴があり、多摩美大の教授である著者の小川さんが、美術関連のお金回りの話をエッセイ的な感じで述べた本です。

私は人間の精神の美しい発露である美術や芸術を、お金的な目線で見ることに抵抗があったのですが、大人なんだからお金もことも知っとかないといかんな、という考えで「あんまり読みたくないけど、いつか読まないといけない本」みたいな感じで、積読になっていました。

と、いった感じで、ある意味、渋々読み始めたのですが、なんと著者の小川さんも、実は以前は同じような考えだったそうです。

以下引用。

美術作品も、経済の視点で見れば「商品」である。 実は筆者は以前、美術市場に関する報道を編集方針にした美術雑誌の編集部に在籍していたころ、美術作品を〝商品〟として見ることに大きな抵抗を持っていた。その雑誌は「美術品には資産価値がある」というキャッチフレーズをうたうこともあり、解せない何かを感じていた。

「美術の経済 “名画"を生み出すお金の話 」P.228

ただ、人間が経済活動の中で生きている以上、どんな営みにもお金関わってくることになります。そして、美術も人間の営みの一つであることから、やはり、お金に関する諸々の事象が確かに発生しています。

それは、別に転売とかビジネスとか大それた話でなくて、絵具や材料を買うにもお金がいるし、そもそも、画家さんも人間なので、毎日お金を使って生活をしていかないといけない、という点でも簡単に理解できると思います。

この本は、そのことに気付いた小川さんが「美術に関するお金の話」を肩肘張らない文章で、わかりやすく、いくつかの実例を挙げながら述べた本です。

「絵で金儲けしようぜ、ぐへへ」というスタンスだったら、途中で読むのを止めていたと思うのですが、上記の通り、小川さんが「美術でお金儲けとかけしからんよね。でも、確かにお金に関わる話がこんなにもあるんですよ」というスタンスで書いてくれた本ですので、最後までとても興味深く読むことが出来ました。

私は実は「一流ビジネスマンは絵画を観る」とか「世界の一流の人は美術センスを鍛えている」とか、その辺の本を2~3冊読んだことが有るのですが、どれも「絵で金儲けしようぜ、ぐへへ」的なスタンスだったので、もう、こういう本を読むのはこれで最後にしようと思っていました。でも、この「美術の経済」は思いの外、良い内容で嬉しい誤算でした。

本の内容が良かっただけでなく、やっぱり、どんな本でも「読んでみないと、中身は分からない」という当たり前のことに気付かせてくれた点でも、読んで良かったなと思いました。

そして、とりあえず、気になった本は四の五の言わずに、読まないといけない(少なくとも読むリストに入れておかないといけない)ということなんだろうな、とも思います。

とにかく良い本と思いましたので、「美術でお金儲けとか、けしからん」という人にこそオススメしたいと思います。

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さて、この本で「今年中に読むことを目標にしていた本」はラストになりました。

私はこれまで「1年の目標」を立てない人だったのですが、こんな風に目標を達成すると、何となく年末を実感することが出来て良いな、と思いました。

実は、月初めの出張の際に読み終わって、もうすでに別の本を一冊読み終えています。ここ数年、ちゃんと本が読めていなかったので、目標が達成できて本当に嬉しいです。

年末年始辺りに私が今年見つけた「本を読む時間が無い人向けの本の読み方」みたいなのを書きたいと思います。

では、また、次の本の感想か何かでお会いしましょう。

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