「美術の経済 “名画"を生み出すお金の話 」の感想:「美術でお金儲けとか、けしからん」という人に丁度良いお金の話です
今年中に読むことを目標にしていた本、「美術の経済 “名画"を生み出すお金の話 」(著:小川敦生 )を読み終えました。
題名は仰々しいですが、美術の雑誌(日経アート)の編集長の経歴があり、多摩美大の教授である著者の小川さんが、美術関連のお金回りの話をエッセイ的な感じで述べた本です。
私は人間の精神の美しい発露である美術や芸術を、お金的な目線で見ることに抵抗があったのですが、大人なんだからお金もことも知っとかないといかんな、という考えで「あんまり読みたくないけど、いつか読まないといけない本」みたいな感じで、積読になっていました。
と、いった感じで、ある意味、渋々読み始めたのですが、なんと著者の小川さんも、実は以前は同じような考えだったそうです。
以下引用。
ただ、人間が経済活動の中で生きている以上、どんな営みにもお金関わってくることになります。そして、美術も人間の営みの一つであることから、やはり、お金に関する諸々の事象が確かに発生しています。
それは、別に転売とかビジネスとか大それた話でなくて、絵具や材料を買うにもお金がいるし、そもそも、画家さんも人間なので、毎日お金を使って生活をしていかないといけない、という点でも簡単に理解できると思います。
この本は、そのことに気付いた小川さんが「美術に関するお金の話」を肩肘張らない文章で、わかりやすく、いくつかの実例を挙げながら述べた本です。
「絵で金儲けしようぜ、ぐへへ」というスタンスだったら、途中で読むのを止めていたと思うのですが、上記の通り、小川さんが「美術でお金儲けとかけしからんよね。でも、確かにお金に関わる話がこんなにもあるんですよ」というスタンスで書いてくれた本ですので、最後までとても興味深く読むことが出来ました。
私は実は「一流ビジネスマンは絵画を観る」とか「世界の一流の人は美術センスを鍛えている」とか、その辺の本を2~3冊読んだことが有るのですが、どれも「絵で金儲けしようぜ、ぐへへ」的なスタンスだったので、もう、こういう本を読むのはこれで最後にしようと思っていました。でも、この「美術の経済」は思いの外、良い内容で嬉しい誤算でした。
本の内容が良かっただけでなく、やっぱり、どんな本でも「読んでみないと、中身は分からない」という当たり前のことに気付かせてくれた点でも、読んで良かったなと思いました。
そして、とりあえず、気になった本は四の五の言わずに、読まないといけない(少なくとも読むリストに入れておかないといけない)ということなんだろうな、とも思います。
とにかく良い本と思いましたので、「美術でお金儲けとか、けしからん」という人にこそオススメしたいと思います。
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さて、この本で「今年中に読むことを目標にしていた本」はラストになりました。
私はこれまで「1年の目標」を立てない人だったのですが、こんな風に目標を達成すると、何となく年末を実感することが出来て良いな、と思いました。
実は、月初めの出張の際に読み終わって、もうすでに別の本を一冊読み終えています。ここ数年、ちゃんと本が読めていなかったので、目標が達成できて本当に嬉しいです。
年末年始辺りに私が今年見つけた「本を読む時間が無い人向けの本の読み方」みたいなのを書きたいと思います。
では、また、次の本の感想か何かでお会いしましょう。