【書評?】孤独と生きる希望のなさに差す光ー『生きるぼくら』
いじめ、ひきこもり、死別、対人恐怖、天涯孤独…
色々な事情で孤独になった3人が寄り集まって生きる、「家族じゃないけど"家族"」のような関係
助けたい、手作りのごはんが旨い、帰りたい/帰ってきて欲しい
そう思える、「ほっ」と心が温まる関係
血のつながりがなくたって、お互いを思い合えればいいと感じさせてくれる物語だった
これは、町田そのこさんの作品を読了時にも感じた「温かさ」にも似ている
「農業」「田舎」を美化しすぎだという皮肉・批判めいた見方もできる
突然やってきた&事情を抱えていそうな青年、認知症を患ったおばあちゃんを受け入れる器が地域にあったからできたこととも言える
正直、現実はトントン拍子にはいかないことだらけだ
ただ1つだけ確かなのは、米の成長と同じく、社会に拒絶され自信を無くしている青年らを含む人間も、育ち、成長していけるということだ
主人公は、孤独を感じた上に「ふるさと」にも居る意味を見出せず、去ろうとするが、「ふるさと」にとどまって働き、変わりゆくが大好きな家族に寄り添い、米作りという「はじめてのこと」に挑む
働くのも主人公には「大変なこと」である上に、「はじめてのこと」である米作りもやる
なぜ、主人公は「大変なこと」と「はじめてのこと」を続けられたのか?
それは「帰って早く会いたい」家族や気にかけてくれる住民がいたからだ
「守りたい存在」、自分を大切に思ってくれる人、気にかけてくれる人がいてこそ、孤独や絶望がありながらも、人は進んでいける
主人公の祖母を診ている医師のセリフにも通じる部分がある気がする
「私たちは土から離れては生きられないのよ…バルス」という某セリフにも通ずるが、生物と人間はつながっていて、生き物と人の共同作業である農業は時に私たち人間に生き方のヒントをくれる
そして、人と人もつながり、支え合って生きている
生き物と人、人と人
某マンガ「みんな みんなで1つの環」ってこういうことなんだと教えてもらった一冊だった